サライ世代に役立つビジネスの極意を紹介する本連載。
今回は、潰れない居酒屋を例に、イノベーションの重要性を考えたい。会社として、イノベーションは常に考えていなければならない課題である。イノベーションなくして会社の成長はない、と言っていいだろう。
では、いかにイノベーションを行うか?
マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」より、居酒屋のイノベーション事例から、その可能性を紹介しよう。
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広がる居酒屋イノベーションとその多様性
居酒屋といえば、仕事の後にちょっと寄って安い料金で一杯飲める、サラリーマンのオアシスですよね。私たち社会人のアフターファイブには、なくてはならない居酒屋ですが、今は居酒屋戦国時代。毎年数多くの居酒屋が誕生し、そして消えていきます。以前は流行っていた居酒屋といえども、イノベーションができない会社は消費者に飽きられ、徐々に経営が悪化、そして巨大チェーン店の陰になり消えているのです。
居酒屋×イノベーション
居酒屋とイノベーションという言葉の組み合わせは、あまり見慣れないものでしょう。そして多くの居酒屋経営者は、経営がうまくいっていなくても「もう少し時間をかければ」と様子を見たり、チェーン店に対抗して安易に価格を下げたりしているのではないでしょうか。
居酒屋経営をしていると必ずつまずきがありますが、そのつまずきをチャンスに変えられれば、居酒屋経営の成功につながります。
居酒屋経営のつまずきと経営者の悩み
居酒屋を始めようと思うと開業費や運転資金の心配、開業後は「お客さんが来ない」「利益が上がらない」「スタッフが集まらない」というのは、居酒屋経営者共通の悩みでもあります。経営者は絶えずこの問題に頭を悩ませ、そして克服していく必要があるのです。
「でも、どうやって?克服できるアイデアがあれば、こんなに困ってない」と対策が浮かばない経営者は、せっかくの経営改善のチャンスをみすみす逃している可能性もありますよ。
転がっているチャンスを逃している
では、チャンスが目の前にあるにもかかわらず、見逃してしまいがちなのはなぜでしょうか。
自ら居酒屋経営をしている経営者は、多くの場合日々のことに精いっぱいです。そして、経営者の目線と顧客の目線は必ずしも一致していません。なぜならば、経営者と顧客の距離が遠かったり、経営者が資金繰りのみ心配してたりするような場合には、なかなかイノベーションを起こせるような「ひらめき」はできないでしょう。
「優れたアイデアは個人ではなくネットワークに起因する」
作家 Steven Johnson(スティーブン・ジョンソン)氏 引用:https://logmi.jp/25562
と紹介されているように、イノベーションとなりうる素晴らしいアイデアは、経営者一人の力によって創出されるものではありません。
居酒屋経営者だけでアイデア創出は難しい
イノベーションに成功している居酒屋では、どのようなところからイノベーションアイデアを得ているのでしょうか。前述のように、経営者一人でイノベーション案を考えても芳しい結果は得られません。一発は充てられるかもしれませんが、何度も大当たりのイノベーションアイデアを出せるかというと、そうではありません。
しかし、居酒屋で業務についているのは経営者1人ではありませんよね。アルバイトをしてくれている学生や他業種からの転職者は、イノベーションを起こしたい経営者にとって強い味方です。また異業種企業も、居酒屋業界とのコラボレーションを望んでいる場合もあります。
アルバイト社員のイマジネーション
人には興味が持てる範囲が限られています。例えば、釣り・車・ロックミュージック・ガーデニング・アニメすべてに興味があって、どの分野も素晴らしくよくわかっている人というのは、よほどではない限りいないでしょう。しかし、釣りに非常に詳しい人で「週末には必ず全国津々浦々の釣りスポットに出かけている人」というのはいます。
このようにアルバイト社員には、仕事以外の世界を持ち合わせている人がたくさんいます。顧客に直接接している彼らのニーズに対するアンテナも広く、独特な世界観と顧客のニーズを合わせたときに、素晴らしいイノベーションアイデアが生まれる可能性があります。
異業種転職者とのコラボ
未来食堂という飲食店があります。この飲食店経営者はIT企業から飲食業界に飛び込んできた女性で、まだ30代という若さです。
未来食堂では経営状況や経営者の予定などをつまびらかにしています。また、50分アルバイト作業をすると一食が無料になるという「まかない」制度があり、様々な人が利用しています。様々な人が集まっている場では、意識するともなく、意見やノウハウの交換が行われるといいます。これまでの飲食店ではありえない発想です。それでも未来食堂は利益を出し続けています。
人間だれしも全く同じ考え方の人はいませんが、異業種からの転職者は特に、居酒屋経営者とは大きく異なるものの考え方をしている可能性があります。この考え方の違いをコラボさせ、イノベーションアイデアを生み出せる可能性があります。
他企業とコラボするオープンイノベーション
オープンイノベーションとは下記のように定義されています。
「企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること」
企業間の提携、企業と大学間の産学共同の研究、自由参加型のコンソーシアム、グループ企業内の連携などがオープンイノベーションと呼ばれているものです。
全く居酒屋の事情を知らない外部の、しかも他業種企業からのイノベーションアイデアには、はじめは的を射ないものもあるかもしれません。しかしながらビジネスセンスを持ち合わせた企業とのコラボレーションは、これまで思いもよらなかった方向に向かい、貴方の居酒屋が「先駆者」となるイノベーションが生み出されるかもしれません。
イノベーションされた居酒屋・飲食店とはどんなものか
居酒屋・飲食業界におけるイノベーションは近年盛んに行われています。飲食店のイノベーションを請け負ったり、援助をしたりする企業も出てきています。実際にイノベーションされた居酒屋・飲食店とはどのようなものなのでしょうか。おなじみのものから、近年新しく始まったものまでご紹介します。
KURAND SAKE MARKET(クランドサケマーケット)
時間無制限、持ち込み自由でありながら、約100種類もの日本酒を飲み比べできるなど、新しいサービスで、若者のニーズをわしづかみにしたリカイノベーション。リカイノベーションは日本酒をメインとしたイベントや店舗づくりを、商品企画、製造、物流、販売までを一気通貫するこれまでにないビジネスモデルを構築した会社です。「日本酒は高い」「日本酒を飲む人は大人」というイメージを覆し、さらにおおくの日本酒をたくさんの人に知ってもらうことによって「日本のお酒に新しい価値を創る」企業です。
縮小していく日本の酒造りを盛り上げるために、「蔵元飲み比べの会」や「から揚げとレモンサワーを堪能する会」など、楽しいイベントも開催されています。
鳥貴族
大きいサイズの焼き鳥2本で280円均一という破格の安さで提供していた鳥貴族のイノベーションは、外食産業では当たり前となっていた輸入食材を一切やめ「国産国消」を目指して、すべての食材の国産化を行ったことです。小さい子供連れの家族や、外国産食材に不安を持っている人のため、そして外食産業において安さと安心を提供したいという鳥貴族の理念が垣間見えます。
2017年10月に280円から298円に値上げされましたが、300円の壁を越えないという努力がにじみ出ていますよね。低価格でありながら安心安全の国産食材への切り替えに挑戦するという姿勢は、大手チェーン外食企業である鳥貴族だからこそチャレンジできるイノベーションといえるでしょう。
塚田農場
塚田農場はエー・ピーカンパニーが運営する「生販直結」という新しいビジネスモデルによって「食産業における生産者・販売者・消費者のALL-WINの達成」を目指しています。エー・ピーカンパニー自身が宮崎地鶏の養鶏場を経営しているというから驚きです。農業が衰退しつつある日本で、国産野菜のブランド化は農業後継者を育てるうえで非常に大切なことですよね。また、仲介業者を介さない出荷・納品体制をとることで、消費者にとっては安く、生産者には安定した収入を約束することができます。
エー・ピーカンパニーは2018年3月に「焼き鳥塚田」を、高級店と大衆店の間を狙う「レアマス」居酒屋としてオープンさせました。自社の強みである「地鶏」と、プチ高級感を醸し出すこの新しい試みは、塚田ブランドをより確実なものにしてくれるという予感を感じますね。
UberEATS
人種のるつぼアメリカ、その中でも豊かな食文化がはぐくまれているニューヨークから、とうとうデリバリーのみという、実店舗のない飲食店が登場しました。専用アプリをダウンロードして、何百種類ものメニューから選んでオーダーをすると、各飲食店にその注文情報が入ります。その注文品を配達員が各店舗を回って回収し、注文者へ届けるというサービスです。2016年には東京でもこのサービスが始まっていますので、利用したことがある人もいるかもしれませんね。勿論、この飲食店の中には、東京の「酒場食堂とんてき」や「牛タン圭介」など、居酒屋もたくさん入っています。
飲食業界とシェアリングエコノミーをコラボさせたイノベーションにより、新たなビジネスモデルの形が誕生したのです。
まとめ
居酒屋経営者が考えたイノベーションが全く当たらないというわけではありません。しかしながら、野球で1人の選手が一試合で何度もホームランを打つことが難しいように、うまくいかなくなる時が必ず来ます。
「経営につまずいた!」と思ったら、時には異業種やこれまで関わり合いの無かった分野へも飛び込んでみてはいかがでしょうか。意外なところに「イノベーションの種」は転がっているのかもしれませんよ。
参照
・https://yoshitencho.com/restaurant-management-5years
・https://kigyou-journey.com/kigyo-aidea-592/
・http://miraishokudo.com/
・https://mirai.doda.jp/series/interview/sekai-kobayashi/
・https://kurand.jp/sakemarket/
・https://www.torikizoku.co.jp/kodawari/kandou
・http://news.livedoor.com/article/detail/13577778/
・https://www.tsukadanojo.jp/
・http://www.apcompany.jp/
・https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180430-00000001-nikkeisty-life
・http://a-kicks.biz/2018/02/14/management-13/
・https://japan.cnet.com/article/35108026/
・https://www.facebook.com/sstonteki/?hc_ref=ARSWAmavLARxVJjauHm36XmZVHKQhAmP4z_R1Bp4p9Iv7SS9Da-rpB2eaHWSmIt6fEk&fref=nf
・https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000026536.html
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いかがだろうか? 業種は違えども、参考になることも多いのではないだろうか。すべての企業においてイノベーションは課題でもある。むしろ、業種が違うところから、「イノベーションの種」がみつかるかもしれない。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/