
左/山田孝之(やまだ・たかゆき)
1983年生まれ、鹿児島県出身。1999年に俳優デビュー。主な出演作は「世界の中心で、愛をさけぶ」、『電車男』、「闇金ウシジマくん」シリーズ、「勇者ヨシヒコ」シリーズ、「全裸監督」、『十一人の賊軍』。映画『正体』で第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞。また『デイアンドナイト』、『MIRRORLIAR FILMS』などで企画・プロデュースも手掛ける。
右/阿部進之介(あべ・しんのすけ)
1982年生まれ、大阪府出身。2002年に俳優デビュー。主な出演作は『キングダム』『るろうに剣心 最終章The Final』「イクサガミ」。エミー賞18部門受賞作「SHOGUN将軍」で第31回全米映画俳優組合賞受賞、シーズン2にも出演した。また『デイアンドナイト』で企画・原案・主演を務め、プロデューサーとして『MIRRORLIAR FILMS』を立ち上げる。

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企画プロデューサー:阿部進之介、伊藤主税、榊原有佑、松田一輝、山田孝之
メインパートナー:山田孝之
ゲストパートナー: 浅野忠信、髙石あかり、ムロツヨシ
出演:候補者、阿部進之介、岩上紘一郎、榊原有佑、松田一輝、山田孝之 ほか
配信:Lemino(株式会社NTTドコモが提供する定額制映像配信サービス)/10月1日より毎週木曜配信。
15歳以上であれば、年齢も性別も国籍も経験も実績も不問。まず主要キャストをオーディションで選び、オリジナルで脚本をつくり、劇場公開する長編映画をつくろう!――そんな異色のオーディション番組「THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-」が配信されます。メインパートナーを務める俳優の山田孝之さん、企画・プロデュースを務める俳優の阿部進之介さんに聞きました。
「年齢を言い訳にはさせない」(山田)
15歳から80代まで、応募総数は約14000人。一次はセルフテープでの審査。応募者が設定した役としての30秒、続く30秒を本人として自己紹介するというお題。そこから200人に絞られて二次審査。与えられた台本からの役づくりのもと、対面で演技をする。そこから選ばれた32人が三次審査の合宿へ。そこまでの道のりを「エピソード0」とし、本編に先駆けて無料配信される。
――いまのところの手応えを教えてください。
山田孝之(以下、山田)「シンプルに芝居を見ているので、良い芝居が出たら、最高! となる。それが何回もあります。そんな芝居のアプローチもあるんだ、自分では思いつかないな、ということもあって、見ていてワクワクします」
阿部進之介(以下、阿部)「僕は海外で撮影していてリモート参加でしたので、現場の熱量を感じられていないところがあるかもしれません。そこで『エピソード0』は半分、一視聴者のような感覚で観て。早く『エピソード1』を見せてくれ! という気持ちになりました」
山田「ここに至るまでには、もちろん合格発表があります。不合格とわかったあとで目が合い、ものすごい目で見られたことも経験しています。それだけ思いが強く、これに賭けるという熱量があり、悔しい! という思いがあって。でもそこで腐らずに。合格者と不合格者とでは立ち位置が違いますが、そこからまたスタートラインに立つという意味では同じです。それは現場でも伝えています」
――15歳以上であれば年齢不問。だからこそ、年齢に壁を感じる候補者の、このオーディションに賭ける思いが伝わるようでした。
山田「そもそも年齢は関係ないです。例えば大河ドラマの主役は、十代から六十代を演じたりしますよね。年齢って、何年生きたかという単純な数字の話で。今回は‟こういう役を探しています”というオーディションでもないですし。それから、何歳からでも俳優はできる! と知ってもらう意味もあります。労働基準法の制限もあって、15歳以上という条件にしました」
阿部「本当は全部オープンにしたかったんです。映画をつくるにあたっては、どの年齢の役も必要ですから。ただ、年齢制限がないから熱量があるというわけではないと思うけど、結果的にそこに繋がるという面はあるかも。誰でも来ていいと言ってくれている! という熱量が」
山田「逆に、年齢を言い訳にさせねえぞ、という面もあります」
阿部「確かに!」

――「エピソード0」には、50代で挑戦する応募者も登場しますね?
山田「初めてお芝居します! という人もたくさんいました。もし残れたら今の仕事は辞めます、という人も。また俳優や芝居についての知識が邪魔になることもあります。半端に知ってしまっている、‟こうすると下手に見える”みたいなことがわかっていると、思ったままには演じられなかったり。頭でっかちでは、良い芝居はできません。経験のない人は、逆に肩の力が抜けるだろうし」
阿部「勢いというと語弊があるかもしれませんが、その瞬間の感情がうまれる勢い、迷いのなさみたいなものは、知らないからこそ、ばん! と出ることはある。そういうことが現場で起きているだろうと想像がつきます」
――審査を見て、「演技が上手い」と「目が離せない」は別ものだなと。審査の際、そのあたりに共通した認識が?
山田「それはもう芝居がいいかどうかだけです。ここに至るには強烈なキャラクターや個性があり、残したいと思う人がたくさんいました。でもこのオーディションは‟オリジナル映画をつくるメインキャスト”という明確なゴールがあります。自身のキャラだけでは勝てないし、ある芝居でズドン! と見る人に入っていける人でも、その芝居ひとつだけで映画はつくれません。その役という人生のなかでいろいろな状況が起きますから、いろいろな感情を出せないと」
阿部「‟普通”もやらなきゃいけない」
山田「セリフが決められるなか、いかにその役として‟普通”にいるか。それが難しい。お芝居しちゃってる、と思われたらダメなので」
阿部「むしろ感情を出しているときの方がバレにくいのかも」
山田「そうだね」
阿部「素晴らしいチームでやれているなと思うのですが、言語化しなくても、ある程度の方向性が一致するんですよ。悩んだとき、多少のすり合わせはあるでしょうけど。ただ…‟演技が上手い”という言葉は正確ではないんですよね、表現として。褒めないときにも使われますし」
山田「‟お上手”」
阿部「そう、テクニカルという意味で。上手くやろうとすることが、そもそも邪魔したりもする。だから‟演技が上手い”という言い方に引っ掛かるし、‟演技がいい”という方がしっくりきます。テクニックより、ちゃんとそこに存在している。その役の感情が伝わり、共感できるかどうかかなと」
山田「それでしかないと思う。このシーンではこういう会話しかしていないけど、恐らくこういう境遇で生きてきて、この先はたぶんこう生きていくだろうというのが見えなければいけないので」

「いい芝居をしたら報われる」(阿部)
――おふたりもオーディションの経験があると思いますが、候補者への共感が?
山田「いやもう、よくこんなことができるな! と思いながら見ています。よくこんなに少ない情報で…って」
阿部「あなたもやってるじゃないですか」
山田「いやあ…まあそうか」
阿部「客観的に観るとね」
山田「参加する側じゃなくてよかったなと思って」
阿部「大変なことをやっていて、それがわかる番組になっています。僕自身、オーディションがない、俳優として活動していない、という時期があったので、そういう気持ちは痛いほどわかります。そんなとき、待ってちゃいけない! と思って、孝之と映画をつくったんです。だからバイトに明け暮れ、苦しい思いをして。自分って俳優なのか? と思ってしまう参加者にとても共感します。だからこそ、この企画をやってよかった、いい芝居をしたら報われるんだぜ! って」
――オーディションというのは参加する側も審査する側もクリエイティブなものだなと。審査側も疲労困憊では?
山田「そうですよ! サクサク決めているように見えるかもしれないですけど。まず一次審査はそれぞれにビデオを観て、集まって2日議論して。二次も10時間を4日連続でやりました」
阿部「それで14000人から絞ったと」
山田「いちばんは俳優が役の気持ちで感情をぶつけてくる、それをしっかり受け止めなきゃいけないことです。真剣に受け止めにいかないと、伝わってこない。なんとな~く見ていたら、芝居がいいかどうかもわかりません。それがしんどい。目がちょっと動く瞬間に何を思っているか? どういう人間かをまっすぐぶつかる覚悟で見にいかないと」
――そりゃあ疲れますね!
山田「番組の中でも言ってますが、そりゃあこんな大変なこと、誰もやらないよな! と思います」
阿部「演技を見るときの、孝之の集中力は本当に高い。向き合うエネルギーを感じるし、僕が拾えていないところを細かく拾っていて。感想を聞くと、なるほど! と勉強になったりします。その評価は、彼自身が演技にどうアプローチしているか? どういうところが大事かを表してもいます。孝之のなかには、それが演技にどう表れるかもしっかりとある。彼が評価として発言することは、ふだん自分がやっていることの延長線上だったり、その裏返しだったりする。そういう場面がたくさん見られると思います」

――シニア世代で、印象に残る候補者はいましたか?
山田「まず一次審査である動画のお芝居がものすごくよかった男性も女性もいました。『THE OPEN CALL』の最初の会見で僕が『50代60代のスターが生まれたら嬉しい』と言ったのを聞いて応募した! という人で。また、大ベテランの俳優さんも来てくださって」
阿部「いまでも何かを模索されている、その姿が素敵だなと。それと、演技に興味のある人はたくさんいるんだな、という印象もありました。若いころにやりたいとちょっと思っていたけど、普通に就職して、家庭を持って。これを機に応募した、という方が結構いて。そうか、やっぱり後悔したくない、挑戦したいんだな! って。そんな思いを呼び覚ますことができたのなら嬉しいです」
山田「年齢は、やっぱり関係ないと思います。俳優に限らず、何歳になっても可能性はあるのではないでしょうか。絵を描く人でもそうで、表現において年齢は関係ないですよ。バイプレーヤーとして注目を集め、主演をやるようになった方もいますし」
――特に俳優さんはハードルが高いと思ってしまうのかもしれませんね?
山田「そんなことないです、アスリートの方が高い」
阿部「アスリートよりはハードルが低いと思います(笑)」
――オーディションに通ったら仕事を辞める! という人を見て、どう思われましたか?
山田「たくさんいたんです。そういう方は演技を見る前から、力が入り過ぎていて大丈夫かな? と思ったりしました。実際には長く生きてきて、人間としての経験は豊富で、若い人よりたくさんの映画を観ている可能性があります。それで、俳優ってこうでしょ? お芝居ってこうやるんでしょ!? と頭でっかちになってしまうと、いい芝居はできないんです。また、いまと50年前とでは芝居の質も変わっています。しゃべり方も、いまは昭和と違いますよね」
阿部「人生経験を積めば、確信を持つことが増えますよね。そこで、いままで自分がまったく関わったことのない環境にぽんっと入れられるわけで。瞬発力でどう対応できるかが問われる。そこは長く生きれば生きるほど、ハードルは上がるかもしれません。もちろん人生経験が豊富だと、それを踏まえて役に共感、理解できる、そのチャンスは増えます。長く生きてきたからこその厚みは出せるはずです」

「すごい芝居をする人たちに、どうやって力を発揮してもらうか」(山田)
――まだ映画の内容は白紙のようですが?
山田「プレッシャーに感じるのは、これだけすごい芝居をする人たちに、どうやって力を発揮してもらうかで。物語をしっかりつくらないといけない」
阿部「良い役者が揃ったところでストーリーが面白くないと」
山田「ある程度、テクニックでできるお芝居では面白くないですよね。これは難しい、キツイだろう! というもの、その方向だけに振り切るわけではありませんが、なんてことない日常を描く1時間40分の映画でした、では…。エモーショナルな瞬間はあったほうがいいなと」
阿部「引き出したいですよね」
山田「候補者のインタビューも重ねています。どういう人間か? どんどんしゃべっていますから、そこから物語ができていきますよね。さらに監督は、個別に話を聞いていますから」
阿部「いわゆる当て書きということになりますけど」
――プロの俳優でも、それだけ手間と時間をかけた当て書きはありませんね?
山田「ないですねえ」
阿部「ないですよね。その監督と俳優がなんどか仕事をしていてよくわかって、彼にこの役をやらせよう! ということで書き始める、みたいなことはあるでしょうけど」
山田「もちろん最終的に映画をつくるわけですから、興行収入みたいなことは大事です。でもそこが答えではない。落ちるかもしれない、でもオーディションを受ける! 挑戦する姿勢を見せることが重要で、まずはそこが伝わればいいなと。それで参加者は悩みまくって自分をさらけ出し、とんでもない芝居を見せてくれています」
阿部「作品より前に、良い俳優を見つけることを重視して考えた企画です。演技って楽しい。僕も大好きです。まずはそれを知ってもらいたい。そんなことを思っています」
カメラマン/黒石あみ
取材&文 浅見祥子(映画ライター)
雑誌「BE-PAL」(小学館)、「田舎暮らしの本」(宝島社)、web「大人のおしゃれ手帖」(宝島社)、「シネマトゥデイ」などで映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。また「芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら」などの書籍ほか、赤楚衛二「A」、菅田将暉「着服史」、小関裕太「Y」、藤原大祐「FeaT.」、菅井友香「たびすがい」(すべてワニブックス)などでインタビューを担当。











