情熱ある造り手たちが、土地と向き合って生み出した焼酎。土や水、原料に刻まれた風土が香りや味わいとなって立ち上がる、今、味わいたい銘柄を紹介する。
『芋』力強くも洗練された、香り豊かな現代の味

尾鈴山 山ねこ/尾鈴山蒸留所 (宮崎県児湯郡)
柑橘のようにフルーティ。爽やかな余韻に酔いしれる
25度720㎖/1441円
●さつまいも(ジョイホワイト)
●米麹(白麹)
●常圧蒸留
循環型の酒造りを実践する蔵の定番酒だ。蒸留工程で出る焼酎粕を肥料にし、芋と米は自家栽培。さらに麹を手造りして、地場産の杉で組んだ木桶で発酵させる。大地と原料が持つ香りをとことん引き出すよう、真摯に造られた。マスカットやライチ、さらに柑橘を思わせる香気に満ち、爽やかな余韻も心地いい。
尾鈴山蒸留所 電話:0983・22・3973

new classic imo shochu/大和桜酒造 (鹿児島県いちき串木野市)
新酒のフレッシュな香味と古酒の甘みが溶け合う
25度720㎖/2200円
●さつまいも(コガネセンガン)
●米麹(白麹)
●常圧蒸留
江戸時代末期に創業した老舗蔵の渾身作だ。フランスへの輸出で得た知見を活かして、全量甕壺仕込みによる同一銘柄の新酒と古酒をブレンド。新酒ならではのフレッシュな香りと、古酒の余韻の長さが調和する。涼やかなデザインとは裏腹に、蔵のおすすめは夏でもお湯割り。揚げ物やマヨネーズを使った料理にぜひ。
大和桜酒造 電話:0996・36・2032
YAMADAICHI 山大一 Cider紅まさり貴蒸酎/大山甚七商店 (鹿児島県指宿市)
青りんごの香りとラムネのような爽快感
25度720㎖/2695円
●さつまいも(ベニマサリ)
●米麹(白麹)
●常圧蒸留
6代目蔵元が世に送り出した前衛的な新作は、仕込み水の代わりに焼酎を加えた“貴蒸酎”。低温でゆるやかに蒸留させることで、常圧蒸留とは思えない軽やかな仕上がりに。薄濁りなのは香味成分が豊かな証拠だ。優しくてまろやかな甘み。青りんごの香りが広がり、炭酸で割ればラムネやサイダーのように爽快。
大山甚七商店 電話:0993・25・2410
天狗櫻 混植栽培/白石酒造 (鹿児島県いちき串木野市)
13種以上の芋が織りなす複雑な果物の風味と酸味
33度500㎖/2750円
●さつまいも(紅、白、紫、橙芋系合わせ13種以上)
●米麹(黄麹、わずかに白麹)
●常圧蒸留
自社畑で自然栽培した13種以上の芋と、自然に湧いた酵母と乳酸菌で造った。心地よい独特な酸味があり、「なぞの果物のような風味が特徴です」と蔵元の白石貴史さん。醸造酒にも似た複雑味、33度というアルコール度数を感じさせない優しい飲み口に陶酔する。畑の区画ごとに瓶詰めされた原酒シリーズのひとつ。
白石酒造 電話:0996・36・2058

なかむら/中村酒造場 (鹿児島県霧島市)
芋の風味豊か。力強くも流れるような優しい飲み口
25度720㎖/2046円
●さつまいも(コガネセンガン、みちしずく)
●米麹(白麹)
●常圧蒸留
桜島が望める錦江湾のほど近くで、6代目が「風景が浮かぶ酒」をモットーに焼酎造りを行なう。地場産の芋と米、手造りの麹、蔵付き酵母で仕込んだ味は、芋の風味豊かで力強く、それでいて余韻は優しく流れるよう。手ちぎりのラベルに至るまで、造り手の思いが息づいている。蔵のおすすめは氷なしの冷水割りだ。
中村酒造場 電話:0995・45・0214
安田/国分酒造 (鹿児島県霧島市)
ソーダ割りで堪能したいライチのようなフレーバー
26度720㎖/1584円
●さつまいも(蔓無源氏)
●芋麹(黒麹)
●常圧蒸留
今注目の“香り系焼酎”の元祖ともいわれる一本は、ライチのように華やかで瑞々しい香りに驚く。原料の芋は、一度は絶滅状態にあった在来品種の蔓無源氏。麹にも同品種を使った100%芋焼酎だ。銘柄名は、煮詰めるような蒸留法を発案した安田宣久杜氏の名前から。まずはソーダ割りでその香りの魅力を堪能したい。
国分酒造 電話:0995・47・2361
萬膳/万膳酒造 (鹿児島県霧島市)
さまざまな料理に寄り添う豊かなコクと心地よい余韻
25度720㎖/2200円
●さつまいも(コガネセンガン)
●米麹(黒麹)
●常圧蒸留
蔵があるのは霧島山中の奥深く。5代目曰く「焼酎の骨格を作っているのは水」。硬度20度という超軟水の霧島裂罅水で仕込んだその味は、丸みがあって穏やか。木桶蒸留によるナッツやバニラのような芳香に、手造り麹がもたらす熟れた柿のようなニュアンス。奥行きのある味わいで幅広い料理に寄り添う。
万膳酒造 電話:0995・45・0112

本格芋焼酎 黒霧島/霧島酒造 (宮崎県都城市)
シャープな切れ味で餃子とも相性抜群
25度900㎖/1191円
●さつまいも(コガネセンガン他)
●米麹(黒麹)
●常圧蒸留
水はけのよい九州のシラス台地で育った新鮮な芋を使用。2代目社長が開発した独自の横型蒸留器で蒸留することで、風味豊かな原酒造りを実現した。黒麹ならではのとろっとした甘み、濃厚なコクがありながらも、後味はキリッとして飲み飽きない。全国的にも圧倒的人気を誇る食中酒で、とりわけ餃子と相性抜群だ。
霧島酒造 電話:0986・22・8066
嶋自慢 芋/宮原 (東京都新島)
麦麹由来の香ばしさといもの旨味が膨らむ島酒
25度720㎖/1650円
●さつまいも(べにはるか)
●麦麹(白麹)
●常圧蒸留
2024年、地理的表示であるGI東京島酒に認定された新島の芋焼酎だ。特徴は伊豆諸島ならではの製法で、麦麹で仕込むこと。麦麹由来のすっきりとした香ばしさが、糖度の高いべにはるかの甘みを引き立て、バランスのとれた味わいに。「合わない肴はない」と蔵元の宮原淳さんが胸を張る、懐の深い食中酒だ。
宮原 電話:04992・5・0016
彩響/薩摩酒造 (鹿児島県枕崎市)
爽やかで澄んだ味わい。リフレッシュしたい夜に
25度900㎖/1516円
●さつまいも(コガネセンガン)
●米麹(白麹)
●減圧蒸留
さつまいも畑に囲まれる蒸留所で生まれたのは、「究極の冷涼感」をコンセプトにした夏らしい一本。目指す酒質に向けて選んだのは日本酒用の清酒酵母だ。青りんごのような吟醸香と澄み切った飲み口が心地よい。炭酸で割れば、清々しい香りがいっそう際立つ。サバ味噌からカルパッチョまで守備範囲は広い。
薩摩酒造 電話:0993・72・1231
『麦』香ばしい麦が香る夏にふさわしい焼酎

ちんぐ白/重家酒造 (長崎県壱岐市)
澄み渡る飲み口が魚料理をグッと引き立てる
25度720㎖/1348円
●大麦(はるか二条)
●米麹(白麹)
●減圧、常圧蒸留をブレンド
玄界灘に浮かぶ壱岐島で真摯に焼酎を造る小さな蔵元。原料の麦と米はすべて壱岐産だ。常圧蒸留と減圧蒸留による原酒をブレンドする独自の造りが特徴。すっきりした味わいと麦のふくよかなコクが同居し、米麹由来のほのかな甘みも感じられる。蔵元曰く「炭酸割りにしたものを“シュワっちんぐ”と呼んでいます」。
重家酒造 電話:0920・44・5002
夏の赤鹿毛/柳田酒造 (宮崎県都城市)
ローストしたような麦が豊かに香る、軽快な夏酒
20度720㎖/1320円
●大麦(はるか二条)
●麦麹(白麹)
●中間圧蒸留
定番酒『赤鹿毛』の夏バージョンだ。エンジニア出身の現当主が、減圧蒸留と常圧蒸留のいいとこどりになるよう改良した蒸留器で仕込む。原料の麦は九州産。ローストした麦のような香ばしさが立ち上がり、余韻はほんのりスモーキー。さらに新酒ならではのフレッシュ感も心地よい。バーベキューなどの肉料理に合う。
柳田酒造 電話:0986・25・3230
本格焼酎 大隅〈麦〉/大隅酒造 (鹿児島県曽於市)
すっきりとした後味で揚げ物が軽やかに進む
25度900㎖/1058円
●麦
●麦麹
●香り厳選蒸溜
サントリーグループ「大隅酒造」が、自然豊かな大隅半島で手がける麦焼酎だ。余分な雑味が出る一歩手前の、香りが際立つ原酒のみを抽出する独自の“香り厳選蒸溜”により、飲み口は麦らしくすっきりとして、香りは華やか。優しい甘みもふっと顔を出す。飲み進めても後味は軽く、天ぷらなどの揚げ物にもってこい。
サントリー 電話:0120・139・310
『米』米由来の上品な香りと端正な味わいが魅力

豊永蔵/豊永酒造 (熊本県球磨郡)
華やかな吟醸香が漂うまろやかで優しい味わい
25度720㎖/1760円
●米(吟のさと)
●米麹(白麹)
●減圧蒸留
蔵元は長年、土地に棲み着く微生物の力を活かした米作りに、地元の契約農家と取り組んできた。そうして収穫した有機米を熊本酵母で仕込んだ焼酎は、華やかな吟醸香とまろやかな米の甘みが魅力。おすすめの飲み方はロック。優しくクリアな味わいが素材を活かした料理になじみ「刺身によく合います」と蔵元は語る。
豊永酒造 電話:0966・43・2008
球磨川/大和一酒造元 (熊本県人吉市)
香ばしい玄米の風味と優しい味わいをお湯割りで
25度720㎖/1870円
●玄米(ミズホチカラ)
●玄米麹(黄麹)
●常圧蒸留
蔵があるのは、米どころで温泉も湧く人吉球磨地方。2020年の豪雨で甚大な被害を受け、再生するさなかで生まれた一本だ。焼酎の原点と風土を見つめ直し、昔ながらのやり方で玄米を用い、蔵の敷地内に湧く天然温泉水で仕込んだ。お湯割りにすると玄米ならではの香ばしさ、じんわり優しい甘みがいっそう膨らむ。
大和一酒造元 電話:0966・22・2610
メローコヅル エクセレンス/小正醸造 (鹿児島県日置市)
バニラを思わせる甘い香りとなめらかな口当たり
41度700㎖/3520円
●米
●米麹(白麹)
●減圧蒸留
創業は1883年。日本で初めて米焼酎のオーク樽による長期熟成に取り組んだ蔵元が手がける熟成酒だ。アルコール度数の高い原酒を3年以上じっくりと熟成。バニラを思わせる甘く芳醇な香りがゆっくりと立ち上がり、口当たりはなめらか。まずはロックで。カマンベールチーズともよく合う。クラシックなボトルも印象的。
小正醸造 電話:099・292・3535
『黒糖』黒糖で造られる奄美大島ならではの酒

長期貯蔵 里の曙/町田酒造 (奄美大島・龍郷町)
優しい黒糖の甘みが煮込み料理と好相性
25度900㎖/1430円
●黒糖
●米麹(白麹)
●減圧蒸留
鹿児島県奄美の黒糖焼酎業界で、初めて減圧蒸留を導入した蔵の看板銘柄がリニューアル。大島紬の“龍郷柄”をラベルにあしらい、酒質はより軽やかに。3年貯蔵酒にフレッシュな原酒を加えることで、減圧蒸留ならではのフルーティさを前面に出した。柔らかな飲み口で飲み飽きない。7月中旬から市場に出回る。
町田酒造 電話:0997・62・5011
あまみ六調/奄美大島開運酒造 (奄美大島・宇検村)
ダークチョコレートのような深い香りに豊かなコク
30度900㎖/1527円
●黒糖
●米麹(白麹)
●常圧蒸留
どっしりとしたコクと熟成感。ダークチョコレートやドライプルーンのような甘やかな香りが立ちつつも、厚みある辛口でキレがある。70年以上使い継がれてきた甕壺で仕込み、黒糖の香りを逃さない常圧蒸留によって生まれた味わいだ。名前は、奄美の人々が宴の終わりに踊るソウルフルな“六調”にちなむ。
奄美大島開運酒造 電話:0120・52・0167
浜千鳥乃詩ゴールド/奄美大島酒造 (奄美大島・龍郷町)
オークの香りにビターな甘さ。食後にちびちび味わいたい
40度750㎖/3750円
●黒糖
●米麹(白麹)
●常圧蒸留
南国の野鳥が飛び交う自然豊かな土地で、奄美大島産の黒糖を丁寧に発酵し蒸留。オーク樽で熟成した異なる仕込みの原酒をブレンドした一本だ。琥珀色に輝き、焦がし砂糖や熟した果実を思わせる香り。まろやかで奥行きのある味、こっくりとした甘みが広がり、意外にも羊羹と好相性。柔らかな手触りの丸瓶も素敵だ。
奄美大島酒造 電話:0997・62・3120
『ボタニカル』副材料を加えた多彩な香りの新ジャンル

spicy & citrus
イヨシコーラ酎/大山甚七商店 (鹿児島県指宿市)
スパイスが爽やかに弾けるクラフトコーラ風味
45度300㎖/3520円
●さつまいも
●米麹(白麹)
●常圧蒸留
クラフトコーラ専門メーカー「伊良コーラ」と共同開発した、焼酎ベースのスピリッツ。コーラ用に秘伝調合されたスパイス、フレッシュレモンとライムを芋焼酎に漬け込み、銅製のポットスチルで再蒸留。スパイシーで爽やかな香りに、芋の柔らかな甘みが重なる。アルコール度数25%(1800㎖容量)もある。
大山甚七商店 電話:0993・25・2410
WATANABE infusion shochu ヒダマグリーン/渡邊酒造場(宮崎県宮崎市)
茶葉を漬け込んだ清涼感あふれる香り
25度720㎖/1980円
●さつまいも(コガネセンガン)
●米麹(黒麹)
●常圧蒸留
お茶栽培の盛んな宮崎市田野町で生まれたのは、新茶らしい緑の香りをまとった一本だ。家族で営む蔵が、自家栽培の芋と地場産の新米で仕込んだ芋焼酎に、地元産“さえみどり”の一番茶を漬け込んだ。ほのかな甘みとほどよい渋みがあり、清々しい余韻が広がる。土地の守り神「火玉」をイメージしたラベルも印象的。
渡邊酒造場 電話:0985・86・0014
CHILL GREEN spicy & citrus/濵田酒造 (鹿児島県いちき串木野市)
香りはまるでレモングラス。炭酸割りで楽しみたい
25度720㎖/1419円
●麦
●麦麹(白麹)
●減圧蒸留
レモングラスを思わせる柑橘香と山椒のようなスパイシーさ。その香味を生み出しているのは、台湾や中国の一部で収穫される香辛料マーガオだ。炭酸やトニックウォーターで割れば、爽やかな香りが弾ける。ベースの麦焼酎らしい軽やかな旨味も感じられ、唐揚げや焼き鳥などしっかりした味つけの料理が進む。
濵田酒造 電話:0996・21・5260
取材・文/安井洋子 撮影/甲斐寛代
※『サライ』2026年8月号より












