文/鈴木拓也

画像はイメージです。

昨今、親が遺した“デジタル遺品”をめぐるトラブルが増えている。

デジタル遺品とは、パソコンやスマホの中にある写真データや口座情報といった無形の資産。本人以外にPINコードやパスワードが知られないまま死去し、遺族が重要な情報を取り出せない事例が少なくないのである。

その対策として、デジタル遺品を取り出す“デジタル遺品整理”というサービスも登場。ネット社会の発展に伴い、需要は増えている。

今回は、デジタル遺品というトピックについて、遺品整理を行う(株)GOODREI 代表取締役、末吉謙佑さんにいろいろとうかがった。

簡単ではないロック解除

――デジタル遺品整理は初耳の方も多いと思います。具体的に、どのような業務を行っているのでしょうか?

遺族から、亡くなった方のスマホ、タブレット、パソコンを預かり、解析ツールを使って端末のロックを解除するのが基本的な業務です。ロックを解除できたら、思い出の写真とか連絡先一覧などはすぐ取得できるでしょうが、ネット銀行や株式投資などのアカウントにログインするには、別のIDやパスワードが必要となり一筋縄ではいきません。また、解析ツールさえあれば一発で解除とはいかず、何か月もかかることも稀ではありません。

遺族としては、相続手続きの期限などがあり、すぐにでも中身を知りたいでしょう。しかし、端末のセキュリティは年々強化されており、おいそれと解除できないのがふつうです。例えば、iPhoneの最近の機種は、PINコードの入力を10回間違えると、中身が初期化されてしまうという設定があります。この設定がされていれば、プロでもお手上げということもあり得るのです。

二段階認証という厄介な問題

――PINコードやパスワードに輪をかけて、二段階認証が必要な場合だと、さらに厄介ではありませんか?

本当にそのとおりです。遺族の方から依頼があった際、私どもはまず、「亡くなられた方のスマホは解約せず、そのままにしておいてください」と伝えます。それは、SMSでパスコードを受け取るタイプの二段階認証があった場合に備えてです。

解約して、生きている電話番号が失われてしまうと、二段階認証ができなくなります。亡くなられたときは、もっと安いプランに落としてでもいいので、とにかく電話番号は生かしておくことは大事です。

若い世代の急死による依頼も多い

――やはり、高齢の親を亡くした、お子さんからの依頼が多いのでしょうか?

実はそれほど多くはなくて、30~50代で事故・急病で亡くなられたケースが、比率としては高いです。まだ若くて金銭的な遺産はなくても、スマホの中にある故人と一緒に写っている写真だけでも欲しいという依頼もあります。

数十年も会っていない、疎遠な親族が亡くなってという依頼を受けたこともあります。亡くなられた方にはお子さんがおらず、遺産の受取人が遠い親族だけというケースですね。それなりの資産があるようで、相続税を払わないといけないということでした。解析して調べると、金の先物取引をしていることが判明し、つつがなく相続の処理ができました。

高齢の親御さんで資産がある場合、しっかり遺言書など残されている方が多いのです。対して、死を予期してもいない若い世代だと、重要なデータがロックされたスマホの中にしかないということになりがちで、解析作業も苦労が多くなります。

また、高齢者の場合、身体は健常でも認知症を発症し、ご自身がPINコードもパスワードも思い出せなくなってしまうケースもあります。認知能力に問題があっても、ご本人の承諾なく、スマホを勝手に開けていいのかどうか。グレーゾーンの部分が多く、本当に難しい判断が求められます。

死しても課金され続けるサブスク

――デジタル遺品といっても、思い出の写真やネット口座の金融資産だけでなく、負の資産というべきものもあるそうですね。

はい、その代表例がサブスクリプションで契約した各種サービスです。定期購読している電子新聞、映画・ドラマのプラットフォーム、月極で配達される食品など、いくつものサービスを契約している方は少なくありません。

亡くなられたからといって、自動では停止されず、毎月課金されていきます。カード払いであればカードの有効期限が過ぎるまで、銀行口座からの引き落としであれば残高がゼロになるまで、課金は続くことでしょう。こうしたサブスクの解約も、私どもの業務に含まれることがあります。

――

末吉さんのお話をうかがっているうちに、「これほどPINコードやパスワードが難儀の元なら、終活の一環として、パスワードは数桁の簡単な数字とし、家族に教えておけばいいのでは」と思った。しかし、それはまた別の大きな問題になりかねないと、末吉さんは答えた。この点についてのお話は、次回の記事に続く。

お話を伺った方:末吉謙佑さん

株式会社GOODREI 代表取締役。証券会社のトレーダーとしてキャリアをスタートした後、複数のIT関連企業を起業。2022年からはサイバーセキュリティ・データ復旧事業を手がけ、故人のスマートフォンやパソコンからデータを安全に解析する「デジタル遺品整理」 を展開。これまでに取り戻したデジタル資産の総額は数千万円にのぼり「たった数日で1000万円分の資産が見つかった」など感謝の声が多数寄せられている。著書に『60歳からのスマホのパスワード あんしん整理ノート』(秀和システム新社 https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798076232.html)がある。

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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