日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。

解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)

昭和26年、北海道生まれ。北海道大学医学部卒業。久留米大学医学部教授などを経て、平成15年、糖尿病などの生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を開業。

「果糖ブドウ糖液糖」を避ける

二糖類の砂糖や多糖類の炭水化物が最終的に分解されるブドウ糖は、「単糖類」と呼ばれます。単糖類には、ブドウ糖のほかに「果糖」があり、こちらは果物に多く含まれます。

果物はビタミン類が多いから健康にいいと、積極的に摂る人がいると思います。しかし、ほどほどにしておくことをすすめます。

というのも、果糖は人を太らせやすい性質を持っています。先ほど述べたように単糖類にはブドウ糖と果糖がありますが、人間の体はブドウ糖を優先して使うようにできており、果糖は脂肪につくり変えて蓄積される性質を持っています。

つまり、肥満に繫がりやすい糖なのです。さらに気になるのが、果糖はとくにAGEを増やすと考えられる点です。ブドウ糖と果糖は化学式は同じですが、ほんの少し異なる構造から、果糖はブドウ糖よりタンパク質とくっつきやすい性質があります。

そのため、果糖はブドウ糖の約10倍の速さで糖化が起き、AGEが産生されることがわかっています。

「血糖値に影響を与えていないから果物は大丈夫」というのは大きな誤解で、静かに体内で大量のAGEがつくられている可能性があるのです。

とくに、吸収が早い液体にしてしまうと、それだけリスクが高まります。市販の果汁100%ジュースはもちろん、新鮮な果物を搾った自家製のジュースにも同様のリスクはつきまといます。

それでも、果物には食物繊維やビタミンといった良い成分も含まれます。ですから、ジュースにしないで、そのまま少量を食べることをすすめます。

そして、果物より遙かに問題が大きいのが、「果糖ブドウ糖液糖」「ブドウ糖果糖液糖」なる物質です。

この2つの表示の違いは、果糖とブドウ糖のどちらが多く含まれているかで決まります。多いほうが前にくるのですが、どちらも極力、摂取を避けるべきです。

これらは、添加物ではなく「甘味料」に分類されます。

トウモロコシやサツマイモなどを原料につくられており、砂糖よりも安くて保存性が高いため、食品製造会社が好んで使います。

食品表示欄をチェックしてみる

この果糖ブドウ糖液糖(あるいはブドウ糖果糖液糖)の危険性については、世界中からさまざまな研究報告がなされています。

まず太りやすいこと。

そして糖尿病、心血管疾患、脳卒中のリスクが上がること。

さらに虫歯をつくりやすいことなどが明らかになっています。

また、原料のトウモロコシの多くが遺伝子組み換えの輸入品であることから、免疫疾患やがんの発症に関与するのではないかとも疑われています。

そんな危険も指摘されている甘味料が、みなさんが普段から口にしているものに、かなりの高確率で使われています

清涼飲料水や炭酸飲料、健康ドリンクだけでなく、ドレッシングや麺つゆ、タレ、加工食品など……。冷蔵庫の中にある食品の表示欄をチェックしてみてください。必ずなにか見つかるはずです。

とはいえ、忙しい現代人がすべてに気を配り、こうした加工食品に頼らずに暮らすのも大変なものです。

できることから、少しずつ減らしていくことを心掛けましょう。

次第に慣れ、意識せずとも生活習慣や食習慣は変わっていくものです。

一方、無意識に毎日、果糖ブドウ糖液糖(ブドウ糖果糖液糖)が入った清涼飲料水をがぶがぶ飲んでいたら、糖質中毒になるのはもちろんのこと、いずれ健康を害するのは火を見るより明らかです。

***

世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』

現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。

『疲れない体をつくる最高の食事術』
牧田善二/著 四六判208ページ 小学館刊 1650円(税込)

 

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