明治9年、久留米市で生まれた吉田博は、18歳で上京して本格的な画業を開始し、23歳の時、描きためた水彩画を携えて、1か月の生活費のみを持って渡米しました。この時のデトロイト美術館での展示即売会の大成功を糧に、以後何度も滞米、滞欧を重ねて古今の西洋美術にふれ、画技を磨きました。

吉田博《日本アルプス十二題 穂高山》大正15年(1926)MOA美術館蔵

日本最初の洋画団体である太平洋画会の中心人物として活躍し、関東大震災で被災した太平洋画会会員の作品販売を目的に渡米した際、米国で日本の版画が大変な評判を得ていることを知り、その後の半生を油彩画と並行して木版画の制作に捧げました。

MOA美術館で開催の「吉田博 今と昔の風景」展は吉田博の魅力を満載した展覧会です。(11月29日~2025年1月21日)

吉田博《雲海 鳳凰山》昭和3年(1928)MOA美術館蔵

本展の見どころを、MOA美術館の学芸員、金沢和泉さんにうかがいました。

「近代風景画家の第一人者、吉田博(1876-1950)は、風景を描く際の心得として「風景にやどる真の美を見ひらき、風景のもつ美しき姿の深い理解がなくては、真の風景画を描き得るものではない。」とし、自ら体感した風景を作品にしました。

特に、後半生に傾倒した私家版木版画では、油彩画のタッチと水彩画の色彩表現を用いた洋画技法を取り入れ、未開拓の新しい芸術を創造しました。

吉田博《米国シリーズ レニヤ山》大正14年(1925)MOA美術館蔵
吉田博《瀬戸内海集 帆船 朝》大正15年(1926)MOA美術館蔵

本展では、合計7年間を超える外遊から生まれた「米国シリーズ」、「欧州シリーズ」や、刻一刻と変化する海を捉えた「瀬戸内海集」シリーズなど、木版画の代表作約70点を展観します。

また、博が描いた風景の現在の姿を撮影し、独創的な技術で表現された作品の魅力をオリジナル映像で比較展示します」

吉田博《東京拾二題 亀井戸》昭和2年(1927)MOA美術館蔵

変貌した現在に昔の風景を重ねて観るのも一興です。ぜひ会場でお楽しみください。

【開催要項】
吉田博 今と昔の風景
会期:2024年11月29日(金)~2025年1月21日(火)
会場:MOA美術館
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
電話:0557・84・2511
公式サイト:https://www.moaart.or.jp
開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時まで)
休館日:木曜日、12月16日(月)~20日(金)、1月6日(月)~10日(金)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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