3ヶ月で11.3キロのダイエットに成功した、歯科医師・宮本日出先生の著書『レモン水うがいダイエット』(あさ出版)から、「ヤセ味覚」について紹介します。
文/宮本日出
レモンで「ヤセ味覚」を育てる
ダイエットするには「デブ味覚」を「ヤセ味覚」に変えなければなりません。そのためにはまず、舌の味蕾細胞の苦味を感じる機能を取り戻す必要があります。舌で苦味を感じることができれば、苦味がストッパーの役割を果たし、甘味を感じる機能が弱くなり、食欲が抑制されます。その後少しずつ、脂肪味の少ない健康的な食事を好むようになっていくのです。
どういうことか説明しましょう。
舌が苦味を感じると、体が苦味成分を敏感にキャッチします。キャッチされた苦味成分は信号化され、脳の視床下部へと情報伝達されます。これは無意識下で起こります。
視床下部には食事を調整する神経が2つあります。1つは食欲を高める神経であるアグーチ関連ペプチド産生神経(AgRP神経)、もう1つは食欲を抑える神経であるプロオピオメラノコルチン産生神経(POMC神経)です。苦味の信号はこのプロオピオメラノコルチン産生神経に伝達されるため、食欲が落ち、少しの食事量で満足できるようになるのです。
また、苦味の信号が脳に送られると味覚が根本から変わっていくため、食の好みも変化し、健康的な食事で満足できるようになっていきます。それまで好きだった濃い味のものや脂っぽいものを受けつけなくなり、あっさりした味のものをおいしく感じるようにもなっていくのです。
本書で紹介する「レモン水うがいダイエット」は、こうした苦味の働きを利用して「ヤセ味覚」を育て、デブ味覚を駆逐していくダイエット法なのです。
以前から医療現場では、味覚障害の患者に対して味蕾細胞を刺激する目的で、臨床実績が豊富なレモン水でのうがいが行われており、レモンには唾液分泌を促すだけでなく、味蕾細胞の働きを回復させる効果があることが知られています。
さらにレモン水うがいダイエットには、効果が早期に現れやすい特徴もあります。なぜなら、味をキャッチする味蕾細胞は10日で生まれ変わるからです。どんなに「デブ味覚」だった期間が長くても大丈夫です。誰でも10日間レモン水でうがいするだけで、「デブ味覚」から「ヤセ味覚」に変えることができます。
脂肪まで分解する「苦味」の驚くべきパワー
ダイエットをしていても一向に体重が減らない人がいますが、その原因の1つに胆汁(たんじゅう)の分泌不足があります。
胆汁を作る肝臓は体内で最大の内臓で、代謝、排出、解毒、恒常性の維持などの500種類以上の働きがあり、重要な役割を担っています。肝臓に蓄えられて濃縮された胆汁は、摂取した脂肪を分解し、吸収されやすくする役割を担います。胆汁が正常に働いていると、脂肪がきちんと分解されるので、栄養として体に脂肪が吸収されます。
ところが、胆汁の働きが悪いと脂肪は適切に吸収されないので、細胞の栄養にならず、お腹やお尻に蓄積されます。胆汁の働きがイメージしにくい人は、汚れた食器を思い浮かべてください。汚れた食器を洗剤で洗えば、食器はきれいになります。しかし、きれいに洗いきれていない場合、食器には汚れが残ったままです。使い続けると、食器にはますます汚れが溜まります。この溜まった汚れが、体でいうところの「余分な脂肪」なのです。
肥満の人は、やせた人に比べて胆汁の量が少ないため、「余分な脂肪」が体に溜まりがちです。胆汁の分泌を改善することで、脂肪が分解され、代謝が大幅に回復します。ダイエットをする人は余分な脂肪を溜めないように、胆汁の働きを回復させることも大切なのです。
そしてこの胆汁の分泌を促進させるのが、「苦味」です。苦さが刺激となって、肝臓から胆汁がよく分泌されるようになります。研究によると、苦い食材を食べて苦味成分を体内に入れなくても、舌で「苦味」を味わうだけでも胆汁の分泌促進効果があることがわかっています。舌の苦味を感じる感覚を敏感にすることで、通常の食事をしながら、胆汁を分泌しやすくできるのです。
「レモン水うがい」をすると、舌の苦味を感じる感覚を簡単に敏感にすることができます。「レモン水うがい」には、食欲を抑え食事量を減らすだけでなく、脂肪まで分解してしまうパワーもあるのです。
胆汁の主な働き
代謝
栄養を体が必要とする形に変えたり、エネルギーをつくり出したりする
解毒
体に入った有害物質を無毒化する
脂肪の分解・吸収
脂肪を消化・吸収されやすい形に分解する
恒常性の維持
体を一定の状態に保つ
排泄
老廃物を体外へ出す
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『レモン水うがいダイエット』(宮本日出 著)
あさ出版
宮本日出(みやもと・ひずる)
歯科医師、口腔外科評論家。1990年愛知学院大学歯学部卒業後、アデレード大学(歯科博士〔Ph.D〕取得)、明海大学で口腔外科最先端医療の臨床的、基礎的研究に従事し、アメリカ、イギリス、オランダ、ドイツ、オーストラリア、日本で160編を超える医学論文を発表。2000年には第13回日本顎関節学会学術大会で優秀賞を受賞。2007年幸町歯科口腔外科医院(埼玉県志木市)を開業。現在は「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)、「AWAKE」(bayfm)などのTV・ラジオ出演をはじめ、Yahoo!ニュース、ダイヤモンド・オンライン、PRESIDENT Online、歯科医療最大級のwebサイト「WHITE CROSS」などのウェブメディア、患者さんと歯科医院をつなぐ治療説明用マガジン「nico」(クインテッセンス出版)などで情報を発信し、話題の歯科医師として幅広く活躍中。