マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回のテーマは、「シニア社員の活用」です。

未来は予測不可能なことばかりですが、そのような不確実な未来の中でも確実に予測できることは高齢化・人口減少による労働力人口減少です。この変化の流れは止められず、組織運営上で変化対応していくためにはシニア社員(この記事では定年後再雇用となる社員を指します)の活用は今後も益々、重要な組織課題になっていきます。確実に訪れる労働力人口減少の未来においてシニア社員と会社側がそれぞれに気を付けるべきポイントを考えていきます。

シニア社員が活躍できる環境とは?

労働力人口が減少することが確実な未来の社会において、シニア社員の活躍は会社運営においてももちろんですが、今後の日本の経済成長にも欠かせません。そのためには組織の成長戦略としてシニアの活用を検討していく必要があります。組織側がシニア社員を必要不可欠な存在であることを正しく理解し、シニア社員が活躍できる環境を十分に検討し、整備していくことが前提条件として必要なのです。

シニア社員が活躍するために必要なことは?

シニア社員が自己裁量を持ち、任された仕事を実行していく上で必要なことは、そのために必要な権限を持つことが欠かせません。そして、権限を持つためには必ず責任が伴います。つまり、組織側がシニア社員に対して自己裁量という権限と釣り合った果たすべき責任を明確にしておくことが必要なのです。

再雇用となるシニア社員は、これまでとは異なる責任を担うことになります。当然これまでと異なった自己裁量をもって行動していく事になります。シニア社員にとっては再雇用前よりは小さな自己裁量になるケースが多くなりますので、環境が変わり、これまでとは異なる働き方を求められることを正しく理解することが必要です。間違っても過去の権限に執着したり、変わらず同じ権限を持ち続けていると勘違いしたりすることがあってはいけません。

シニア社員にはどのような責任をもってもらうべきか?

シニア社員の責任を明確にするためには、初めに組織側がシニア社員に何を求めるかを考える必要があります。つまり、組織の更なる成長のためにシニア社員にどのような機能を果たしてもらう必要があるのかを組織戦略として考える必要があるのです。組織側がシニア社員に対して果たすべき機能を明確に出来なければ、シニア社員は勘違いを起こし、これまでの役割の延長線で仕事を行ってしまうケースも発生します。

そのため、新たな責任を明確にしないまま、シニア社員をもともとの部署に残したり、別の部署へ異動させるのは避けましょう。どのような責任を持ってもらうかを新たな移動先に勝手に決めさせるなど、現場任せにしてはいけません。組織全体の中でシニア社員が果たすべき役割を検討し、責任を明確にしていく必要があります。これまでの経験を活かして管理業務からプレイヤー業務に変わってもらったり、経験を伝える教育業務やその他メンバーへの支援業務など、組織が求める責任を明確にしていく必要があります。

シニア社員のパフォーマンスを下げる原因とは

再雇用により雇用は継続しますが、雇用形態が変更するので、シニア社員と会社側の関係は新たな関係に切り替わるということはお互いに忘れてはいけません。

シニア社員にとって過去の部下が上司になることがあります。シニア社員は自分の立場を間違えず、新たな立ち位置で仕事を行う意識を持たなければいけません。

同様に上司側もシニア社員に自分の立場を勘違いさせないマネジメントを行うことが必要です。上司にとってもシニア社員が元上司であるため余計な配慮を行うこともあるかもしれません。しかし、シニア社員が新たな上司を正しく認識できなければ、甘えにもつながり、パフォーマンスを発揮することが出来ません。このような勘違いが残っていると上層部の幹部が自分の元部下だったなどの過去の個人的な立場を利用して組織内でマウントを取ることにもつながります。無責任な発言も多くなると組織の中で混乱が起こる危険があります。

また、現役時代から給与が減ることで、仕事のパフォーマンスを落としていいという考えも起こりがちです。立場や責任を明確にすることでシニア社員に正しい考えを持たせて、パフォーマンスを下げないマネジメントを行っていく必要があります。

シニア社員のモチベーションを高める評価とは?

責任を果たしても評価や処遇に反映されなければ、シニア社員でなくともモチベーションは上がりません。ただでさえ、現役時代との給与の差からモチベーションが下がる可能性があります。さらに、パフォーマンスに関係なく賃金が変わらない評価制度であるならば、やってもやらなくても一緒という気持ちになるかもしれません。

明確な基準によって1年更新時に給与を決めるなどの評価制度を導入することが可能であれば、1年1年緊張感を持って仕事に取り組んでもらうことも可能です。再雇用により基本給がこれまでより減ったとしても、目標として求められることが明確であり、達成すれば評価される環境であれば、シニア社員になって以降も、評価による成長感を感じることでモチベーションを高めながら働き続けることは可能になるでしょう。

まとめ

確実に訪れる労働力人口減少の未来においてシニア社員の経験を組織の成長に生かすためのマネジメントについて考えてきました。会社側がシニア社員に求める働きを定義することやシニア社員も環境が明確に変わったことを正しく認識し、これまでの延長線上で働くという現状維持の思考のまま働いてはいけないということが重要です。再雇用したシニア社員が活躍するために、会社側やシニア社員が意識することは以下の5つです。

1:会社組織がシニア社員に活躍できる舞台を用意する
2:シニア社員の自己裁量に併せた責任を明確にする
3:組織の戦略としてシニア社員の活用を考える
4:再雇用後はシニア社員も会社も環境が変わったことを正しく理解する
5:再雇用後も緊張感と成長感を感じる評価を行う

今回はシニア社員の裁量と組織の成長戦略の関連性に焦点を当ててみました。シニア社員が自己裁量を持ち、自身の経験を組織の成長に活かしてもらうために上記のことに注意して、シニア社員の貢献を最大限に引き出していきましょう。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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