いつでもどこでも仕事・家族・友人からの連絡が入るようになり、スマホを通して日々の様々な情報を際限なく入手できるようになった今、利便性を感じる一方で、情報量の多さに頭がいっぱいになって心に余裕を無くしている人もいるのではないでしょうか? まじめで一生懸命な人ほどやらなければならないことや情報に振り回されてしまい、本当の自分を見失ってしまうことも。
そこで、「思考の整理家」として「人や企業の思考をシンプルにし、持っている可能性を最大限に引き出す」活動を続けている鈴木進介さんの著書『『頭の“よはく”のつくり方』から、頭の中に余裕を生み出し、本当に大切なことに向き合えるようになるコツをご紹介します。
文/鈴木進介
さまざまなノイズに振り回される日々
今日中にこなすToDoリストのタスクは20個、「さぁ頑張ろう!」と思った瞬間に、クライアントから提案書を出してほしいというオーダーが。さっそく取りかかろうと思ったら、今度は「テレビ会議があと1時間で始まります」という通知メールを受信。あわてて会議の準備をした瞬間に、今度は「俳優〇〇さんが不倫で映画を降板」というニュースサイトからの通知がスマホに。必死に無視して仕事に集中するつもりが、「久しぶりに飲みに行こう」のLINEが友人から到着。え、まだ朝だけど……。
そうこうしているうちに、テレビ会議が始まったら開口一番に「最近、鈴木さんのSNSには“いいね”があまりついてないのでは?」という雑談からスタート、ほどなくして妻からは「仕事帰りにスーパーでお惣菜を買ってきて!」というLINEがきて、それに続いて、先ほどの友人からは「既読スルーしないでよ~」と追い打ちが。
仕事開始1時間で、もはや私の頭の中はノイズにハッキングされたようです。あっという間にさまざまなことでいっぱいになってしまいました。
あなたは日常生活や仕事で頭の中が「いっぱいいっぱい」になったことはありませんか? 今、私たちのまわりには多くのノイズが取り巻いています。「ノイズ」とは、雑音・雑念・雑作業など本来意識を振り向けたいこととは関係がないことを指します。
私たちの日常は時代の進化とともに、頭の中がいっぱいいっぱいになるほど忙しくなってきました。男女問わず家事をこなし、ワークライフバランスのために仕事と家庭の両方に気を配り、人手不足の中、マルチタスクをこなす日々。忙しいのに「残業はするな!」と言われ、ビジネスでは、「もっとスピードを!」と加速することを要望されるグローバル生存競争へ。ひと息つこうと思ったら、手のひらの画面からあふれ出る過剰な情報やフェイクニュースなど。
特にネット、スマホ、AIなどIT技術の進化は、私たちの生活を変え、働き方も根本から変えるため、今までどおりの生活や働き方ではもはや対処できない時代になりました。
放っておけば、頭の中にはよはくがなくなり、日々、ノイズに押しつぶされてしまいそうな勢い。かといって家庭も仕事も手抜きできない現実。
ますます先行き不透明になる時代にあって、ノイズは増えることがあっても減るようには思えません。いったい、このジレンマにどう向き合えばよいのでしょうか?
頭に余裕が生まれるメカニズムとは
安心してください! その答えは意外にも簡単です。頭の中がいっぱいいっぱいになるのであれば、逆に頭の中のノイズを減らし、スペースを空けてあげればいいのです。
考えごとや情報などで頭の中が、キャパオーバーを起こす前に少しでもノイズを減らせれば、「思考に“よはく”」ができます。よはくができることで、しっかりと自分と向き合う余裕が生まれ、本当の自分の気持ちは何か? 次はどこに集中すればよいか? などがわかるようになり、ノイズに邪魔をされず自分らしさを取り戻すことができます。
また、余裕ができればノイズによって生じてしまった不安や焦り、怒りなどストレスも静めることができるので生活や仕事がよりよい方向に向かいます。
スマホでも、アプリを詰め込み過ぎるとキャパオーバーで操作ができなくなってしまいますよね。使っていないアプリを削除してスマホ容量に空きをつくれば、本当に必要なアプリはサクサクと動き、使い勝手がよくなります。
頭の中も同様に、キャパオーバーになる前によはくをつくっておけば、大切なことだけに集中でき、ストレスなく行動できるようになるのです。
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『頭の“よはく”のつくり方』(鈴木進介 著)
日本実業出版社
鈴木進介(すずき・しんすけ)
思考の整理家®。1974年生まれ。株式会社コンパス代表取締役。現在は「思考の整理術」を使った独自の手法で人材育成トレーナーおよびコンサルタントとして活動中。大学卒業後、IT系企業や商社を経て25歳で起業。「金なし・人脈なし・ノウハウなし」の3重苦からスタートしたため、3年以上まともに給料が取れずに挫折続きの生活を送る。その後、思考を整理すれば問題の9割が解決していることに気づき、「思考の整理術」に開眼。以来、10年以上にわたり研究を重ねて体系化。難しい問題を優しく解きほぐす「思考の整理術」は、フリーランスや起業家、上場企業まで幅広く支持され、コンサルティング実績は100社以上、研修や講演は年間150日以上登壇、セミナー受講者数は累計3万人を超す。