急ぎ足の観光客だけでなく、地元の「みやこ人」たちからもこよなく愛される京都の「おうどん」。出汁や麺、具材など個性豊かなメニューの数々と、その美味しさの秘訣を紹介する。

店の名を冠した「冨美家(ふみや)鍋」は上質の具材も熱々で楽しめる

冨美家 本店(鍋焼きうどん)

「冨美家鍋」720円。もちっとした自家製麺と、海老天、焼き餅、花麩 、蒲鉾、煮椎茸、葱、生卵を煮込む熱々の鍋焼きうどん。
出汁を含んだ麺や天ぷらの衣が美味しい。頃合いを見て卵を割って絡めればまた違った味に。

京都で鍋焼きうどんといえば、誰もが名を挙げる名店。昭和21年の創業当初は甘味店として錦市場を訪れる客で賑わった。ちょうどその頃、巷では小鍋で煮込んでそのまま出す鍋焼きうどんが流行した。発祥は江戸期の大坂に遡るといわれるが、創業者の藤田孝吉は、戦後まだ高価だった鍋焼きうどんを、なんとか庶民価格でと苦心し、昭和38年に鍋焼きの販売を始めた。原価は気にせず、良い食材を揃えたが、錦市場内にあったことも、より上質の材料を仕入れることに繋がったそうだ。

自家製の太めの麺に利尻昆布とサバやウルメ、メジカ鰹などの削り節でとった出汁を合わせ、具材は、出汁がよく染み込む衣の厚い海老天ややわらかな焼き餅、煮椎茸。生卵が半熟になった頃合いに黄身を割って絡めると、コクのあるまろやかな味になる。

小さな土鍋で煮込まれグツグツと音を立てながら運ばれる鍋焼きうどんは、冬のご馳走。ここ『冨美家』では、海老天なしの錦鍋やとり鍋、ご飯が入ったおじやうどんなど種類も豊富だ。

創業時の店舗は錦市場内に残るが、現在の本店はその北側。モダンな雰囲気の外観だ。 

京都市中京区堺町通蛸薬師下ル菊屋町519
電話:075・222・0006
営業時間:11時~16時30分(土日は~17時、いずれも最終入店) 
定休日:不定
交通:阪急京都線烏丸駅より徒歩約5分

 

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎、竹中稔彦
※この記事は『サライ』2022年3月号別冊付録より転載しました。

 

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