お互いが結婚してからは2人きりで会話する機会さえなかった

実家を出てからは、妹はもちろん、家族ともお盆や正月など大型連休でしか会わない関係になった。そのときの妹との関係を「親戚の子という距離感だった」と振り返る。

「7つも離れていると、共通の話題も少ない。男女だから一緒に暮らしていたときから同じ趣味などもなかったですし。親と一緒であれば妹と会話することもありましたが、2人きりになると途端に気まずくなりました。お互いが気まずいと思いつつも、それを隠して『最近どうよ?』というような親戚のおじさんみたいな話しかけ方をしていました。

妹との関係を悩んではいなかったので周囲に相談することはなく、仲良くなりたいなどと思うこともなく、微妙な距離感のままの関係がずっと続きました」

健一さんは30歳のときに結婚し、その2年後に妹は25歳で結婚した。健一さん夫婦はすぐに子どもができたが、妹は夫婦2人の生活が続いていた。妹は実家には日帰りで帰省するようになり、健一さんと2人きりで会話を交わすことはほぼない状態だったという。

「両親は孫をかわいがり、私たち家族が帰省すると孫中心の生活になっていました。まだ自分たちが若いときは結婚したら夫側の実家でお正月は過ごすというのが普通だったので、妹は義実家で過ごした後に実家に数時間寄るようになっていました。妹が帰省時には私たち家族も実家にまだ滞在中のことが多く、みんなで一緒に食事はしていました。でも、妹と2人で話す機会はまったくありませんでした」

妹の夫は仕事が忙しい人で、実家への帰省はいつも妹1人だった。そんな妹夫婦は結婚して10年で離婚に至る。

「妹が離婚したという話は母親から聞きました。そのときに『子どもがいなくてよかったな』と母に言ってしまったら、母親が私に怒ってきたんです。そのときに妹はずっと不妊に悩んでいたことを知りました」

父が亡くなった後、初めて泣けたのは妹の前だった。【~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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