『ドラえもん』で知られるまんが家、藤子・F・不二雄さんが1969(昭和44)年に発表したSF短編『ミノタウロスの皿』が、世界で初めて舞台化される(12月10~28日、東京・新国立劇場 小劇場)。物語は、「ズン類」と呼ばれる牛が支配するイノックス星に不時着した宇宙船の乗組員と、「ズン類」に「食べられる側」として生きる少女・ミノアとの関係を軸に展開していく。主演の加藤清史郎さんに、川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムでお話を伺った。

加藤清史郎/2001年神奈川県生まれ。1歳のときにデビュー。2009年放送の大河ドラマ『天地人』(NHK総合)で、幼少期の直江兼続役で注目を集める。映画『忍たま乱太郎』ほか数多くの映画やドラマに出演。中学卒業後はイギリスに3年間留学し、帰国後はドラマ、映画、舞台(ミュージカル)などで活躍。2026年は『君が死刑になる前に』(読売テレビ)で地上波ドラマ初主演。『スピナーベイト』(フジテレビ)で地上波2作連続で主演を務める。現在、話題沸騰中のドラマ『会社員』(NHK総合)にて、寺田一輝役を演じる。
Instagram:kato_seishiro_official 

――幼い頃から、ミュージアムに遊びに来ていたと伺いました。

「藤子・F・不二雄先生の作品が大好きで、よく遊びに来ていました。作品の出演は、2023年放送の『流血鬼』(NHK総合)以来2度目で、ご縁を感じます。

ミュージアム3階の「はらっぱ」は緑に囲まれた屋上庭園。たくさんのキャラクター、どこでもドアや土管もあり『ドラえもん』の世界観を表現している。幼い加藤さんは、ここで作品世界を楽しんでいた。

『流血鬼』もそうですが、『ミノタウロスの皿』もメッセージ性が強い作品です。初めて読んだ時は、“牛が人を食用として肥育し、食べる”という設定にも、そして結末にも驚きました。食べ物と人間の関係についてのみならず、多くのメッセージを受け取ったのです。この作品が舞台になり、それを演じる役目を任されたことを誇りに思います。

「開館(2011年)当時から来ており、大好きな場所。久しぶりに来て、胸が躍りました」と言う加藤さん。

藤子先生は、“SF”(Science Fiction /サイエンス・フィクション)について、“SFの二文字は、すこし(SUKOSHI) ・ふしぎ(FUSHIGI)な物語の意味です“とお話ししています。多くの作品を読みましたが、いつも不思議な読後感が残る。先生が日常とファンタジーを繋いでくれているように感じるのです。

例えるなら、”寝坊する悪夢から覚めてホッとしつつ、寝坊しないようにしよう、と思う感覚“というか……生活の中に潜む違和感に気づかせてくれる。そこに先生のすごさがあると感じています」

――『ミノタウロスの皿』は、牛と人間の立場が逆転した世界の違和感を描いています。どんな舞台になるのでしょうか。

「現時点(10月20日)では想像がつかないのですが、脚色・振付・演出のスズキ拓朗さんと共演者の皆さんと共に、舞台ならではの世界観を作ることにワクワクしています。今、ミュージアムには、『ミノタウロスの皿』の特別展示コーナーがあり、スズキさんが描いた絵コンテや美術プランの絵を見ることができます。この世界を作り上げるんだと、楽しみにしているところです。

演出・スズキ拓朗さん(左)、加藤さん(中央)、ミノア役の内田未来さん(右)とともに『ミノタウロスの皿』の特設コーナーを見学。

ダンスや大きな動きも多くなりそうなので、稽古場ではスズキさんと相談しつつ、最高の舞台に仕上げていきます。僕、みなさんのイメージにないかもしれませんが、すごく動けるんですよ(笑)。ジャズダンスやアクションが得意ですし、趣味で水泳、スキー、スノーボード、サッカーなども続けています。

それに、僕は役者として、いろんな人の人生を生き、彼らの人生を自分の中に積み重ねてきました。過去に演じた人物の中に、乗組員をより深く表現する引き出しがあると思うのです。

先ほど、スズキさんは“皿回しを使ってUFOを表現するほか、宇宙の場面を表現するパフォーマンスを構想中。あと、どこの家にもあるもので、遺跡のような建物を表現します”とお話ししていました。どんな舞台になるんでしょうね? 

演出・スズキさんが描いた、演出プランも特設コーナーに展示。ミュージアムには原画も飾られている。

これから稽古が始まりますが、体を最大限に使い、“こんなこともできます”とアピールしつつ、皆と一緒にエンターテイメントとして最高の舞台を作っていきます。おそらく、ハードな稽古になるので、これからきっと痩せますね(笑)。食事と睡眠ほか、健康管理もしっかりとやっていかないと!」

――加藤さん演じる乗組員と、内田さん演じるミノアの「言葉は通じても価値観を理解し合えない」というもどかしさも、この作品の鍵です。

「会話のキャッチボール自体はできるのに、話が通じない。たぶん、こういう世界はどこにでもあるんだと思います。僕自身もこういう経験をしたことがありますが、相手の考えを尊重します。

言葉そのものが通じないという経験も、3年間の留学(イギリス)時代にしています。価値観にせよ、言葉にせよ、やはり学ばないと互いの理解が進まない。無限に時間があれば、いろんな言語を勉強していきたいですが、まずは舞台に集中します」

――持てる力を全投入して挑む舞台。今から楽しみです。

「原作のある作品を舞台化するのは、やはり難しいことです。でも、それは再現とは違うものだと思っています。だからこそ、とてもリスペクトしている藤子先生の世界観とメッセージをしっかりと理解したうえで、スズキさんや内田さん、共演者の皆さんと稽古を重ね、たくさんの化学変化を起こしていきたい。そこで生まれたものを、僕の力と体のすべてを使って、舞台『ミノタウロスの皿』としてお届けします。ぜひ、楽しみにしていてください」

舞台『ミノタウロスの皿』
【東京公演】

日程:2026年12月10日(木)〜28日(月)
会場:新国立劇場 小劇場
原作:藤子・F・不二雄
脚色・振付・演出:スズキ拓朗
出演:加藤清史郎、内田未来ほか
主催:新国立劇場

チケット(税込):A席 おとな(中学生以上)8,800円/こども(4歳〜小学生)3,300円、B席 おとな3,300円/こども1,650円、Z席(当日)1,980円

公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/play/the-minotaurs-plate/

【富山公演】

日程:2027年1月10日(日)
会場:オーバード・ホール 中ホール
出演:スズキ拓朗(乗組員役)、内田未来ほか
公式サイト:https://www.aubade.or.jp/
※加藤清史郎さんは東京公演のみの出演です。

川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム 

住所:神奈川県川崎市多摩区長尾2-8-1 
開館時間:10:00~18:00 
休館日:火曜日、年末年始 ※臨時休館、火曜特別開館あり 
料金: 大人・大学生 1,000円 中学・高校生 700円 子ども(4歳以上) 500円 
※3歳以下無料  ※入館は日時指定による事前予約制。 
※入館チケットは、ミュージアム公式サイト内のチケット販売ページより購入可能。 
公式サイト:https://fujiko-museum.com/

写真/北村瑞斗(Studio31)、構成/前川亜紀

 

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