文/鈴木拓也

1948年生まれで、医学博士・管理栄養士として活躍する本多京子さん。
60代半ばに、3階建ての自宅兼仕事場をリフォームしたが、その際に所有しているモノを3分の1に減らした。1階と2階は賃貸にして住むスペースも3分の1になったが、コンパクトな暮らしは、とても快適なものだという。

ただ、シニア世代は、「暮らしはコンパクト」にするのはいいが、食はコンパクトにしてはいけない―本多さんは、そう説く。

なぜなら、加齢とともに必要とするカロリーは減っても、栄養分の必要量はそんなに変化しないから。例えば、たんぱく質の推奨摂取量は、壮年期の人だとは65g。対して高齢者は60gと少し減るだけだ。だから、食は細くなっても、質は疎かにせず、むしろ充実させる必要がある。

それを実現するカギとなるのが「冷凍」。著書『シニア世代の食材冷凍術』(講談社)で、本多さんは、毎日おいしく食べられて、健康寿命も延ばす冷凍術の秘訣を明かす。

冷凍の活用で出費も面倒も減らせる

冷凍といえば、若い共働き夫婦が、作り置きしたおかずを保存する手法がまず思い浮かぶ。つまり、時短と節約のためのテクニックだ。
では、時間やお金に多少とも余裕のあるシニア世代の冷凍術とはなんだろうか?
本多さんは、わかりやすい例として自身が魚を買うときの体験を挙げる。

一パック三切れ入りだと一度の食事では食べきれません。かといってわざわざ一切れ買うのはなんだか気が引けますし、値段も高くつきます。そんなときこそ「冷凍保存」。買ったその日はグリルで焼いてシンプルに「塩焼き」で。残りの二切れはみりんやしょうゆと一緒にフリーザーバッグ(冷凍保存袋)に入れて冷凍します。こうすれば、冷凍している間に下味がしっかりつくので、食べるときは、自然解凍後グリルかフライパンで焼くだけ、という簡単さ。(本書15pより)

大きな野菜も同様。付け合わせの千切りのためだけに、キャベツを丸ごと1個買うのはどうかと思ったら、冷凍保存。今日食べきれない分はカットして小分けにし、冷凍保存すればよい。最初からカット野菜を買うよりも、トータルで見れば安くつく。薬味に使うねぎも、その都度作る面倒を省くためにも、あらかじめ刻んで冷凍して、使う分だけ取り出すという手がある。

「冷凍すると栄養価が落ちるのでは」という心配は無用。多少は目減りするが、大きな影響が出るほど損なわれるわけではないという。

やっておきたい果物の冷凍

ちょっと意外だが、冷凍の恩恵を一番受けられる食材は「果物」だという。
これは、熟すまで時間がかかるのに、いったん完熟すると日持ちしないという、悩ましい問題を解決できるから。完熟した果物を冷凍庫に入れておけば、最も美味しい状態を長くキープできる。また、パイナップルや桃の缶詰も、食べきれない分を一口大にカットしてフリーザーバッグに入れて保存すればよいそうだ。

お菓子が好きなシニアは多いが、栄養価の面では、お菓子よりは果物を食べるほうが好ましいと、本多さんは述べている。

同じ糖分を摂るなら、食物繊維やビタミンが豊富な果物は、健康指数的には、お菓子よりもずっとおすすめです。目安としては一日に握りこぶし二個分は食べたほうがよいのです。果物はあえて買わないけれど、あれば食べる、という意見もよく聞きます。ならば、常にある状態、さらにすぐに食べられる状態を作っておけば、自然に食べるようになりますね。(本書116pより)

冷凍した果物も食べきれなかったときは、砂糖をまぶして加熱。コンポートやジャムにするそうだ。そのように加工すると、また冷凍保存できるようになる。

美味しい冷凍保存にはコツがある

冷凍保存は便利だが、あまり考えもなしに冷凍室に放り込んでしまってOKというわけではなく、保存法にはいくつかのコツや留意点があるという。

その1つが、「鮮度のいい状態で冷凍する」。冷蔵庫に置いていたら、しなびてきたので慌てて冷凍庫へ移す…というのはNG。買ったら早めに冷凍するのが鉄則だ。

そして、「薄く平らにする」。凍るまでに時間がかかると、食品の細胞に含まれる水分が凍りながらふくらみ、細胞膜が壊れる。こうなると、栄養価、食感、風味のいずれもが落ちてしまう。これを防ぐには、めん棒などを使って均等に薄く広げてから、冷凍するのがよいそうだ。

これとは別の風味を落とす要因に、酸化がある。食品は、空気に触れたままにしておくと酸化していくので、「ジッパー付きのフリーザーバッグに入れ、ストローで中の空気を吸って、抜いてから閉じる」。特に酸化しやすい肉・魚は、まずラップに包んでから、フリーザーバッグに入れたほうがよいという。

さらに考慮したいのは、「使うときのこと」。丸ごと冷凍してしまうと、解凍も丸ごとすることになってしまう。使わなかった分を再冷凍すれば、味と品質の低下につながってしまう。

そのため、例えば汁物は、「フリーザーバッグに菜箸などを押し当てて溝を作り、使う分だけパキッと割ってとり出せる」ようにするなど工夫しておきたい。

* * *

本多さんは、3食すべてにおいて冷凍保存の食品をフル活用しており、食べたものの8割が冷凍食材でまかなえているというから驚く。それでいて、その食生活はけっしてみすぼらしいものではなく、むしろ多彩で豊かですらある。今まで、冷凍モノにマイナスのイメージを持っていた人こそ、チャレンジしてみる価値はあるだろう。

【今日の健康に良い1冊】

『シニア世代の食材冷凍術』
本多京子著
講談社

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)で配信している。

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