約1000基もあるという春日大社の釣燈籠。

ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第26回「信長を笑わせろ」という回で、慶(ちか/演・吉岡里帆)が教授して稽古をして、信長(演・小栗旬)に羽柴家女性陣が舞を披露するという場面がありました。秀吉(演・池松壮亮)正室の寧々(演・浜辺美波)、母なか(演・坂井真紀)、姉とも(演・宮澤エマ)、妹あさひ(演・倉沢杏菜)が仲良さそうにしている様子が、なんだかほっこりしていて和みました。その一方で、ほんとうにあの家族はあんなに仲がよかったのかな? と思ったりしました。

編集者A(以下A):なるほど。にぎやかに羽柴家総出で盛り上げていて、単純に楽しそうでおもしろかったですね。実は羽柴ファミリー、ほんとうに仲がよかったようなんです。先日、奈良に出張した際に、春日大社の学芸員の松村和歌子さんに教えてもらいました。劇中の時代より先の話になってしまうのですが、天正13年(1585)に小一郎(演・仲野太賀)は大和に所領を与えられて、大和郡山城を居城とします。大和ですから、いまインバウンドでにぎわう奈良市の東大寺、興福寺、薬師寺、唐招提寺の寺院や春日大社などの神社も領内ということになります。

I:なるほど。

A:たとえば、春日大社に残された記録によると、小一郎正室、劇中では慶のことですね、彼女がなかとともに春日大社に参拝したことがわかっています。天正14年(1586)5月14日です。小袖を寄進して、若宮の御弊料として15貫文、拝殿の神楽銭として25貫文お納めしたようです。このときは女房衆も拝殿にあがり、そのことが「前代未聞」と記録されているようです。

I:慶となかさんがですか。なかさんはわざわざ奈良に足を運んだのですね。

A:実は、この参拝の日時をみて、ちょっとびっくりというか感動の事実が明らかになりました。

I:どういうことでしょう?

A:なかと慶が春日社に参拝した天正14年5月14日、まさにその日、秀吉妹のあさひが浜松で徳川家康に嫁いでいるのです。

I:え? そうなんですか? 慶となかはあさひの今後に幸あれと祈願したんでしょうか。いや、祈願したに決まってますよね。慶となかがこんなに仲がよかっただなんて、なんか胸熱ですね。なんという羽柴ファミリーの絆!

A:春日社の記録によると、秀吉は同じ年の7月に春日社を小一郎とともに参って能を見学したようです。小一郎による饗応もあったようです。家康を臣従させることなど話し合ったのでしょうか。というのも10月にはなかが人質として岡崎に行き、その後、家康が秀吉に臣従しているのです。

I:そうなんですね。なかさんはその後、岡崎から関西に戻って来ているのですね。

A:はい。天正16年(1588)には、1月16日に小一郎となかさんが春日社に参拝しています。翌2月9日から11日にかけて慶さんとなかさんが春日社にお参りして能を見学したそうです。仲のよい羽柴ファミリーです。

I:『豊臣兄弟!』の劇中では仲のよい女性陣ですが、実際に仲がよかったんですね。

A:はい。天正17年(1589)には、春日社の神官が上洛した際に、「病気が治ったら参社するので、しっかり病気平癒の祈祷をしてほしい」というあさひの伝言を慶から聞いたという記録があるようです。このころ、あさひが病気になっていたんですね。春日大社の国宝殿では、こうした豊臣家と春日大社の関係をあらわす記録が公開されているようです。あ、7月12日までですね(「競馬図屏風と馬の美術」と併設展示の「豊臣家と春日大社」 https://www.kasugataisha.or.jp/museum_exhibitions/16217/)。

I:もう! 来週までじゃないですか!

A:ちなみに便宜上、慶と言及しましたが、実際には慶とは記述されていませんのでご留意ください。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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