60代ごろから増え始め、70代で90%以上が発症するとされる白内障。ただし、眼内レンズを入れる手術をすることでほとんどの人がよくなるといいます。

いずれくるかもしれない白内障手術に向けて、中高年にとっては事前に情報をもっておきたいもの。そんなときに役立つのが、順天堂大学客員教授で、むらかみ眼科クリニック院長の村上茂樹著『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)です。

白内障手術でもっとも重要ともいわれる眼内レンズ選び。では、どのようなことをポイントに選べばいいのでしょうか。

今回は、『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)より、「患者さん自身のライフスタイルに最適な眼内レンズ選びの重要なポイント」を取り上げます。

患者自身のライフスタイルに最適な眼内レンズ選びのポイント

白内障の手術後に自分が理想とする視生活を送れるかどうかは、いかに自分の眼の症状とライフスタイルに合った眼内レンズを選ぶかにかかっています。しかし、どのレンズが自分に合っているのか、なかなか決められるものではありません。ご自身の普段の生活スタイルを振り返っても、運転などで遠方を見ることが多いのか、テレビや料理、食事など中間距離を見ることが多いのか、あるいはデスクワークや細かい手仕事で近方を見ることが多いのか、考えれば考えるほどいずれの距離も必要に思えてきてしまいます。

こうして迷った末に、各レンズのデメリットや「金額の闇」の部分を知らないままに、「金額表示で値段の高い眼内レンズの方が良いのではないか?」「同じ多焦点眼内レンズの製品でも、3倍以上も高い金額表示の眼科の方が良いのではないか?」などと思い違いをしてしまう方も多いのです。

しかし、すべての眼内レンズにメリットとデメリットがあることを忘れてはいけません。これまでに述べてきた、非常に高い多焦点眼内レンズの金額の「からくり」と「闇」でもお分かりのように、眼内レンズの選択のポイントは、決して「非常に高い金額」にあるわけではないのです。

患者さんが「どのように見えるようになりたいか」「どのような距離でよく見えるのが最も快適か」などを見極めることが大切であり、選択の優先順位は手術後の生活スタイルにおける患者さんの見え方の希望なのです。どこにでも焦点の合う眼内レンズ、すべての希望を叶える眼内レンズは、たとえどんなに高額なレンズであっても存在しません。

その理由として人間の水晶体は自然に厚みを調整して、見たいものに自在にピントを合わせることができますが、白内障手術で置き換えた眼内レンズは、どんなに高額なレンズであってもピント調節機能を取り戻すことはできないからです。この事実を理解した上で手術を受けなければ、「高額な多焦点眼内レンズにお金をかけたのに、望んでいたような見え方にならない」などと不満だけを募らせる結果になってしまいます。このように「夢のレンズ」などと謳うネット広告に惑わされて手術を受けた方に少なからず見られる不満の実態も明らかになっています。

当院では、手術前に眼内レンズの度数や、種類決定のための希望アンケートを患者さんへお願いしています。目標とする見え方に合う眼内レンズの度数を決める参考とするために、患者さんが特に重要視している視距離や生活習慣、ならびに現時点でのメガネやコンタクトレンズでの矯正状況について確認するのです。つまり、患者さんが満足する「見え方」を手に入れるために必要なのは、高額な眼内レンズではなく、医師が「患者さんのライフスタイルにとって、どの視距離が最も大切なのかを、割り出すこと」と言えます。

日本眼科学会総会での北里大学医療衛生学部の川守田拓志准教授の講演での「白内障手術を受ける高齢者の方々の生活習慣における日常生活での視距離」に関する調査研究報告でも、「調理や食事以外でもテレビやパソコン画面を見たり、買い物時にスーパーの価格札を見たり、運転時にもカーナビやメーターを見るなど、遠方から中間までの距離を見る機会が非常に多い」ことが明らかにされています。

これは、「普段、当たり前のように取っている」作業距離や視距離、特に遠方から手の届く範囲までの距離の見え方が、本人が考えている以上に重要になるということです。そのため、医師には患者さんの日常生活や視生活などに関する、具体的な情報が必要となります。だから、患者さんのほうでも、ご自身のライフスタイルを理解してもらうために、ご自身の日頃の行動パターンを記録してみるなどして、どの距離での見え方を最も希望するかを具体的に医師に伝えていただくことが、満足のいく手術を受けるためにも非常に大切なことなのです。そのため、当院でもこのような希望調査とともに、手術前の念入りな問診や事前の個別説明会の時間を複数回設けています。

*  *  *

 白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと
監修/村上茂樹
アスコム 1,650円(税込)

村上茂樹(むらかみ・しげき)
医学博士/順天堂大学客員教授/日本眼科学会認定眼科専門医/国際水素医学学会研究会理事
山口県萩市生まれ。私立 愛光学園中学・高等学校卒業。順天堂大学医学部卒業。同大学院医学研究科博士課程修了(高齢者の失明予防医学を研究)。
眼科学会専門医とともに東洋医学会漢方専門医と抗加齢医学会専門医の3冠を有する、史上初の眼科医として、栄養・漢方治療も併せた眼科の統合医療を実施。世界最小でわずか2ミリからの「極小切開法(MICS法)」と最高品質の眼内レンズなどにより、これまで1万3000例を超える白内障手術を行う。また、県内でも希少な緑内障治療の「選択的レーザー繊維柱帯形成術(SLT)」および、網膜治療の「マルチカラーレーザースキャン法」などによる眼に優しい無痛のレーザー光療法でも2万件以上もの実績を積み重ねている。
わかりやすい解説と、堅実な医療、眼科手術が身上。日本眼科学会、日本臨床眼科学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本眼科手術学会など多数の学会で学術講演を行う。海外医学雑誌や日本眼科学会英文機関誌(JJO)などへの英語学術論文の掲載実績ならびに著書も多数。


 

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