朝来市でのトークライブに参加した小一郎役の仲野太賀さん。

ライターI(以下I):6月14日に『豊臣兄弟!』で主人公の羽柴小一郎長秀(後に秀長に改名)を演じる仲野太賀さんが、兵庫県朝来市で行なわれたトークライブに参加しました。同市にある竹田城が物語の舞台となった縁です。仲野さんは1時間にわたって大河ドラマファンの視聴者に向かって撮影の裏話をしてくれたのです。当欄では前週もトークライブの模様を報じましたが(https://serai.jp/hobby/1272439)、今週はその第2弾となります。

編集者A(以下A):第16回で、浅井攻めの際に宮部継潤(演・ドンペイ)を調略しようとして姉のとも(演・宮澤エマ)の息子である万丸(演・藤田蒼央)を人質に出すことになり、秀吉と小一郎が姉ともを説得する場面がありました。ともを演じる宮澤エマさんの熱演もあいまって、多くの視聴者が感動した場面です。仲野さんはその舞台裏も語ってくれました。

自分の実の子を敵方の養子とする、人質にするその感覚というものが、現代の我々の感覚としては、けっこう捉えづらくて大変なことじゃないですか。この場面はなんとなく、さーっとやっていいシーンでは決してないと思いました。戦国時代の感覚としてやるべきなのか、現代の感覚としてやるべきなのか、出演者、監督、みんなで話し合いを重ねましたね。かなりセンシティブな話題ですし、秀吉や小一郎の提案で家族から宮部継潤に子どもを養子にすることになってしまっていたので、母であるともさんや父親の弥助たちがどういう思いだったかというのを丁寧に描けないものだろうか、と。この時代だからしょうがない、ということではなく、この夫婦が息子を養子に出すということの実感が、ちゃんと伝わらないとダメだよねみたいな話をすごくディスカッションを重ねてやっていましたね。

I:現代の感覚と、戦国の感覚……確かにドラマを作り上げていく上での匙加減がむつかしそうですよね。

A:関連して、仲野さんは姉川の戦いでのシーンについても話してくれています。

(姉川の合戦で人を斬るシーンがあったが)小一郎としては、農民から武士になったということで、人を斬ることに対して抵抗があって、精神的なストレスというものがあると思っています。人を斬ることへの恐怖心だったり、感覚、感情みたいなものをしっかり出していきたいなと思っていました。

『豊臣兄弟!』の第1回でお兄ちゃんが躊躇なく僕の目の前で人を斬り捨てるというシーンがあったんですけど、その時にすごく自分とお兄ちゃんとの間に大きな隔たりを感じたと思ったんですよね。侍であるお兄ちゃんとそうじゃない自分。だからそこの隔たりが物語の大事な要素だと思っていました。その小一郎が戦で人をっていく。でもこれは避けては通れないことだから、人を斬るのが嫌だとはいっても、時代の中で大きなものに抗えない「人間の何か」みたいな、そういうものを表現できたらいいなという話はみんなでしていました。だから撮影していても、すごく辛かったです。そういう境地というのは、どういうものなんだろうというのをすごく想像しながら、その感情に自分の身を投げていくというか……。すごく大変ではありましたけど。

I:竹田城調略のときには城主である太田垣輝延(演・中野英雄)に対して「家臣の命をなんじゃと思っとるんじゃ」という小一郎の台詞がありました。仲野さんは、その背景についても語ってくれました。

元々農民であった小一郎が侍となり、姉川の合戦で多くの人を斬った描写がありました。その描写がないと、姉のともの息子を養子として宮部継潤に渡すこと、そのことの重み、説得する時も、我らはこれからもっともっとみんなを幸せにしていかなきゃいけないんだっていう、侍としてもっとこの世を良くしなきゃいけないんだっていう覚悟と責任が芽生えるためには、姉川の合戦で人を斬ることが大事だったと思っています。甥っ子を人質として渡さなきゃいけないという経験もすごく大事で。傷ついて、傷を感じて、そのことを忘れない。そういうことが小一郎らしさだなと思っていて、だからこそ家臣ひとりひとりの痛みが見える。

たくさん傷付いた人だからこそ、人の傷が見えるじゃないけど、そういう気づきができる人間として、小一郎を描いていきたいという思いがあります。そういう重み、これまで小一郎がやってきた積み重ねというものがこの「家臣の命をなんじゃと思ってるんじゃ」というセリフに宿っていけばいい、ひとつひとつの命の大切さを大事にしている小一郎の気持ちが乗っかっていけばいいなと思っています。

A:こういう撮影の際の演者の方たちの内面に触れることによって、視聴者がうまく感情移入できたりするんですよね。本連載は2020年の『麒麟がくる』からスタートしているのですが、そのあたりの情報発信がうまかったのが『鎌倉殿の13人』と『どうする家康』だったりします。『鎌倉殿の13人』では、北条義時(演・小栗旬)と畠山重忠(演・中川大志)が戦場で殴り合いになる場面があったのですが、それが「座長・小栗旬」の発案だったと、中川さんのコメントで発信されました。

I:覚えています。ものすごく印象に残る場面でした。私は中川さんの話を聞いて、同じ場面を何度も見返したものです。

A:『どうする家康』でも、後半、家康家臣団が討ち死になどで「退場」する際に、演者の方々から、「家康家臣団俳優の結束」「退場した俳優からも連絡がくる」などのエピソードが効果的に発信されました。今回、トークライブの中で、仲野太賀さんから発信される形になりましたが、視聴者が感情移入できるエピソードを多層的多角的に発信していただきたいですね。

竹田城で説明を受ける仲野太賀さん。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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