マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、リーダーの在り方や責任の所在について、「識学」の視点から考察します。

はじめに

「会議で全員の合意を取る」「多数決で物事を決める」という手法は、一見すると民主的で部下思いの良いリーダーのように映りますが、「責任の所在を極めて曖昧にする行為」であり、部下や組織のためにならないことに気付くべきです。責任が分散されると、誰も結果に最終的なコミットをしなくなり、意思決定のスピードは低下します。

リーダーが負うべき責任とは、周囲から情報収集をしたり、相談をしたりしても、最後は「自分の責任で決める」ということです。独断ではなく「役割としての責任者の決定」を徹底するという真のリーダーに必要な要素が、なぜメンバーに安心感を与え、組織を加速させるのか。そのメカニズムを解説します。

なぜ「みんなで決める」という罠に陥るのか?

多くのリーダーが、部下の納得が得られるまで話し合うことを「理想のマネジメント」だと考えているのではないでしょうか? しかし、その心理的背景には、リーダー自身の「自己保身」が隠れていることが少なくありません。

第一の要因は、「責任回避の心理」です。「みんなで決めた」という形を作れば、失敗した際の責任も組織全体に分配できると思いがちです。自分が決めることで発生する責任や、失敗への恐怖から逃れるために、無意識に合意形成というプロセスを隠れ蓑にしてしまうのです。

第二の要因は、「嫌われたくないという感情」です。リーダーが一人で決断を下せば、必ず反対派や不満を持つ者が出てきます。部下からの評価を気にし、摩擦を避けようとするリーダーは、意思決定を遅らせます。そもそも自分が「決める役割」であることを認識できていないリーダーほど、この感情の罠に囚われ、組織を停滞させてしまいます。

リーダーの責任とは「決めること」そのものである

リーダーには「決めるか決めないか」にかかわらず、そのポジションに就いている時点で常に責任が発生しています。「決めなければ責任を回避できる」というのは大きな錯覚です。むしろ、決断を先延ばしにして成果が出ない状態を作ることこそが、リーダーにとって最大の無責任です。

リーダーは「責任を果たすために」決断しなければなりません。未来の結果がどうなるかは誰にも分かりませんが、不確実な中でも組織が進むべき方向性を示すこと、それ自体が決断の本質です。

決めるという決断がなければ、責任を果たすために必要な「結果」を生むプロセス自体が始まりません。残念ながら、決断をしても責任を果たすことが出来ない場合はありますが、決断することは責任を全うするための唯一の手段なのです。

「決めないこと」が組織にもたらす深刻な弊害

リーダーが意思決定を放棄し、「みんなで考えよう」と丸投げした瞬間、組織には崩壊の予兆が現れます。最大の弊害は、「メンバーの迷い」と「生産性の著しい低下」です。

合意を求めれば求めるほど会議は長引き、物事は決まらなくなります。組織の中に「曖昧な状態(グレーゾーン)」が増えると、メンバー間で認識のズレが生じ、その調整のために不要な確認作業やコミュニケーションが激増します。

また、責任の所在が不明確な組織では、メンバーは周囲の顔色を伺いながら動くようになり、仕事への集中力が分散されます。さらに、「みんなでやろう」という言葉が、失敗した際の「言い訳」を許容する文化を醸成してしまいます。結果が出なかった際に自分以外の誰かの責任を擦り付けられるような逃げ道がある状態では、高い成果を出すための執念は生まれません。

部下から「納得」を得ることは原理的に不可能である

「丁寧に説明すれば、いつか部下は納得してくれる」という期待を持ちたい気持ちは理解できます。しかし、価値観や感情は人それぞれであり、上司が複数の部下全員から常に合意を得ることは、論理的に不可能です。これは親子や友人、恋人関係でも同様であり、人間関係における普遍的な真理と言えます。

そもそも、部下に決めさせることは、意思決定の選択権が部下側に移っていることを意味します。リーダーが決断する際に部下の合意が必要であれば、上司としての役割を果たすことはできなくなるでしょう。

決めないリーダーは、リーダーとして失格であると自ら認めていることになります。決めることは、責任を持つ者に与えられた「権限」です。決めないことは権限の放棄であり、リーダーとして機能していません。経験不足の部下に事前に納得を求めてはいけません。「経験の先にしか納得はない」からです。

事実情報を収集し、最後はリーダーが「勇気」で決める

部下から情報収集をすること自体は重要です。リーダーが現場のすべてを知っているわけではないため、正しい判断を下すための「事実」は部下から集めるべきです。状況を正しく把握してこそ、精度の高い決断が可能になります。

しかし、情報を集めても迷いが消えるわけではありません。それでも決断をしなければ責任を果たせないため、最後はリーダーが一人で「勇気」を持って決断する必要があります。

部下に嫌われるかという「感情」に反応するのではなく、決めないことで責任を果たせないという「機能不全」に反応する思考が必要です。決断の根拠を部下の感情に置くのではなく、組織の目的達成に置く。リーダーの決断こそが、部下が迷いなく動ける環境を作るのです。

まとめ:リーダーが果たすべき5つの規律

リーダーのあるべき姿は、以下の5項目に集約されます。

1.「みんなで決める」という無責任なプロセスを排除する
2.リーダーには「決めなくても常に責任がある」ことを自覚する
3.「決めないこと」が組織のパフォーマンスを低下させると知る
4.部下から事前に納得を得ることは不可能であると割り切る
5.事実情報を収集した上で、最後は上司が決断する

リーダーは責任を果たすために、決めるという権限を適切に行使しなければなりません。決めないことは、リーダーとしての機能を放棄することと同義です。結果が出る前に、結果が出なくて責任を取らされるという不安に意識を持つことは、決断や行動を止めることにつながり、結果の質を高めることへの弊害となります。

そして、決めなければ部下は迷い、組織全体の力は確実に削がれます。部下の幸せや成長を本心に願うリーダーは組織の成果を最大化するために自らが「決断」しなければいけません。よってリーダーに求められるのは、部下の感情のケアではなく「決断」という役割の遂行です。

部下に嫌われることを恐れるのではなく、自らの決断欠如によって部下が迷い、組織の成果が上がらないことにより、責任を果たせなくなることを恐れる、プロフェッショナルな思考を徹底してください。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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