老いは予想以上の速さで進行する場合もある。(『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』〈主婦の友社〉より)

親に会い、「小さくなったな」と感じたら、介護の始めどきかもしれません。最新版『高齢社会白書』(内閣府・2025年度)によると、日本の高齢化率は過去最高の29.3%。平均寿命は男性81歳、女性は87歳ですが、健康上の問題で日常生活に制限のない「健康寿命」は男女平均で、74歳。「親が75歳、後期高齢者になったら、地域包括支援センターにつながったほうがいいです」とは、人気イラストレーター・上大岡トメさん。

トメさんは、2019年、父86歳、母83歳の時に山口から横浜の実家までの遠距離介護生活がスタート。2022年10月に、89歳の父と、85歳の母がともに老人ホームに入居するまでの約3年間、両親に伴走します。ここでは、遠距離介護の要点について伺いました。前編では介護とお金について。ここでは、遠距離介護のリアルについて紹介します。

介護はビジネスライクに進めたほうがベター

――上大岡トメさんは山口県に家族とともに住み、お姉様は京都に住んでいます。両親が老人ホームに入居するまで、約3年間、姉妹で遠距離介護を行っていました。

両親の老いに、本格的に関わり始めた当時、私は54歳でした。実家と離れた場所に住んでいますが、毎月のように顔は見せており、両親の様子をなんとなく把握していたのです。ただ、コロナ禍で半年ほど訪れない間に、パーキンソン病を患う父に認知症の症状が出始めていました。

それでもなんとか2人で助け合って生活できていたのですが、老いはどんどん進んでいきます。母も身体機能が衰え、リビングのベッドで横たわっていることが増えました。料理が好きな人だったのですが、それもできなくなっていったのです。やがて、歩くこともままならなくなった時に、かかりつけ医の先生から「もうおふたりだけの生活は難しいでしょう」と言われてしまって。

体が動かないことにより、家の中での転倒も増えていったという。(『マンガで解決 老人ホームは親不孝?』〈主婦の友社〉より)

――ご両親が住み慣れた横浜の自宅での生活を望んでいたことは、前編でも紹介しました。トメさんとお姉様はどのようにサポートしていたのですか?

親の介護には、きょうだいとの連携が不可欠だと感じます。私の介護マンガシリーズでは、多くの人の体験談を紹介していますが、きょうだい間の連携が、仕事と介護の両立のコツのようにも感じます。

とはいえ、仲良くするということではなく、親の介護をスムーズに進めるチームメンバーというスタンスがいいと思います。実際、私と姉はいわゆる“仲良し姉妹”ではありません。これは仲違いをしているということではなく、用事がある時は連絡し、いい感じの距離を保つという関係を続けていました。この距離感が一緒に遠距離介護を行うことに向いていたようにも思います。親の老いを感じたら、話し合っておくことは大切です。

きょうだい間で親が年齢を重ねるとともに、話し合っておきたいこと。きょうだい仲が思わしくなくても、これだけ決めておくと後のトラブルが少ない。(『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』〈主婦の友社〉より)

それと同時に決めておきたいのは、介護の主導権を誰が取るかということ。我が家の場合、仕事上、時間の融通がきくこともあって、私が介護のキーパーソンになりました。介護は、生活の介助や、各種手続きを行うのみならず、親に代わって決断することの連続です。その場で決めることも少なくありません。

姉は私の決めたことに、全く反対しませんでした。私が「こうしようと思うけど、どう思う?」と姉に聞くと、「いいと思う」といつも言ってくれました。

ただ、迷った時は相談に乗ってくれるし、思いを分かち合ってくれるし、姉との介護で困ることはありませんでした。この背景には、かつて一緒に本を出し(『生き延びるための地震学入門』幻冬舎)、お互いの性格がわかっていたことがあるでしょう。

両親の介護も、できるだけ感情を排し、皆がいいところに着地するように配慮しながら進めていたと思います。ビジネスライクに、事務的に作業を行っていたから、全体的に上手く進めたのではないかと思っています。

でも、どうしても自分の親なので感情が爆発しそうになることも。そんな時は、自分の部屋に入って、「これは介護というプロジェクトなんだ」と怒りを鎮めていました。

――具体的にどのような体制で遠距離介護をしていたのですか?

最初は両親ともに要支援1(最も軽い認定)でしたが、3年の間に父は要介護2、母は要介護3になっていました。基本的に、平日(月~金)はヘルパーさんに来てもらう体制を整えたのです。他にも、訪問診療、24時間対応の訪問看護サービスへの申し込みもしました。

そして、土日は山口から私が、京都から姉が交代で横浜の実家に通っていたのです。ただ、姉にも私にも仕事と家族があり、心休まる間もなく、実家に通い続けることに限界が。両親も転倒することや、気を失うことが増えてきたのです。それとほぼ同時に、かかりつけ医の先生に「おふたりだけの生活は厳しい」と言われ、老人ホームを探すことになりました。

――親に安心して暮らしてもらうには、老人ホームがいい選択だった。

父は断固拒否という姿勢でしたが、母は「そのほうがいい」と賛成したのです。高齢者施設は多種多様で、それぞれに特徴があります。そこで、ケアマネージャーさんやコーディネートを行う会社と相談しつつ、すぐに入居ができる老人ホーム(介護付き有料老人ホーム)の候補をピックアップしてもらいました。

「こんなはずじゃなかった」を予防するためにも、納得できる施設を選ぶべき。トメさんは一級建築士なので、建物の免震構造などもチェックしたという。(『マンガで解決 老人ホームは親不孝?』〈主婦の友社〉より)

入居を拒否していた父も、ケアマネさんの説得で受け入れるようになり、2人はホームに入居し、私の遠距離介護は終わったかのように思いました。プロの手に渡ると、ホッと安心するんです。でも、入居後もホームとのやり取り、親からの意見を聞くことなど、やることは多いです。

私の場合、父や母から、施設へのクレームが多く、施設のスタッフさんと密に連絡をとりながら、折り合いをつけていくのも私の役割でした。結局、父は入居から4か月後、母は2年後に亡くなるのですが、最後は2人とも安心して、楽しく生活していたので、施設に入れて本当に良かったと思っています。

【子どもたちに親が老いていく姿を見せることも大切……次のページに続きます】

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