「コロナ禍、大規模金融緩和により日米欧で刷り散らかされたマネーはおよそ1600兆円。あり余る巨大マネーが投資先を求めて日本に押し寄せ、史上最大の資産バブルとなることが予想されます。そして、この巨大バブルがきっかけとなり、金融グレート・リセットなどの大きな時代の転換期がやってきます。現在はFRBの利上げの影響などで日米ともに株価が落ち込んでいるが、何かのタイミングをきっかけに急上昇する可能性が高い」と説く、不動産コンサルタント・長嶋 修氏の著書『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』から、大きな変化を見せる政治、経済、金融市場の動向についてご紹介します。
文/長嶋 修
マネーがあふれかえり、金融システムが崩壊していないから資産価格が膨らむ
2020年初頭には2万4000円程度だった日経平均株価はコロナ禍で一時1万6000円台へ急落。しかしあっという間にコロナ前の水準を回復するどころか、現在では3万円を超える局面も出てきました。「株価は景気の先行指標」と言われますが、景気の実態と株価には実は何の関連もないのだという身もふたもない事実が、昨今ではあからさまに露呈するようになっています。
コロナが世界を席巻して株価が急落し、国内外のあらゆる経済指標が悪化する中で、当時のメディアの見出しには「戦後最悪の景気悪化」「各国の財政悪化懸念」といった、いかにもお先まっくらといった文字が並び、時には「ハイパーインフレの足音」「財政破綻!」「預金封鎖や資産没収、財産税が発令されるのでは」といった、底なしであるかのような声すらも聞かれましたが、実際はそうはなりませんでした。
なにより日本銀行が「無制限金融緩和」を打ち出し、ETF(上場投資信託)やREIT(リート・不動産投資信託)を通じて資産市場を下支えしているといった安心感からくる下値の限定感があることが大きかったでしょう。株式市場では、前場に下がると後場の市場終了間際になって、日銀買いとおぼしき買いが入り、やや上げて終了といったお決まりの流れがしばしば確認できました。3万円を超えたあたりからはそうした動きがストップし、一時市場には緊張感が走ったものの、日銀としての基本スタンスには変更がないどころか、さらなるマイナス金利深掘りの覚悟まで示すアナウンスが流れ、市場は一安心。欧米、とりわけアメリカはもっと高水準の株高基調にあります。
なぜコロナ禍の危機的な状況が程なく収束し、それどころかかつてない株高をもたらしたのでしょうか。経済誌紙を見ると何やら小難しいことやテクニカルなことが書いてありますが、その理由はシンプルです。
「マネーがあふれかえっているから」かつ「金融システムが崩壊していないから」。これだけです。
日銀に限らず、世界の中央銀行はすでに、史上最大に資産をパンパンに膨らませているのは一目瞭然です。日銀、米のFRB(連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)のバランスシート(貸借対照表)を見てください。2008年のリーマン・ショック以前にはそれらバランスシートの合計が400兆円に満たなかったものの、現在ではおよそ2000兆円と、1600兆円以上も拡大しているのです。
すべてのマネーが市場に出ているかどうかは別として、日米欧の中央銀行がこれだけマネーを供給する強い意志を示すことで、また日銀の場合は前述した通りETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)を買い入れる姿勢を示すことで、そしてコロナ後は無制限の金融緩和をアナウンスするなど市場を下支えする姿勢をみせることにより、現状が保たれている格好です。
金融システムが崩壊せず、これだけ大量のマネーが供給されれば、株をはじめとする資産価格がバブル化するのは自明とも言えます。現金を持っていても金利はつかず、その価値は発行量が増えるたびに実質的に目減りしていくのですから。2008年のリーマン・ショック以降、円やドル、ユーロといった、いわゆるペーパーマネーの価値は大幅に希薄化し、それだけ1万円あたりの価値は低下してきたわけです。
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『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(長嶋 修 著)
小学館
長嶋 修(ながしま・おさむ)
1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。国交省・経済省の様々な委員を歴任。2019年より始めたチャンネル『長嶋 修の不動産経済の展開を読む』(現在は『長嶋 修の日本と世界を読む』に改題)では不動産だけではなく、国内外の政治、経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。テレビ出演、講演等実績多数。著書に『不動産格差』(日経新聞出版)など多数。