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病気の９割は歩くだけで治る！散歩で長生きするコツ

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2021/3/9

江戸中期、貝原益軒の著した『養生訓』は、食生活、生活習慣、住環境など養生の方法がきわめて具体的に記されている。

「病気になってからの治療より、予防に重きをおくべきだと繰り返し説き、さまざまな健康法が載っている『養生訓』ですが、ごくわずかしか記されていないことがあります。それが歩くこと」

そう語るのは、兵庫県尼崎市のクリニックで毎日、多くの患者に接し、歩くことを勧めている医師の長尾和宏さんだ。
「江戸時代の移動手段は歩くだけでしたから、その効能をわざわざ書く必要もなかったのでしょう。その頃の庶民は毎日約３万歩、現代人の６倍も歩いていたといわれます。江戸時代の日本人は幸福度がとても高かったと再評価されていますが、その要因のひとつはよく歩いて健康だったからだと私は考えています」

長尾さんが続ける。

「高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病、うつ病や不眠症、がん、認知症、腰や膝の痛みなども、ほとんどの病気は歩くことで改善するし、治ることも多い。もちろん予防効果も高い。積極的に散歩してください」

老化予防に直結している

近年、歩くことで病気が治る、歩くことで健康になり長生きできるという医学的な根拠が、次々と判明している。がんや認知症も含め、サライ世代が悩むさまざまな病気は、突き詰めれば老化に起因するため、歩くことで老化の要因の抑制や解消につながる。長尾さんは、次のように説明する。

「老化の原因は、(1)細胞の酸化（錆び）、(2)細胞の糖化（焦げ）、(3)ホルモンの変化に集約されます。歩くことで抗酸化物質が増え、細胞の酸化が抑えられます。また、余分な糖が消費され細胞の糖化も抑制される。さらにＤＨＥＡ（※若さや元気を保つホルモン。免疫力を高め炎症を抑えるなどの作用もある）や成長ホルモンなどが増え、ストレスホルモンが減少するという効果もあります」

そうと知れば、ますます積極的に散歩しようという気にもなる。

散歩は全身運動

健康を保つために効果的な歩き方を長尾さんに聞いた。

「歩くことは、下半身だけの運動ではありません。首や腕などの上半身も使う全身運動です。散歩のときは、下半身よりも肩甲骨を意識すること。肩甲骨を動かすことで効果が上がります。全身の筋肉を動かすことでマイオカイン（筋肉から出るホルモンの総称）が豊富に出て心身の健康に繋がります」下のイラストに、健康への効果が高い歩き方のコツをまとめた。肩甲骨を動かすには、準備体操が欠かせない。骨盤を前傾させる意識で、まっすぐ立ってから歩き始め、肘を後ろに引くようにして腕を振ると肩甲骨がしっかり動く。
「歩数よりも姿勢、量より質と心がけましょう。朝晩10分ずつ家の近くを散歩するなど、習慣にすることが大事です」

日光を浴びながらの散歩がよく、紫外線対策とこまめな水分補給を怠らないようにする。マスクを着用の際は喉の渇きに要注意だ。感染症対策で人との間隔にも留意。

「散歩を楽しんで続けることが一番大事」長尾さんは結んだ。

長尾流「新しい散歩様式」６か条
(1)太陽の光を浴びながら歩く。
(2)帽子とマスクを着用。
　なるべくサングラスもかける。
(3)近くに人がいないときはマスクを外す。
(4)こまめに水分を補給する。
(5)広い道を歩き、人との間隔を前後左右２ｍほど空ける。
(6)正しい姿勢と腕の振り方で歩く。