
ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート アルテミスⅡ
手巻き(自社製キャリバーB02)、SSケース、ケース径41㎜、パワーリザーブ約70時間、ブルーメテオライト文字盤、アリゲーターレザーストラップ、3気圧防水、世界限定450本。166万1000円。
問い合わせ先:House of Brands Japan株式会社 電話:0120・105・707
地球の自転をチェイスする
時計は、私たちが生きる世界そのものを映し出す小さな宇宙である。日常的に使われている時計は、昼と夜をそれぞれ12に分節する。太陽がほぼ南中する時刻に時針が天を指すように、文字盤の中に、地上から見る宙を重ねている。
いっぽうブライトリングの新作「ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート アルテミスⅡ」は、圧倒的に少数派の存在である24時間表示の時計だ。時針は真夜中に天、正午に地を指す。12時間時計では真下にある“6時”がふたつ水平に並び、東西をむすぶ仮想の地平線を描く。時針は一日かけて文字盤を一周し、本物の太陽の位置を確かめる。異質でありながら太陽と地球の関係に適うこの空間認識が、宇宙空間では決定的な意味を持った。

シースルーバックから覗くのは、24時間表示という特別なムーブメント。「アルテミスⅡ」の公式ロゴを配している。
国際宇宙ステーション=ISSは、約90分で地球を一周するので、24時間で合計16回の日の出と日没を経験する。その極端な環境下でも24時間時計は地球の自転を、正確にチェイスし続ける。時差ゼロのUTC=協定世界時を基準に使うISSでは、午前と午後を完全に識別する24時間表示は、事実であり実感なのだ。また邪道だがリフトオフ=ロケットの打ち上げ時間を「0時0分0秒」としてセットすれば、宇宙計画独特の時刻系MET(ミッション経過時間)の計測もできる。
宇宙飛行士スコット・カーペンターは、そんな未知の腕時計を熱望し、ブライトリングが要請に応え、回転計算尺を備えたパイロットウォッチ「ナビタイマー」の特別版を製作。1962年、その時計とマーキュリー計画アトラス7号で地球を3周した。宇宙から帰還した初のスイス時計の一般販売モデルが「コスモノート」の祖である。宇宙空間での実用性の高さは、空想の余白を広げる。ただ夢ではなく、いつ宇宙に飛び立つ順番がきても準備ができているというのも、この時計の魅力である。

1962年の宇宙飛行を経て「コスモノート」が発売された当時の広告。「宇宙用(Weltraum)クロノグラフ」を誇らしげに謳う。
じつは欧米の非英語圏の日常では、午後3時を“15時”と言うのが一般的である。スイス製の腕時計は、フランス語圏やブライトリングのルーツであるドイツ語圏でおもに造られており、24時間表示は文化的にも整合性が高い。
宇宙から帰還した初のスイス時計でもある「コスモノート」の新作は、文字盤を隕石で装った。その針が描くのは単に時刻ではなく、時間の文化論と宇宙観を24時間制に映してみせるのである。
並木浩一(なみき・こういち)
桐蔭横浜大学教授、時計ジャーナリスト。GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『腕時計一生もの』『ロレックスが買えない。』等。
構成/富永 淳
※『サライ』2026年9月号より






