高齢者はもちろん、40代、50代にとっても健康長寿は、人生の理想形です。第4回では、元気で長生きするためにすべきことを、人間ドックに長年携わってきた医師・岡田定先生にアドバイスいただきます。
社会との断絶が健康の大敵
高齢になって介護が必要になる原因として、上位を占めるのが、脳血管障害、認知症、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患です。これらから身を守るには、規則正しい生活習慣と運動の習慣が必須。60歳から生活の中で気をつけたいことを伺います。
「基本は、食事、喫煙、アルコール、運動、睡眠、ストレスを改善することが重要です。定年後の方には、他に4つほど加えるべきポイントがあります。まずは病気よりフレイル対策(加齢により心身が衰えていくことへの対策)を徹底いただきたいですね。その中心が運動になります。定年後に運動をする方としない方では人生が決定的に変わってきます。80代でも元気な人は間違いなく運動習慣があります。ウォーキングもいいですし、毎日欠かさずテレビ体操などを続けるという方法も効果的です。また新たな仕事や新しい趣味をもつなど、社会的なかかわりを保つことも重要ですね。社会と断絶してしまうことはメンタルにとっても、フィジカルにとっても悪影響を及ぼします」
健康には身体的健康と社会的健康、精神的健康の3つがあり、一番大事なことは精神的健康だと岡田先生はいいます。
「精神的な健康があって社会的健康や身体的健康が保てることがわかっています。心が弱くなっていくと運動もしないし社会にも出ていかなくなるのです。精神的健康とは何かを突き詰めていくと、年をとることを肯定的にとらえられるかどうかなんです。何らかの生きがいをもてるかどうかで決まります。高齢でもはつらつと元気に生きている方は自分なりの生きがいをもっているんです。体は衰えても精神的にはまだまだ成熟できることがわかっているかどうか。介護されたくないと思っている方は、これを念頭に行動してみるといいですね」
認知症も生活習慣による病気
定年後の方の多くが不安に思う認知症も、生活習慣と密接な関係があるといわれます。
「認知症を遺伝する病気だと思っている人は多くいますが、そうではない。専門の医療者もほとんどの方が、認知症は、がんや脳梗塞と同じ生活習慣による病気だといっています。ただ気を付けていただきたいのは、肥満同様、親の不健康な生活習慣を真似ると同じ病気になりやすい。逆に健康的な習慣を引き継げば認知症にもなりにくいと考えられます。悪い生活習慣は自分の代で断ち切るという信念で、生活習慣を改善すれば、認知症にもなりにくくなるわけです」
定年後も健康でいるためには“いい習慣をどれだけつくれるか”にかかっているといいます。
「習慣とは、自分との約束を守ることです。食事は腹八分目。食べて心地いい程度の量にとどめること。運動はウォーキングや体操を毎日やること。無理なく、できる範囲で続けていると、気分がよくなり、やがてやめられなくなり習慣化します。いい習慣をたくさんつくることができれば、それが健康につながります。小さな一歩が、ゆくゆくは大きな差になるのです」
全4回で、 医療法人社団 平静の会 西崎クリニック院長 岡田 定 先生 に、 悪しき生活習慣 について伺いました。最も驚いたことは、生活習慣に関する誤解が多いことです。正しい知識を身につけて暮らすだけでも取り戻せる健康があります。新しいことを実践することも大切ですが、まずは現在の生活習慣を見直すことからはじめてみてはいかがでしょうか。
お話を伺ったのは……
現・医療法人社団 平静の会 西崎クリニック院長
前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、人間ドック科部長を歴任。2020 年より現職。血液診療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。
医師のインタビュー記事は、株式会社おいしい健康が運営するメディア「先生からあなたへ」でもご覧いただけます。
https://articles.oishi-kenko.com/sensei/
取材・文/安藤政弘