医師・岡田定先生は、一般血液内科の臨床医として、長年、聖路加国際病院でレジデント教育に携わる一方、人間ドック科での診療を通じ、中高年の方から、健康に関する様々な相談や質問を受けてきました。薬などに頼らず、生活習慣の改善によって健康になる「生活習慣療法」は、多くの方を健康に導いてきました。

今回は生活習慣の改善で健康を取り戻すためにすべきことを「肥満」、「糖質制限の誤解」、「生活習慣病対策」、「定年後の健康法」という4つのテーマに分けて、今すべきことを岡田先生に伺いました。

「悪い肥満」はあらゆる病気を引き寄せる

肥満は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、痛風、心筋梗塞・脳梗塞など、あらゆる病気のスタート地点ともいわれています。不規則な食事、偏った食事などから食生活が乱れ、運動不足も加わり肥満となり、生活習慣病を引き起こすケースは急増しています。

「肥満で用心するのは、主要な生活習慣病だけではありません。最近増えている脂肪肝、肝機能障害でも肥満が原因の一つになっています。脂肪肝が長く続くと約1割が肝硬変や肝臓がんになります。また、重い体を支えることで腰や膝に負担がかかり、腰痛や膝関節症になる方や、脂肪で気道が狭くなり、眠っている間に何度も呼吸が止まる、睡眠時無呼吸症候群も起きやすくなります。さらに大腸がんやすい臓がんなど、がんになる確率も高まりますから、肥満はあらゆる病気を引き寄せるといえるでしょう」

無理のない目標が肥満解消の秘訣

肥満にならないためには糖質制限、運動・筋トレが大事だといわれますが、減量を成功させるには3つのポイントがあるといいます。

「まず最初のポイントは、始める前に、糖質制限や運動が何のために必要かをご理解いただきたいですね。このまま放置して晩年を闘病生活で過ごす最悪の未来と、肥満を改善することで長く仕事が続けられ、家族と幸せに暮らせる明るい未来。この先に待ち受ける双方の生活をイメージできれば、おのずと明るい未来を選び、前向きになって食生活の改善に取り組めると思います」

2つめのポイントは、具体的かつ長期的な目標を持つこと。

「長続きさせるコツは、具体的な目標を設定することです。体重を3%減らすと代謝がよくなるのはわかっているので、5%減ぐらいが無理のない目標ですね。80kgの方であれば1年で4kg減らして76kgに、翌年はさらに約4kg減らすという感じで無理のない範囲にすると持続性が向上します。毎日体重をチェックしながら、記録していくとやる気も違ってきます」

1年もかけず短期間で減量したいという方も少なくありませんが、岡田先生はおすすめできないと言います。

「炭水化物を一気に減らし、ハードな運動をすると、短期間で見事なほど痩せることが可能です。ただ、やせる時は脂肪も筋肉も一気に減るんですが、筋肉の組成が変わり、リバウンドすると筋肉が落ち、脂肪だけが増えてしまいます。短期減量とリバウンドを何度も繰り返すと、どんどんバランスの悪い体になっていくのです。目標をもって5年、10年と続けていくことが大切だと考えています」

最後のポイントは、減量目標と同様、食事制限も実現可能な方法で実行することです。

「私は、朝食と昼食はそのままで、夕食だけ食事制限することをおすすめしています。『おかずは今まで通り食べて、ごはんだけ半分、あるいは抜きにする夕食はどうですか』と提案すると、多くの方が『それならできそうです』と同意して実行されます。あれもこれもではなく、一点集中で実際に自分が習慣化できそうなことを見つけていただくのが一番です。習慣とは自分との約束を守ることですから、具体的に習慣を作ることでモチベーションも高まっていきます。ぼんやりと“痩せよう”としてもできないですね」

高齢になったら貯金よりも「貯筋」を大切に

肥満であっても健康で、体の調子は悪くないという方がいます。例外として、減量しなくてもいい肥満があるといいます。

「減量不要な肥満は2つあります。一つは筋肉がしっかりある人です。体重が多く、BMIが少し高くてもさほど気にすることはないですね。適正体重を評価する指標となるBMIでは、18.5~25が基準値ですが、BMIが25でも筋肉がついていればさほど問題にはなりません。筋肉量の多い人の適切な体重は、身長から100を引いてください。180cmであれば80kgが適正体重となります。筋肉があるかどうかわからなければ、筋肉量がわかる体組成計を使って計測するのもいいでしょう」

もう一つの例外が高齢者の肥満です。

「60歳以上になると体重が減り、筋力も低下し、いずれは寝たきりになってしまうフレイル(虚弱)状態になる可能性があるため、痩せることは危険です。BMIが18.5未満の痩せ症の人は、特に注意してください。私は80代の方に『あなたは少し太っているから痩せなさい』とはいいません。痩せることで起こる問題の方が多いですから、太目でも問題にならないとみています。高齢者に限っていえば、BMIは26、27まで許容範囲とみていいでしょう」

高齢になっても元気で活動するには、たんぱく質をちゃんと摂って、しっかり運動することが大事だといいます。

「若い時からスマートな体型にこだわってきた人の中には、高齢になってもあまり食べず痩せたままの体型を維持しようとされる方がいますが、ADL(日常生活動作)が低下するので心配です。70代になったら、貯金以上に、筋肉を蓄える“貯筋”が大事になります」

【次回】 肥満の人がやりがちな糖質制限の落とし穴に続きます

お話を伺ったのは……

岡田 定 先生
現・医療法人社団 平静の会 西崎クリニック院長
前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長

1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、人間ドック科部長を歴任。2020 年より現職。血液診療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

医師のインタビュー記事は、株式会社おいしい健康が運営するメディア「先生からあなたへ」でもご覧いただけます。
https://articles.oishi-kenko.com/sensei/

取材・文/安藤政弘 

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