写真はイメージです。写真:photoAC

朝晩の空気が変わり始めるころ、「なんとなくやる気が出ない」「気分が晴れない」と感じる日が増えていませんか。そんなもやもやは、過酷な夏を乗り切った体が「少し休ませて」とサインを出しているのかもしれません。

夏の暑さを乗り切った心身は、知らず知らずのうちに疲れがたまっています。無理に調子を維持しようとせず、疲れた体をいたわりながら静かにやり過ごす。そんな秋のはじまりの過ごし方をお届けします。

体の疲れが心に影を落とす理由

秋口に感じる気力の低下や気分の重さは、夏の過酷な環境を乗り切った体が発しているSOSの表れです。心と体は密接につながっており、体の消耗がそのまま気分の沈みとして表れます。

内臓の疲れと自律神経の消耗によるもの

連日の猛暑による寝苦しさや、冷房と外気の温度差、冷たいものの摂りすぎなどは、内臓や自律神経に大きな負担をかけています。自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経がバランスを取り合いながら、体温の調整や内臓の働きなどを無意識にコントロールしています。この自律神経が夏の暑さや急激な温度差によって消耗し、胃腸の働きが落ちると、全身へエネルギーを行き渡らせることが難しくなります。

体のエネルギーが枯渇すると、脳への血流や神経伝達の働きも鈍くなり、体のだるさだけでなく気力の低下や気分の沈みといった心の重さとなって現れます。

体の疲労が感情のブレーキを鈍くする

体が疲れてエネルギーが不足すると、脳の働きにも影響が出ます。感情をコントロールしたり冷静さを保ったりする機能は多くのエネルギーを必要とするため、体の疲労とともにその力は低下していきます。

感情を落ち着かせるブレーキの役割が鈍くなると、不安や焦りといった感情を抑えにくくなり、普段なら気にならないささいな出来事に対しても心が揺らぎやすくなります。秋口に見られる気分の落ち込みは、このように体のエネルギー切れが感情のコントロール機能に影響を及ぼしているサインと言えます。

秋口の不調に抗わず心身を休める過ごし方

秋口の不調を感じたときは、消耗した体を休ませる時間を意識的に作ることが大切です。日々の行動を少し見直すだけで、心身への余計な負担を減らし、自然な回復を待つことができます。

1.1日の予定に余白をつくる

体が疲れているときは、普段通りのスケジュールをこなすだけでも大きな負担になります。

まずは1日のやるべきことを絞り、意識して何もしない時間や、体を休める時間を取り入れます。例えば、普段SNSを眺めていた時間を好きな音楽を聴く時間に変えてみる、夜の照明を少し落として無音の時間を作ってみる、などです。

日課や用事に少しのゆとりを持たせることで、消耗したエネルギーを無駄に使わずに済みます。

2.体を温めて内臓をいたわる

夏の間に冷たい飲食物や冷房で冷え切った内臓をいたわることも、回復を助けてくれます。

そのためには、意識して日常の中で温める習慣を取り入れてください。例えば、食事に温かい汁物やお茶を選ぶ、湯船に浸かる、冷えやすいお腹や足首に腹巻きやレッグウォーマーを足す、寝る前にホットタオルで首の後ろを温めるといった工夫が役立ちます。

血流が促されて内臓の働きが整うと、自律神経の負担も和らぎ、心身が落ち着きやすくなります。

具体例:体力の回復を最優先にしたFさんのケース

ここでは、プライバシーに配慮し、複数の事例を統合・再構成したモデルケースをご紹介します。

50代のFさんは、秋口になると理由もなく気分が重くなり、日常の行動が億劫になる状態が続いていました。晴れない気分に意識が向き、もやもやとした気持ちを持て余す日々を過ごしていたそうです。

そんな折、かかりつけ医から「秋の気力の低下は、夏の暑さによる自律神経の消耗が関係していることが多い」と助言を受け、体のケアに意識を向けることにしたと言います。

それまでは億劫な気持ちを抱えたまま無理にこなしていた休日の作り置きや念入りな掃除を一時的に休止し、週末はあらかじめ惣菜を買って家事を最小限に抑えるように。また、仕事帰りには普段立ち寄っていたスーパーでの買い出しを減らして直帰し、夕食後はすぐに部屋着に着替えて横になるなど、意識して体力を使わない暮らしにシフトしました。

体を休めることに専念した結果、日を追うごとに沈んでいた気持ちも自然と落ち着きを取り戻していき、秋という季節を楽しめるようになったそうです。

秋のもやもやは自然な反応

秋口に感じる気分の重さや気力の低下は、夏の暑さや冷房で消耗した体と自律神経が休息を求めている自然な反応です。

憂うつな気分が続くときは、日々の予定や家事を最小限に抑え、意識して予定に余白を作ることが大切です。冷え切った内臓を温め、まずは体力を回復させることに専念してみてください。

季節の変わり目による不調をそのまま受け入れ、ペースを落として過ごすことで、心身は無理なく穏やかな調子を取り戻していきます。

文・構成/藤野綾子
精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定II種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

 

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