六角承禎という厄介な存在
「信長暗殺未遂」という重大事件ですが、大河ドラマで描かれたのは『黄金の日日』だけです。出典が『信長公記』なのに、この扱いは解せません。なぜ大河ドラマで描かれないのでしょうか。
まず、暗殺未遂が、「金ケ崎退き口」と「姉川の戦い」の間に起きたことが挙げられるでしょう。浅井長政が信長を裏切り、お市の方が危急を信長に報せ、信長は命からがら京都に逃げ帰る。そして態勢を整えて、朝倉・浅井連合軍と織田・徳川連合軍が姉川で会戦に及ぶという流れです。
その間で起きた暗殺未遂事件ですが、企んだのが朝倉・浅井ではなく、南近江の六角承禎だというのが厄介なのでしょう。しかもスナイパーの杉谷善住坊についても、忍者説などさまざまな説がありますが、その素性は明らかではなく、なかなかストーリーに組み込むのが難しいのではないかと推察されます。
『黄金の日日』では、杉谷善住坊は堺の会合衆(豪商)の今井家の奉公人の出身で、主人公の助左衛門、石川五右衛門らとは若いころからの朋友という設定でした。
『信長公記』の記述を尊重するのであれば、六角承禎も出さざるを得ず、出したら出したで「この人は誰?」ということになりかねず、仮にそれをクリアしても浅井長政とお市の顛末が薄口になりかねない。なんとも悩ましいエピソードなのです。
『豊臣兄弟!』では、そんな事件があったことが、信長の口から発せられるという展開になりました。明智光秀(演・要潤)が三角巾をして怪我をしていることが示唆されましたが、杉谷善住坊の鉄炮を光秀が受けたという設定なのでしょう。
なぜ六角氏は扱いにくいのか?
六角氏は織田信長の上洛の際に、チラチラと名前が出てきますが、古い時代を扱った大河ドラマ作品から度々一族が登場する名門です。2024年の『光る君へ』に登場した藤原道長(演・柄本佑)正室の源倫子(演・黒木華)の実家を源流とした宇多源氏の一流が武士化。1979年の『草燃える』では源頼朝の挙兵に参じた佐々木四兄弟が登場します。
さらに子孫の佐々木道誉(道誉は六角ではなく京極)が1991年の『太平記』に主要キャラとして登場しました(演・陣内孝則)。佐々木から六角と京極に分かれ、近江を分割統治するという形になった佐々木氏ですが、戦国の荒波を乗り越え、劇中の信長から「姑息な六角の仕業よ」と言及されます。(https://serai.jp/hobby/1261825)
この六角氏、織田信長など新興勢力が勃興した以降の足跡を見ても、内紛で家中が混乱したり、浅井氏ともくっついているのか、反目しているのか、実にややこしい動きをしているのです。大河ドラマに主要キャラとして登場させるには躊躇される存在なのです。
その悠久なる六角氏の歴史は、滋賀県近江八幡市にある観音寺城で確認でき、往時の隆盛ぶりを偲ぶことができます。
※『信長公記』には「十二・三日」と記されているが、「十二・三間」の誤記だと考えられている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











