文/印南敦史

画像はイメージです。(写真:photoAC)

サライ世代に向けられた“健康本”は多く、そのなかには『70歳からの〇〇』というようなタイトルがつけられたものも少なくない。

要するに70歳からは、さまざまな問題が出てくるということなのだろう。だから、こういったタイトルは非常にわかりやすく思える。

『65歳からは、空腹が最高の薬「1日1食」のすごい健康法』(石原結實 著、PHP文庫)の著者も、基本的にはそれらを評価しているようだ。

とはいえ同時に、ちょっとした異論も唱えている。「『70歳から健康法をはじめ、なにか始める』のは少し遅いような気がする」のだと。

その根拠となるのは、「寿命」の概念だ。

令和6年の調査によると、日本人の平均寿命は男性81・09歳、女性87・13歳。いまさら強調するまでもなく、高齢化はデータを見てみても明らかだ。そしてメディアでも、「人生百年」というワードが流行語のように飛び交っている(やや過剰な気がしなくもないが)。

しかし、ここには重要な問題が隠されている。「平均寿命」と「健康寿命」の違いである。

つまり、平均寿命が長くとも、すべての人が健康であるわけではないということだ。それはデータにもはっきり表れている。

平均寿命が長い一方、介護を受けたり、寝たきりになったりせず、無理なく日常生活を送れる期間である「健康寿命」に関しては、男性72・57歳、女性75・45歳と短いのである。

つまり、仮に70歳からなにか新しいことを始めるとしても、介護を受けずにできる期間は「3~5年」しかないとも考えられる。本書は、そこに焦点を当てているのだ。

定年退職を迎え、年金が支給され始める「65歳」から、本書に述べる「空腹健康法」を始められると、時間的に余裕があり、より長く続けられることにもなり、さらに「健康寿命」も「平均寿命」も延びる、と私は確信しています。
(本書「文庫版まえがき」より)

過去を振り返ってみよう。多くの方は、学生時代には勉強、部活、受験などでストレスを受け、社会人になってからも仕事や住宅ローンの返済、子育て、教育、人間関係などのため精神的な負担を強いられてきたのではないだろうか。それらから解放される年齢が、「65歳」だというのだ。

そして見逃すべきでないのは、「空腹」の重要性だ。

「1日3食食べないと健康に悪い」「朝食は必ず食べる必要がある」などという医学的指導がなされ、食欲がなく食べたくもないのに朝食を無理して食べている人もいらっしゃいます。その結果、日本に蔓延しているのが「高脂血症」「高血糖」(糖尿病)「高体重」(肥満)など「高」のつく食べすぎ病です。
(本書「文庫版まえがき」より)

人間の体は、空腹時に健康を保てるように設計されているのだと著者は言う。そこで本書においても、「1日1食」を推奨しているのだ。

とはいえ、その効能を理解できたとしても、ハードルはなかなか高いものでもある。そこで参考にしたいのが、著者による「石原式1日2食の小食生活」である。

いままで1日3回の食事をしてきた人に適しているのは、以下のメニューだそうだ。

〔朝食〕
人参・リンゴジュース(人参2本、リンゴ1個を刻みジューサーで作る)2杯
または熱い紅茶にすりおろし(または粉末)生姜と黒糖(またはハチミツ)を、ご本人が「旨い!」と思われる量入れて作る生姜紅茶2杯
または人参・リンゴジュースと生姜紅茶:それぞれ1~2杯ずつ
これらで、糖分とビタミン、ミネラルを補う。

〔昼食〕
そば(とろろそばがベスト)、うどん、パスタ、ピザ、ご飯などを「眠くならない」「だるくならない」程度の量食べる。

〔夕食〕
ご本人のお好きなものを何を食べても可。アルコールも、「旨い」と感じられるものを飲んで可。
(以上、本書77〜78ページより)

ただし夕食に関しては、加齢とともに日本の伝統食などに則ったものにシフトしていくのがいいようだ。

「これでは日中にお腹が空いてしまうのではないか」と不安になるかもしれないが、もし日中に空腹を感じたら、ハチミツや黒砂糖を直接なめるか、あるいは紅茶に入れて飲むといいそうだ。

また、チョコレートを食べることで糖分を補うと、空腹感はすぐ失せるという。私も高カカオチョコレートのお世話になっているので、これは感覚的に理解できることである。


『65歳からは、空腹が最高の薬「1日1食」のすごい健康法』
石原結實 著
990円
PHP文庫

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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