
「朝起きても、疲れが取れずすっきりしない」
「昼ごはんを食べると、猛烈に眠い」
「夕方になると、身体が泥のように重い」
…そんな経験はありませんか?
そういう状態になると、多くの人はこう考えます。
「最近、怠けているのかな…」
けれど、中医学の視点から見ると、それは怠けではなく、身体からの大切なサインかもしれません。
本連載では、国際中医専門員である志村幸枝先生に、中医学の知恵から、身体の違和感について、そのサインを読み解いてもらいます。
今日は、情熱を持って仕事に励んできた一人の女性が、相談にやってきました。ちょっと、覗いてみましょう。
【本日のお悩みカード】
相談者:40代女性(学習塾講師)
主な症状:全身の重だるさ。寝ても寝ても、まだ眠い。
身体のバッテリー、漏電していませんか?
重たい足取りでやってきた相談者は、椅子に座りました。そのまま沈み込んでしまいそうな様子で、伏せ目がちのまま、こう切り出します。
「志村先生、どこが痛いというわけでもないのですが、とにかく身体が重だるくて…。大好きだった仕事も、体調のせいで、だんだんつらくなってきました。病院で検査もしましたが、どこも悪くないそうです。
サボっているような自分も嫌で、なんとかならないでしょうか?」
志村先生は、深く頷きながらも、包み込むような明るいトーンでこう答えました。
「それはお辛いですね。でも、自分を責める必要なんて全くありませんよ。
中医学の視点から見れば、今のあなたの身体は、『燃料が空っぽ』か、あるいは『余分なものが邪魔して、エンジンにうまく点火できない』状態にあると、考えることができます」
「燃料? エンジン? どういうことですか?」
「つまり、あなたがサボっているかという問題ではなく、身体という『システムの不具合』だということです。
具体的に中医学の知恵で読み解くと、大きく2つの理由が考えられます。
ひとつは、生命エネルギーである『気』が足りない状態。これは休息が足りないか、身体の消耗によって、いわばバッテリーが、ゼロに近い状態ですね。
もしかしたら、40代・50代の消化吸収を司る力が弱まりやすい時期に原因があるのかもしれません。
食べたものをエネルギーに変えることができないと、脳まで栄養が届かず、強制終了(眠気)がかかってしまうんですよ。
身体が『今は活動するフェーズじゃない、修復に専念させて!』とシャットダウンを求めているサインです」
「がんばりすぎてるのでしょうか…」
「ええ。ご自身にとっては当たり前のペースでも、今の身体にとってはオーバーワークになっているのかもしれません」

志村先生は、続けて問いかけます。
「考えられるもうひとつの理由は、体内の水の巡りが滞っているタイプです。
冷たい飲み物をたくさん飲みすぎたりしていませんか?
このタイプは、身体の怠さや、スッキリしない感覚が強く出ます」
あなたはどっち?(自己観察 タイプ診断)
あなたの眠気は、どちらのタイミングで強く現れますか? 自分の身体を観察してみましょう。
【タイプA】特に「食後」に眠気が強く出るタイプ
・特に食後は猛烈に眠くなり、身体が泥のように重い。
・声に力がなく、話すのが億劫。
原因:身体のパワー不足。休息が足りない、または、食べたものをエネルギーに変換できず、身体がガス欠を起こしている状態。
【タイプB】身体が重だるいタイプ
・頭に重い袋を被せられたように、すっきりしない。
・身体がむくみやすい。
原因:体内に「余分な水分」が溜まっている状態。体内の水の巡りが悪く、身体のスイッチが入らない。
【タイプA・B 混合】
・両方の自覚がある、あるいは判別不能。
原因:エネルギー不足【A】の結果、水を巡らせる力が落ちて水分が溜まっている【B】という、連鎖反応が起きている可能性あり。
今日できる養生
志村先生は、今日からすぐに実践できる具体的なケアを提案しました。
【タイプA】「ガス欠」気味のあなたへ|エネルギーの浪費を止める
このタイプは、気の巡りをよくするため、とにかく休むことが最優先です。
・満腹を避け、「腹七分」を意識する
・スマホを置いて、休む時間を確保する
・これまでより30分早く就寝することを習慣にする
【タイプB】「水の巡りが悪い」あなたへ|体内の水を取り除く
身体に水分が溜まっているときは、水を巡らす養生が効果的です。
・シャワーですませず、お風呂に浸かる
・冷たい飲み物を控える(氷入りは厳禁!)
・温かい飲み物(最低でも、常温以上)を選ぶ
「お風呂の温度は、あなたが心地よいと感じる設定で大丈夫。まずは身体を温め、水の巡りのスイッチを入れることを意識してくださいね」
【タイプA・B混合】のあなたへ|まずは「エンジンの保護」から
どちらも当てはまる人は、まずは共通の弱点である「胃腸の保護」から始めましょう。
・休息をとる
・温かい白湯を飲む
・身体の調子をよく観察する

自分の弱点を知ることは、身体を使いこなす第一歩
相談者の女性は、自分の生活を振り返るように静かに口にしました。
「たしかに、子どもの頃から胃腸が弱いタイプで、今でも外食が続くと、体調を崩しがちです。がんばりすぎているのかについては、わからないですが、休息が欲しい気持ちは強くあります。
…タイプA なのかもしれませんね」
志村先生は、力強く頷きました。
「自分の弱点を知ることは、自分を責める材料ではなく、心身の不調を感じたときの指針になります。
しっかりと胃腸を休ませ、エネルギーを蓄え直せば、また自然と仕事への情熱や、気力が湧いてきますよ。
もしセルフケアだけでは追いつかないときは、胃腸の働きを押し上げる漢方の処方もありますから、いつでも相談してくださいね」
おわりに
相談者は、「自分の怠けじゃなかったんですね」と、少し晴れやかな顔つきです。
志村先生は、言いました。
「40代は、人生のチューニングが必要な時期。寝ても眠いのは、身体が『もっと休みたい』と送ってきた合図なんです。
その合図を無視してムチ打つのではなく、まずは胃腸を休め、身体のエネルギーがきちんと巡るように調節してあげてくださいね。
それが、身体を再び、空気のように軽く感じるための第一歩ですから」
※この記事は、国際中医専門員・志村幸枝が長年の相談経験に基づき、実例を再構築したものです。
※中医学において、身体の状態は千差万別です。紹介した養生法は一例であり、効果を保証するものではありません。ご自身の身体をより正確に知りたい方は、ぜひお近くの漢方薬店など、専門家を頼ってみてください。また、身体に明らかな不調がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。
●監修/志村幸枝

国際中医専門員。CoCo美漢方神戸勤務。登録販売者。漢方相談歴は28年。身体の変化を感じる年頃になり、自分を実験台に漢方と向き合う毎日。日常に絡めた喩え話で「伝わる中医学」をSNSで発信している。お酒を飲みながら美味しいものを食べている時が1番幸せ。趣味はおつまみ作り。
X:漢方しむしむ@simusim01454535
インスタグラム:@cocobikobe0310
●構成・文/もぱ(京都メディアライン)











