
夏の風物詩・かき氷の進化が止まらない。自家製シロップや独創的な組み合わせなど、店主の自由な発想で誕生したかき氷は多彩な味で芸術的。夏の暑い季節に清涼感ととろけるような美味が楽しめる、新しいかき氷を紹介する。
『SHIZUKU』のメロンミントと和紅茶の氷

メロンシロップとミルク、和紅茶ベースの氷にマスカルポーネクリームを忍ばせ、メロンの果肉とミントゼリーを。見た目にも涼やかだ。1850円。
扉を開くと炉を切った大きなテーブルが目に入る。ここは抹茶や和紅茶など、茶を主役にしたかき氷が人気の『shizuku』。名古屋市にある創業80余年の日本茶専門店『芳茗園』の系列ならではの趣だ。
「ふだんお茶を飲まない世代に、かき氷という新しい形でその魅力が伝われば」と話すのは、店主の水谷友美さんだ。茶は、風味と香りをいかすため茶葉をたっぷり使って煮出し、抹茶にいたっては店の石臼でひいた茶葉を注文ごとにたてるという。フルーツは茶と相性のいいものを厳選。氷は茶を注いだときに安定するように太く、長さが出るように削るのが店の流儀だ。まるで水彩画のように美しい「メロンミントと和紅茶の氷」は、その茶心が込められた一品。シャリふわっの氷からエレガントな和紅茶の香りとやさしい甘みが口いっぱいに広がる。さらにメロンとミントゼリーの爽快さも重なり、繊細な氷に複雑味が増す。洗練された大人の味わいである。
かき氷は素材合わせが魅力であるが、水谷さんは白みつ氷に抹茶をかけただけのシンプルな「上薄茶氷」への思いも強い。日本茶を主役にした引き算の美学。かき氷には、粋な楽しさもあるのだ。

shizuku
愛知県名古屋市中村区太閤通6-8
電話:なし
営業時間:12時〜17時30分(最終注文)
定休日:水曜、木曜
交通アクセス:地下鉄桜通線太閤通駅より徒歩約10分
要予約(WEB予約のみ。当日9時からhttps://airrsv.net/shizuku-yoyaku/calendarより)
※季節によってかき氷の内容は変わります。
『二條若狭屋 寺町店』の彩雲

季節のシロップをかけて味わう「彩雲」1595円。氷の中にフルーツが隠れ、シロップはライム、キウイ、オレンジ、いちご、練乳。
大正6年(1917)創業の京都の菓子司『二條若狭屋』。その姉妹店が提供するかき氷は、「一年を通してお客様に京都らしさと飽きさせない工夫を届けたい」という、もてなしの心から始まった。
根幹をなすのは、和菓子屋としての矜持と知見が凝縮された季節で替わるシロップ。すべて自家製で、味の決め手となる砂糖の使い分けに妙技が光る。あっさり仕上げたいときはグラニュー糖、コクを深めたいときはきび糖や蜂蜜を合わせるなど、銘菓を生み出した職人の技が息づく。
5種類のシロップで味わう「彩雲」は、色合い、甘み、酸味、香りが重ならないように緻密に構成され、定番の果物のみならず、そら豆やかぼちゃ、生姜といった和の野菜、自家醸造の甘酒まで登場。和菓子屋ならではの発想や創意で季節の味わいを生んでいる。

さらに、氷も自家製で、京都の三大名水のひとつ「染井の水」と同じ水脈から汲み上げる井戸水を使用。4日から1週間かけてじっくりと凍らせていく。口に含むと淡雪のようにふわっと溶け、優しい口当たりだ。
京都の風土と和菓子の伝統が育んだ、涼菓といえるだろう。
二條若狭屋 寺町店
京都市中京区寺町通二条下る榎木町67
電話:075・256・2280
営業時間:茶房10時30分〜16時30分(最終注文)、物販9時30分〜17時30分
定休日:水曜、不定休あり
交通アクセス:地下鉄東西線京都市役所前駅から徒歩約5分
取材・文/石出和香子、西村晶子 撮影/伊藤菜々子、内藤貞保
※『サライ』2026年8月号より












