
ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第29回です。劇中では、小一郎(演・仲野太賀)の正室慶(演・吉岡里帆)の連れ子という設定の羽柴与一郎(演・大西利空)が初陣を果たしました。
編集者A(以下A):初陣といえば、武士の誉れ。周囲がお膳立てしてまでも手柄を取らせようとするのを常とします。ところが……。
I:与一郎は、小一郎の「信孝様をお守りするのだぞ」という「命」を忠実に守ったがために傷を負いました。信孝(演・結木滉星)が軍勢を鼓舞した直後に、味方だと思っていた兵が弓を射てくる設定でした。信孝は「敵を鼓舞してしまったではないか」と叫んでいましたが、一瞬、これはコント? と思って笑ってしまいました。でも直後に、信孝を守ろうとした与一郎の背中に弓が突き刺さります。初陣なのにこの展開? 初陣なのにこんなことになる武将っていたのでしょうか?
A:大河ドラマで描かれたということでいえば、2002年の『利家とまつ~加賀百万石物語』で佐々成政(演・山口祐一郎)の息子佐々松千代丸が13歳の初陣で討ち死にする場面が描かれました。けっこう衝撃的な場面で、多くの視聴者が袖を濡らしたといいます。このとき松千代丸を演じていたのが『豊臣兄弟!』で前野長康を演じている渋谷謙人さんです。
I:松千代丸は、長島一向一揆の戦いで初陣して討ち死にしたというんですよね。
A:はい。陣中で流れ弾にあたっての討ち死にでした。報せを受けた母のはる(演・天海祐希)が絶叫する姿が思い出されます。
I:なるほど。流れ弾にあたったのですね。
A:30年前の『秀吉』では、登場すらしていないのが羽柴与一郎です。平成以降の研究の成果で、小一郎正室の実家などもその輪郭が掴めてきたようです。与一郎は、本来は、小一郎の実子といわれています。初陣の時期についても、先日取材に訪れた三木城跡にある三木市立みき歴史資料館にあるジオラマ地図には、三木城を囲む砦のひとつに「城主・木下輿市郎」と記されていました。すでに初陣をすませていた記録もあるということを明記しておきます。
I:いずれにしても、与一郎は、天正10年(1582)頃に亡くなったといわれているんですよね。なんだか哀しくなりました。
信心深い羽柴女性陣
I:ところで、与一郎の戦傷の回復を願って、羽柴女性陣が薬草を取りに行ったりする姿が描かれました。小一郎の妹のあさひ(演・倉沢杏菜)は、八幡様にお参りして護符を授かってきていました。
A:羽柴女性陣の信心深さを示すエピソードです。当欄でも先日報じましたが(https://serai.jp/hobby/1274242)、小一郎が奈良に所領を得た際に、女性陣が神社仏閣をお参りした様子が史料にのこされています。
I:与一郎の死に小一郎も号泣していました。この与一郎については史料もあまり多くはありません。小一郎ほどの武将の息子なのに、不思議なことですね。
A:今後、小一郎は何人かの養子を迎えることになるのですが、劇中どこまで描かれるのでしょうか。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











