
1979年、福岡県北九州市生まれ。2014年、田辺一邑に入門。2019年二ツ目昇進、2026年秋、真打昇進予定。やさしい表情と声を持ちながらキリリとした人物描写の冴えがよい。説得力ある語り口。
舞台俳優と声優を経て、講談の世界へ飛び込んだ異色の存在、田辺いちかさん。スーパー前座、スーパー二ツ目と称されて12年、今秋、真打に昇進する。一人前になるまで15年ほどかかるとされる講談の世界では異例の速さである。
「間がよく口跡もいい」(佐藤友美さん)、「声の色彩が豊か」(橘蓮二さん)と称される通り、柔らかな語り口で心地よく講談の世界へと誘ってくれる。「最初の3分が大事」という信条のもとやさしい笑みで高座にあがり、会場を癒やしモードに包み込む。
講談の魅力を伝えたい
講談との出会いは、ある劇団のワークショップでのこと。たまさか参加していた師匠・田辺一邑さんの表現力に興味を覚えた。その後、講談初鑑賞。古い物語の伝承、新しい話題からの創作などを行なう世界に魅了されたという。
「夢は毎日高座がある老後」といういちかさん。文学作品の講談化にもつとめている。
この演目を聴きたい
曲馬団の女
戦後の混乱する東京を舞台にした、十二代田辺南鶴の作。曲馬団(サーカス)出身の女性が、戦死した息子の許嫁だと嘘をつき、母ひとりの家に香典泥棒に入るが……やがて実の子以上の孝行をするように。
「微笑み交わすその様子、
すでにまことの母娘のよう。
互いの目には
キラリと光る涙の露」
「令和の名人」推薦者(特集内の評論を担当)
佐藤友美さん(演芸専門誌『東京かわら版』編集人)
幼少期から伝統芸能に親しみ、『東京かわら版』編集部へ。寄席演芸の普及に尽力。4月に『東西寄席演芸名鑑3』を刊行予定。
杉江松恋さん(作家・文芸評論家・演芸プロデューサー)
推理小説の書評や小説執筆のかたわら、落語会や浪曲会を主宰。夢枕獏『陰陽師』を天中軒すみれさんのために脚本化。著書多数。
橘 蓮二さん(演芸写真家・演芸プロデューサー)
落語、講談、浪曲を中心に漫才、神楽など演芸全般の舞台や楽屋、ポートレートを撮り続ける。落語会のプロデュース、著書多数。
取材・文/山﨑真由子 撮影/橘 蓮二
※『サライ』本誌2026年4月号より












