
「小説のように書き終えておしまいではなく、“創作落語”は高座にかけるにつれ、お客さんとともに進化、成長していくもの」と、三遊亭白鳥さんが胸を張る。
自身の創作落語で勝負して40年近く。生み出してきた噺の数は、300ほど。
「音源や台本が残っているのはそれくらいで、忘れてしまったものもたくさん。『サーカス子象』は、つる子ちゃん(林家つる子さん)が女性目線の『中村仲蔵』をやっていたのを見て、俺もこんな噺をつくりたいなと思ったところ、前につくっていた……」と思い出し昨年末に復活。手製の象のパペットとともに話題をさらった。
白鳥さんが創作の才に気づいたのは落語に出会う前の高校時代。怪談話をつくっては友人に披露し評判となった。大学は文芸学科に進学し童話絵本研究会へ。童話作家を目指すもののしっくりいかず。
その後、志ん生師匠の著書に出会い、落語への関心が湧き、寄席に出かけるようになったという。古典のよさはまだわからなかったが、奇想天外な新作落語を披露し、既存の枠組みから悠々とはみ出す三遊亭圓丈師匠を見て入門を決意した。

他人が演じ、解像度が増す
白鳥さんの入門当時(1987年)は新作落語への批判が厳しい時代だった。伝統芸能としての落語の在り方が重視され、むろん白鳥さんも不遇の時を過ごしたが創作を続けてきた。
二ツ目時代の『メルヘンもう半分』は、怪談噺『もう半分』を下敷きに北欧原作のアニメをモチーフにしたもの。『任侠流山動物園』は浪曲『清水次郎長伝』を基に、動物園の動物たちを主人公にした。はたまた、少女漫画『ガラスの仮面』の設定を落語界へと移した『落語の仮面』は美内すずえさん公認の連続物として、原作ファンをも夢中にさせている。
橘蓮二さんが白鳥さんを「稀代のストーリーテラー」と称するように、作品は実験的で秀逸。今や落語家のみならず、講談師、浪曲師、なかでも女性落語家、女性浪曲師が、白鳥さんの創作落語をかける機会が急増し、作品としての評価がうなぎのぼり。
「以前はウケたくてギャグを大量に入れていたけれど、今は筋とセリフで勝負」と、白鳥さん。これからの落語家は自ら新しい噺を生み出せ、という道を見せている。

この演目を聴きたい
鉄砲のお熊
江戸で人気の女力士・お熊が主人公。映画『ストリート・オブ・ファイヤー』に影響を受けて創作したと白鳥さん。浪曲師・玉川奈々福さん、講談師・神田鯉栄さんも演じる。
「痛いよーおっかさーん、って、
子どものときにその悪ガキに
石でつけられたんだよ、
この傷は。ね、親方」
「え……今の回想シーンだったの?
いやー、なにが始まったのかと思った。
俺はさ、女相撲で今をときめく
“鉄砲のお熊”さんの額の傷だよ?
ちょいとワケありだと思っていたのに」
「令和の名人」推薦者(特集内の評論を担当)
佐藤友美さん(演芸専門誌『東京かわら版』編集人)
幼少期から伝統芸能に親しみ、『東京かわら版』編集部へ。寄席演芸の普及に尽力。4月に『東西寄席演芸名鑑3』を刊行予定。
杉江松恋さん(作家・文芸評論家・演芸プロデューサー)
推理小説の書評や小説執筆のかたわら、落語会や浪曲会を主宰。夢枕獏『陰陽師』を天中軒すみれさんのために脚本化。著書多数。
橘 蓮二さん(演芸写真家・演芸プロデューサー)
落語、講談、浪曲を中心に漫才、神楽など演芸全般の舞台や楽屋、ポートレートを撮り続ける。落語会のプロデュース、著書多数。
取材・文/山﨑真由子 撮影/橘 蓮二
※この記事は『サライ』本誌2026年4月号より転載しました。












