文・石川真禧照(自動車生活探険家)

システム馬力680ps、システムトルク870Nmのパワーユニットは本体重量が2.7トンをオーバーしていても、動力性能には関係ない。公称4秒台の0→100km/h加速は、そのまま何の苦も無く達成した。そのときの安定感、静粛性は高級車にふさわしいもの。改めてEVの底力を知らされた。コーナーでもロールは抑えられ、乗り心地も不快な動きはなかった。

21世紀に入ってからの自動車の進化は目覚ましいものがある。運転手がいらない自動運転車や空飛ぶ車というのも出現している。AIの導入も進んでいる。そのような状況の中、ボルボがフラッグシップカーを新しくしてきた。

カメラやレーダーなどの最新のセンサーが高性能コンピューターに接続され、ソフトウェアや制御処理、車の周囲360度をリアルタイムで把握している。
美しさと機能性を両立させたフラッシュサーフェスデザインのボディ。

ボルボといえば、北欧スウェーデンの自動車メーカー。1927年の創業以来、安全性能に配慮した車作りを特徴としてきた。

スウェーデン・イエテボリのボルボ本社を訪ねた時、技術系の役員になぜボルボが熱心に安全性を重視した車作りをしているのかを聞いたことがある。

その時の答えは、「スウェーデンは国土が広いが、人口は少ない。少ない人命を守る方法の1つとして、自動車による事故を少なくすることがある。運転する人だけでなく、車の周囲にいる人の命も守る車を作る義務がスウェーデンの車にはある。だから、安全は必要なんだ。」と応じてくれた。

グリルレスはエンジン冷却のラジエターのないEVの証。斜線と中央のエンブレムは残った。
大柄なボディで、トヨタのランドクルーザー300と比較すると、全長、ホイールベースは55mmと135mm長いが、全高は185mmも低い。
テールランプは、ボルボ伝統の縦長ランプを現代的に再解釈したデザインを採用。コの字型のランプとウィンドウ両端に縦に等間隔のランプが並んでいる。

1959年に3点式シートベルトを初めて開発した時の特許を無償で公開しているのも、自分たちの車だけでなく、世界中の車が安全になってほしいからという信念に基づいている。サイドエアバッグも世界で初めて開発している。

安全設計だけでなく、地球環境維持のゼロエミッションにも力を入れてるし、素材の研究も進めている。

近年ではAIとAIをはじめとする最新テクノロジーも積極的に新型車に採用している。

ボルボ車のアイコンになっているトールハンマーヘッドライトはLEDを使用。
ヘッドライトはランニングライトの裏側にあり、開閉式で現れる。ヘッドライトは1.3メガピクセルの新しいハイディフィニションピクセルLEDを使用している。

最新のEX90に乗ると、自動車を取り巻く技術の進化にただ驚くばかりだった。

EX90は全長5m以上(5035mm)全幅は2m近く(1965mm)、全高は1.74mという大型のSUV(多目的スポーツ車)だ。乗車定員は7名。3列シートを備えている。

車両本体価格1000万円を超える高級SUVで、ボルボの最上級フラッグシップSUVとして登場した。

ボルボ曰く、「北欧のプライベートラウンジのような」インパネ。広く平らなダッシュボードは雪の草原のイメージだそうだ。素材は天然素材やリサイクル素材を使用。ウッドパネルは、きちんと管理された森林から生産された林産物を証明するFSC認証を受けている。中央の縦型ディスプレイは14.5インチでGoogleを搭載。ハンドルの奥側のディスプレイは9インチでヘッドアップディスプレイと連携している。

動力源は電気モーター。ボルボは早い時期にゼロエミッション化に着手し、電気自動車の開発にも積極的だった。大容量の電池を搭載しており、一充電走行可能距離は650km(WLTCモード)を実現している。

駆動方式は4輪駆動なので、モーターは前後車軸用に1基ずつ、合計2基備えている。そのシステム合計は680PS、最大トルク870Nmに達する。

加速力も速く、試乗したウルトラツインモーターパフォーマンス仕様の場合、手持ちのストップウォッチでも4秒台を記録した。

その数値もすごいが、加速中の静寂性、安定感、安心感がかなりハイレベル。ボルボの新世紀車作りの技術力の高さが感じられる。この車の安全を含めた先進性への取り組みはさらにすごい。車は乗員だけでなく、周囲の人の安全も守るように設計されている。

基本構造は「SPA2アーキテクチャー」を採用。ボルボ独自のハードウェアと、ソフトウェアを競合した「スーパーセットテックスタック」に基づいて開発された。
給電口は車体左側の後方に普通充電用と急速充電用が設けられている。800Vテクノロジーを搭載し、106kWh容量の電池で1充電走行距離は650km(WLTCモード)となっている。
車体前部に設けられた荷物スペース。ここに家庭用200V用充電ケーブルを収納できる。

走行中でも新しいデータから車が自ら学習し、アップデートすることで、時間の経過とともにより賢く、より安全になっていくという。

車内でも2基のドライバーモニタリングセンサーが運転者の視線の動きや、ハンドルの静電容量センサーがハンドル操作などを検知し、ボルボが独自に開発したアルゴリズムにより解析することで、注意力や眠気などの状況を把握し、サポートしてくれる。サポートは警告音などに始まり、運転者が反応しない場合は車が自ら安全に停止し、緊急通報を発信してくれる。

身体にフィットし、座り心地の良い前席。座席の前後、上下、背もたれの調整は1つのダイヤルで行う。
変速機は1速固定式。シフトするときはコラム右側から生えているレバーを上下させる。シフトポジションはR/N/Dとレバー先端を押してP。
ドライビングモードの設定画面。ワンペダルドライブの操作レベルやハンドル操作の重さ、サスペンションの硬さの設定を選択できる。
スポーツ走行やオフロード走行のセッティングもできる。

さらに、乗員検知システムレーダーセンサーを使用する世界初のシステムを採用。室内で1㎜未満のわずかな動きを検知すると、それが人やペットなのかを判断し、車の空調システムを作動させるなどして命を守ってくれる。

また、ボルボの開発技術とテクノロジーリーダー3社のサービスを競合した次世代コアコンピューティングシステムを搭載し、安全から駆動系、インフォテイメント、電池の管理まで統合し、制御している。

さらに、AIベースのアクティブセーフティーや車両センサー、電池マネージメントまでも管理。定期的なOTA(無線アップデートシステム)により、安全性、車両性能、顧客体験などを進化し続けるように設計されているという。

このような説明を開発関係者から聞いていると、車の機能説明とは思えなくなってくる。最終的には、新しいデータを車が学習し、機能をアップデートしてくれるというのだ。乗り続けることで、車が賢く安全になっていくということだ。それは実際に長い年月保有し、使っていかなければわからないかもしれないが、車との付き合い方も変わっていくのだろう。

新しいEX90に乗り、走り出しても、このようなソフトアンドハードウェアの働きは直接的にはわからなかった。
もちろんEX90の魅力はこうした最先端テクノロジーの実践だけではない。

エレクトロクロミックガラスを使用したガラスサンルーフは、上級グレード2グレードに標準装備される。
このガラスルーフは、電圧や電流をかけることで色調や濃淡を瞬時に変化させられる特性がある。
上級グレードにはBowers&Wilkinsハイフィディリティオーディオが搭載され、ヘッドレスト内蔵を含めて、25個のスピーカーが装備されている。DolbyAtmosによる3Dでの音場再現も可能としている。サウンドモードの中にはロンドンの伝説的録音スタジオ、アビーロードスタジオモードもあり、独自の音響的DNAを再現するという。
車内からドアを開くときは、内張にある小さなスイッチを押してロックを解除する。
センターコンソールの前部には非接触式充電が可能な携帯電話置き場が設けられている。
各種アプリアプリケーションが選択できる画面だが、走行中の操作は視線を集中させなければならないのが、気になる。基本はボイスコントロールだ。

室内はスカンジナビアンデザインと言われているシンプルだが、品質、質感の高さを感じさせる天然素材、リサイクル素材、バイオ素材を組み合わせた内装が取り入れられている。

最大7名が座れる3列シートは、最後尾の3列目でも身長170センチクラスの人が寛げる広さが確保されている。当然だが、3列目の乗員の安全性の高さもボルボ基準をクリアしている。この安心感こそ、ボルボが長年培ってきたもの。ハンドルを握り、街中から高速道路や峠道を走りながら、そう感じた。

2列目も左右席はセミセパレートの形状を採用。前席背もたれにテーブルが内蔵されている。
左右にセパレートされた3列目シート。着座位置はやや高めなので、前方視界もある。身長170cmクラスの人でも長距離ドライブに耐えられる広さは確保されている。
3列目用のエアコンもピラーに吹き出し口が内蔵されており、快適に過ごせる。
3列目シート後ろのラゲッジスペース。奥行きは60cm、左右幅は110から138cmある。床面から路面までの高さは77cm。
2、3列目を倒したところ。2列目は座面もスライドし、背もたれを倒すとスライドダウンする方式を採用。3列目と合わせて140cm以上の平らな空間ができる。マットレスなどを敷けば車内泊できる。
3列目は荷室後部のスイッチで左右別々に電動で倒す起こすができる。車高調整もできる。

最新のボルボフラッグシップモデルは、世界トップクラスのAIテクノロジーと安全性を組み合わせた乗り物と言える。

ボルボ/EX90 Ultra Twin Motor Performance

全長×全幅×全高5035×1965×1740mm
ホイールベース2985mm
車両重量2710kg
モーター非同期(前)/永久磁石同期(後)
最高出力299ps(前)/381ps(後)
最大トルク390Nm(前)/480Nm(後)
駆動形式4輪駆動
1充電走行距離650km /(WLTC)
使用燃料/容量リチウムイオン電池/106kWh
ミッション形式1速固定式
サスペンション形式前:ダブルウイッシュボーン式 後:インテグラルリンク式
ブレーキ形式前:ディスク  後:ディスク
乗員定員7名
車両価格(税込)1399万円
問い合わせ先0120-019-270

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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