皆さんは「銀塩写真」をご存じでしょうか。銀塩写真は銀塩(銀の化合物、ハロゲン化銀ともいう)の感光性を用いた写真技術のことで、最初の実用的な写真術として1839年に公表されたダゲレオタイプ(銀板写真)以降、大半の写真技法は、何らかのかたちで銀塩の光化学反応を利用してきました。
デジタル写真に対して、従来の写真技法をアナログ写真と呼ぶこともありますが、その大半は銀塩写真です。
今日、こうした銀塩写真の技術は、デジタル技術の進歩によって終焉を迎えようとしています。
建築、舞台美術の演出、書、陶芸、和歌、料理と多岐にわたる分野で、国内外において活躍する現代美術作家、杉本博司(1948~)の原点は銀塩写真にあります。

※以下写真はすべて、(C)Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
東京国立近代美術館で開催の「杉本博司 絶滅写真」は、杉本の初期から現在に至る銀塩写真約60点を展観します。(6月16日~9月13日)

本展の見どころを、東京国立近代美術館の主任研究員、増田玲さんにうかがいました。
「今回の展覧会は「絶滅写真」というタイトルのもと、「絶滅」という主題をめぐって構成される杉本博司の回顧展です。
これはデジタル技術の進展により旧来の銀塩写真が終焉し、くわえて作家のキャリアが最終章を迎えつつあるという状況から浮上した主題です。この通奏低音としての「絶滅」という主題の背後に、「人類文明の絶滅」というもう一つの視点が見え隠れする、というのが基本的な展覧会の構想だったのですが、最終的には「人類文明の絶滅」をめぐる杉本さんのヴィジョンが、よりはっきりしたかたちで示される展覧会になっています。

見どころのひとつである新作の展示のうち、杉本さんのデビュー作として知られる〈ジオラマ〉シリーズでは《ポコット族》などいくつかの新作を加えた構成により、1975年、シリーズの始まりからひそかに構想され、半世紀を超えてついに実現に至った、人類史をめぐるストーリーが初めて提示されます。そこで提示される人類史への視点は、そのあとに展示される各シリーズにもさまざまなかたちでつながっていきます。
杉本さんの作品世界の展開をたどりつつ、展覧会全体を通じて、その半世紀を越える活動の蓄積の上に発信される、「絶滅」をめぐるメッセージにご注目いただければと思います」

※杉本博司氏と浅田彰氏を迎えて特別講演会「絶滅について」が行われます。詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
【開催要項】
杉本博司 絶滅写真
HIROSHI SUGIMOTO: EXTINCTION
会期:2026年6月16日(火)~9月13日(日)
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://art.nikkei.com/sugimoto/
開館時間:10時~17時、金・土曜日は~20時(入館は、いずれも閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝











