たてかわ・だんしょう 1965年、東京生まれ。1993年、立川談志に入門。2005年真打に昇進。身長180㎝、足のサイズ30㎝という巨躯。撮影に使った32型テレビが小さく見える。

「落語は、変わっていくのが本来の姿なんです」

『令和版 現代落語論』の著者でもある立川談笑さんは、こう言い切る。

緻密に改作した古典で現代社会に迫る

「江戸時代から明治大正、昭和……と同じ演目をたどったことがあるのですが、中身が時代によって変わっているんです。新陳代謝というか、時代に柔軟に適合していた。柔らかく形を変えながら残ってきたもの、そしてこれからも変わっていくのが落語なんです」

ところがある時点から、音声や映像として記録するようになり、「落語とはこういうもんだ」と固定化されてしまったのだと談笑さんは言う。

「例えば何十年前の大名人の落語をいま聴いても、“うまい”とは思いますが“面白い”とは思わない。夫婦関係ひとつとっても、以前の落語は亭主が女房を平気で殴る、蹴る。いまじゃDVですからね、お客さんも笑えません」

ではどうするか。

力士か弁護士になりたくて、後者をとって早稲田大学法学部に進んだという談笑さんである。考察や探究はお手のもの。噺を分解し、構造を分析。古典を磨き直すだけでなく、物語はそのままで、つくり替えてしまった。それが「改作落語」である。

例えば『壺算』は『テレビ算』となり、染物屋の職人と花魁との恋を描いた『紺屋高尾(こうやたかお)』は、グラビアアイドルとジーンズ職人との純愛物『ジーンズ屋ようこたん』となった。時代を移すことで、かえって古典の本質が伝わり、面白さも増すという仕掛けだ。

「物議をかもしたのが、『芝浜』の改作『シャブ浜』です。飲んだくれて仕事に行かない魚屋の噺ですが、引っかかったのは、この男、ただの怠け者なのか、それともアルコール依存なのか、ということ。依存症だったら、努力で治るもんじゃない。そういう観点も入れて、依存症の辛さも描いたのが『シャブ浜』です。師匠の(立川)談志には最初、“けしからん、禁演だ!”とエラく叱られましたが、ついには認めてくれて。最近も、依存症の家族会の前で、披露してきました」

名プレイヤー兼名コーチ

今年の年末に向けて、人情噺の新作をつくり始めているという談笑さん。スマホを見せてもらうと、メモが大量に記されていた。

談笑さんは「名プレイヤーであり、名コーチ」(橘蓮二さん評)でもある。

「前座には、X(旧ツイッター)をやるように厳命しています。前座なんで書くこともあまりないんですが、どうやったら相手に楽しんでもらうかという修業でもあるんです。名前も覚えてもらえますしね。ここで何を面白いと思うかというセンスもわかるし、お客さんとの距離感の取り方も見える。向いてないと思ったら? 即、引導を渡します。別の道を進んだほうが、幸せですから」

この「厳しさ」は、落語家としての矜持にも通じる。厳しい態度で落語と向き合うからこその快作であり、育成方法なのだろう。

この演目を聴きたい

テレビ算

巧みな話術とトリックで店主を騙し、水瓶を安く買うという古典落語『壺算』を、談笑さんはストーリーをそのまま、時代を現代に、水瓶を薄型テレビに移し改作した快作。

「で、相談なんだ。さっきの小さいテレビ、いくらかで引き取ってくれるかな」
「もちろんですよ。売値の5万円で」
「悪いね。じゃ、さっき払った5万円は
そこにあるから、現金5万円を足して10万円。
そして、この27型テレビを
5万で引き取ってもらって15万円ね」

「令和の名人」推薦者(特集内の評論を担当)

佐藤友美さん(演芸専門誌『東京かわら版』編集人)
幼少期から伝統芸能に親しみ、『東京かわら版』編集部へ。寄席演芸の普及に尽力。4月に『東西寄席演芸名鑑3』を刊行予定。

杉江松恋さん(作家・文芸評論家・演芸プロデューサー)
推理小説の書評や小説執筆のかたわら、落語会や浪曲会を主宰。夢枕獏『陰陽師』を天中軒すみれさんのために脚本化。著書多数。

橘 蓮二さん(演芸写真家・演芸プロデューサー)
落語、講談、浪曲を中心に漫才、神楽など演芸全般の舞台や楽屋、ポートレートを撮り続ける。落語会のプロデュース、著書多数。

取材・文/角山祥道 撮影/寺澤太郎、橘 蓮二

※『サライ』2026年4月号より

4月号大特集はサライ「演芸」令和の名人です

 

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