やなぎや・さんざ 1974年、神奈川県生まれ。1993年柳家小三治(やなぎやこさんじ)に入門、前座名は「小多け(こたけ)」。1996年二ツ目昇進し「三三」に。2006年、真打に昇進。

初めて聴いた落語に心を動かされて噺家を志すのは珍しくないが、この人はとりわけ早い。小学1年生のときに『文違い』を聴いて落語に強く惹かれた。内藤新宿の女郎と男の騙す、騙される、を描いた「廓噺(くるわばなし)」にだ。中学生になると、地元・小田原(神奈川)から月一で東京の寄席通い。高校卒業と同時に、人間国宝となった十代目柳家小三治師匠に入門した。

潔いまでの落語家人生。これが柳家三三さんである。

これからの大看板

丁寧かつ端正な所作が見る人をどんどん引き込んでいく。古典の王道を真っ直ぐに進む正統派だ。

「噺運びに淀みなく、これぞ落語という間と所作」(佐藤友美さん評)、「これからの大看板」(杉江松恋さん評)と落語通が認める三三さんを、二ツ目の時分から撮り続けてきたのが橘蓮二さんだ。

「指先、目線まで計算し尽くされた姿が実に美しい方です。以前、高座での心得について伺ったら“幕の向こう側にある情景をただ喋ってるだけ”というような説明でした。見えている景色をそのまま再現、描写しているだけだからこそ、まったく不自然さがないのかもしれません」

橘さんのお薦めは三遊亭円朝(さんゆうていえんちょう)の大ネタ『鰍沢(かじかざわ)』。
「元遊女・お熊の凄み、妖しさに激しく感情を揺さぶられます」

研究熱心で知られる。師匠の十代目柳家小三治は弟子に自ら考えさせる「教えない師匠」だった。

この演目を聴きたい

鰍沢

三遊亭円朝作の古典落語。大雪の日、鰍沢(山梨)で道に迷った商人が、一軒の家に一宿を頼むが、そこには妙齢の美女・お熊がいて……。サスペンス要素満載の怪談人情噺。

「命からがら助かりましたが、
あの一本足の足跡を
たどってこられたときには
もうだめかと思いましたよ」

「令和の名人」推薦者(特集内の評論を担当)

佐藤友美さん(演芸専門誌『東京かわら版』編集人)
幼少期から伝統芸能に親しみ、『東京かわら版』編集部へ。寄席演芸の普及に尽力。4月に『東西寄席演芸名鑑3』を刊行予定。

杉江松恋さん(作家・文芸評論家・演芸プロデューサー)
推理小説の書評や小説執筆のかたわら、落語会や浪曲会を主宰。夢枕獏『陰陽師』を天中軒すみれさんのために脚本化。著書多数。

橘 蓮二さん(演芸写真家・演芸プロデューサー)
落語、講談、浪曲を中心に漫才、神楽など演芸全般の舞台や楽屋、ポートレートを撮り続ける。落語会のプロデュース、著書多数。

取材・文/角山祥道 撮影/橘 蓮二

※サライ2026年4月号より

4月号大特集はサライ「演芸」令和の名人です

 

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