バットンさんと「パートナー的存在」である圧力鍋。

文/鈴木拓也

東京のオフィス街、虎ノ門にあるフランス料理店「ル・プティ・トノー」。

2001年の開業以来、伝統的な料理にこだわり、フランスの食文化の発信を続けるのは、シェフのフィリップ・バットンさんだ。バットンさんの作る料理だけでなく、その人柄にも惹かれて常連となる人は多い。

そのバットンさんが得意とするのは、ティファールの圧力鍋を活用した料理。煮込みが短時間でできる圧力鍋は、「パートナー的存在」だと重宝している。

日本ではそこまで馴染みがないかもしれないが、フランスでは、どの家庭にも圧力鍋が常備されているという。バットンさん自身も、祖母が圧力鍋で作った「うさぎの煮込み」を食べた思い出が、料理人としてのルーツだと語る。

そんなバットンさんが、このたび上梓したのが『圧力鍋で魔法のようにおいしく! おうちで楽しむカジュアルフレンチ デイリー&おもてなし レシピ46』(トゥーヴァージンズ刊 https://www.twovirgins.jp/book/9784867910580/)だ。

本書は、前菜とスープに始まり、魚や肉のメイン料理からデザートまで、46ものレシピを惜しみなく公開。圧力鍋を用意すれば、誰でも本格的なカジュアルフレンチを作れる1冊に仕上がっている。

今回は、そのうちの2レシピを取り上げよう。

「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」

バットンさんと日本とのなれそめは、神戸のレストラン「ラ・バーグ」の料理長に就任した1986年のこと。本場の味を日本人シェフに教えることに全力を注いだが、その一つが「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」であった。レシピ自体は、バットンさんの先輩シェフ直伝のもので、今でも内容を変えることなく大切に守り続けているという。

【材料(6人分)】
牛ほほ肉……900g

【マリネ液】
玉ねぎ……1/2個
エシャロット……1個
にんじん(小)……1本
セロリの枝……1/2本
ポワロー(西洋ネギ)……1/2本
にんにく(皮付き)……3片
ブーケガルニ……1束(パセリの茎4~5本、タイム8本、ローリエ5枚、エストラゴン5~6本、ポワローの青い部分1本分)
赤ワイン……1500ml
塩、こしょう……適量
薄力粉……75g
トマトペースト……50g
フォンドボー……1500ml
コリアンダー(ホール)……大さじ1/2
ホワイトペッパー(ホール)……大さじ1/2
岩塩……大さじ1/2

【赤ワイン液】
赤ワイン……750ml
カシスリキュール……100ml
※あらかじめ1/4の量になるまで煮詰めておく

【ガストリック】
砂糖……50g
はちみつ……50g
白ワインビネガー……100ml
にんじん……1本
塩、こしょう……適量
バター……20g
はちみつ……小さじ1
クミンシード……適量
オリーブオイル……適量
イタリアンパセリ……適量
ディル……適量

【作り方】
1 ボウルに牛ほほ肉、1~2cm角にカットした玉ねぎ、エシャロット、にんじん、セロリの枝、ポワロー、皮付きのまま半分にカットしたにんにく、ブーケガルニ、赤ワインを入れ、冷蔵庫で1日漬け込む。

2 手順1のマリネ液から具材をすべて取り出す。牛ほほ肉の両面にしっかり塩、こしょうをふり、薄力粉をまぶす。
※にんにくの皮を外し、マリネ液は残しておく
※残った薄力粉は手順6で使用

3 フライパンにオリーブオイルを熱し、手順2の牛ほほ肉を入れ、両面にしっかり焼き色を付けてから取り出す。

4 鍋に手順2のマリネ液を入れ、1/3の量になるまで煮詰める。

5 別の鍋に砂糖、はちみつ、白ワインビネガーを入れ、1/2の量になるまで煮詰め、【ガストリック】を作る。

6 圧力鍋にオリーブオイルを熱し、手順2の野菜をソテーする。さらに手順3の牛ほほ肉、残りの薄力粉、マリネ液に漬けていたブーケガルニ、トマトペースト、フォンドボー、あらかじめ1/4の量に煮詰めた【赤ワイン液】、手順4の煮詰めた【マリネ液】、手順5の【ガストリック】、コリアンダー、ホワイトペッパー、岩塩を加え、蓋を閉めて、強めの中火で加熱し、蒸気が上がったら弱火にして90分加圧する。

7 圧力が下がったら、牛ほほ肉、ブーケガルニを取り出す。残ったソースは漉してから別の鍋に入れ、とろみが付くまで煮詰める。塩、こしょうで味をととのえる。

8 手順7の牛ほほ肉を食べやすい大きさにカットし、ソースを煮詰めた鍋に入れ、温める。
※牛ほほ肉は、冷蔵庫でよく冷やしてからカットすると、きれいに仕上がる。

9 にんじんを大きめの長方形にカットし、熱湯で硬めに茹でる。

10 フライパンにオリーブオイルを熱し、手順9のにんじんを入れ、ソテーする。塩、こしょうで味をととのえたら、バター、はちみつ、クミンシードを加える。

11 器に手順8の牛ほほ肉を盛り付け、ソースをかけ、手順10のにんじんをのせ、イタリアンパセリ、ディルを飾る。

「タラの包み焼き ライム風味」

フランス料理の多くは、様々なハーブやスパイスが使われる。ジビエや魚の臭みを消したり、味わいにアクセントを生み出す効果があり、バットンさんはフレッシュなものをすすめる。香りが強いものは、少量だけ使うのがコツ。「タラの包み焼き ライム風味」は、タイムとローリエを使い、奥深い風味を引き出している一品。

【材料(4人分)】
タラ……600g
グリーンアスパラガス……4本
キャベツ……2枚
フルーツトマト……2個
ライム……1個
にんにく……1片
チョリソー……30g
タイム……4本
ローリエ……4枚
オリーブオイル……適量
塩、こしょう……適量

【作り方】
1 グリーンアスパラガスは皮をむき、食べやすい大きさにカット、キャベツは短冊切り、フルーツトマトは4分の1にカット、ライムとにんにくとチョリソーは薄くスライスする。

2 アルミホイルにオリーブオイルをたらし、手順1のキャベツを敷き、その上に一口大にカットしたタラをのせる。さらに残りの手順1とタイム、ローリエをのせ、塩、こしょうをし、アルミホイルをたたむようにして端を閉じる。

3 圧力鍋に水300ml(分量外)を入れ、中かごと手順2をセットし、蓋を閉めて、強めの中火で加熱し、蒸気が上がったら弱火にして5分加圧する。

4 圧力が下がったら器に盛り付ける。

写真提供:ティファール

【今日のおいしい1冊】
『圧力鍋で魔法のようにおいしく!
おうちで楽しむカジュアルフレンチ デイリー&おもてなし レシピ46』

フィリップ・バットン監修
定価1980円
トゥーヴァージンズ

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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