日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
甘い物を摂ったときの効果は一瞬
脳が騙され慢性疲労に導かれる
俳優の中谷美紀さんが、長く「機能性低血糖症」を患っていることをSNSで公表し、話題になりました。
機能性低血糖症とは、食後の血糖値が急激に上がり、それに対応するために膵臓からインスリンというホルモンが過剰に分泌され、今度は血糖値が下がりすぎてしまう病気です。
そもそも血糖値は、よほど高くならない限り特別な症状は出ません。むしろ、少し高いくらいのときは、アグレッシブに行動できます。
一方で、血糖値が下がりすぎると、眠気、倦怠感、吐き気、めまい、動悸、頭痛、思考力や集中力の低下などさまざまな不快症状に襲われます。
中谷さんもこうした症状に苦しめられたはずですが、彼女の場合、病気という認識を強く持ち、きちんと治療を受けています。
問題は、気づかずに血糖値の乱高下を繰り返している人たちです。おそらく、みなさんも他人事ではありません。
たとえば、食後しばらくして眠くなってしまう人や、慢性的な疲労感や不調に悩まされる人は、程度の差こそあれ血糖値の乱高下を起こしています。ただ、そうした危ない状況を、自覚なく見過ごしているだけです。そして、その根本原因は、よかれと思って補給しているものがつくっているのです。
疲れを感じたときに、なにか甘い物を欲しがる人が結構います。みなさんも覚えがあるかもしれません。そんなときは、手軽なコンビニスイーツや和菓子、あめ玉、ジュース、缶コーヒーなどを口にして、ほっと一息つくことでしょう。
たしかに、人間は甘い物を食べると瞬間的に元気になります。でも、それは肉体的疲労が消えたわけではありません。急激に血糖値が上がり、ドーパミンやセロトニンといったホルモンが分泌されることで脳が高揚感に包まれているだけ。要するに、脳が騙されているわけです。
しかも、それこそがみなさんを慢性的な疲労に導いてしまうのです。甘い物を摂ったときの効果は短期的で、元気になるのは一瞬です。
その後は、血糖値の乱高下による疲れがどっと出ます。そして、あたかも薬が切れた薬物依存患者のように、甘い物が欲しくてたまらなくなります。
つまり、「疲れた」→「甘い物を食べよう」→「さらに疲れた」→「もっと甘い物を食べよう」という負の連鎖に、多くの人がからめとられているわけです。
甘い物は、疲れたときの救世主ではありません。救世主の仮面を被った悪魔だということを、まずはしっかり覚えてください。
加えて、より重要なのは、その負の連鎖を引き起こすのは、実は「甘い物」だけではないということです。米飯やパン、麺類といった炭水化物も糖質の塊であり、重度の慢性疲労を引き起こす犯人です。
また、コンビニや薬局で売られている、栄養ドリンクやエナジードリンク、スポーツドリンクにも糖質がたっぷり含まれます。「眠気を吹き飛ばそう」「もうひと頑張りしよう」という目的で飲むのは、明らかに逆効果。元気になった錯覚を起こしているだけです。
みなさんの慢性疲労をつくりだしているのは、自分の体に対する誤解、それも「よかれと思っての誤解」がほとんどです。言い方を変えれば、その誤解を解いていけば、すっきり快適な体が手に入ります。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。