京料理や野菜、湯葉、豆腐、和菓子など京の食材が上質さを保ちながら発展するのは、地下深くにたゆたう清らかな水の力といっても過言ではない。古から都を潤してきた京の水は、今も満ちて京の食を高めていく。

BAR 薫|御神水で淹れるお茶と水割り その口当たりに心洗われる

「オールドパー」の水割り2200円。ウイスキー1に対して92℃の湧水を1.5の割で合わせ、回しながら味と香りを馴染ませてゆく。

八坂神社に隣接する名勝円山公園内に今年4月開業した『BAR 薫(くん)』。店主の西田稔さん(60歳)は、これまでにも『BAR K6』や『カーヴ・ドK』『BAR K36』といった話題のバーを多数プロデュースしてきた名バーテンダー。彼の作るお酒を飲みたいファンは国内外に及ぶ。そんな西田さんが、最新店の要に据えたのが敷地内に湧く水だ。

「改装前に床を剥がしたら、井戸がそのまま残っていました。汲んでみると水質もよく、やわらかで甘さを感じる水だったんです」

八坂神社と水脈を同じくする、御神水といえるものだ。この水の清らかさをそのまま味わえる水割りを主軸にしようと決めた。

店陶器の水差しに汲んでおくと、湧水はよりまろやかになっていくという。その澄んだ味に驚かされる。

「水割りといっていますが、実は92℃のお湯をウイスキーに合わせたもの。飲んでいただくとわかる、身体にすっと馴染む温度なんですね」と西田さん。1℃ずつ温度を変えて試行錯誤を重ね、この温度に辿り着いた。口にすると、なめらかに喉を通り、ウイスキーそのものが持つ豊潤な香りや味が広がっていく。

中央アメリカから取り寄せるシングルオリジン(単一産地)の珈琲や、黒茶や紅茶など中国茶も、この水で淹れるから雑味がない。

中国雲南省の「白茶」(お茶菓子付き)2200円。淡い花と果物の香りが混じり合い高貴。この日のお茶菓子は「豆乳ドーナツ」。
日本のコーヒーハンターが焙煎するコーヒー豆は、ワインボトルのような瓶で届く。酸味のあるもの、香ばしいもの、力強いものと、風味の違う3種があり1杯2200円。
京都市出身の西田さん。「いつかは祇園で、こぢんまりとした数席のバーを開きたい」と話す。この店には火曜、金曜のみ立つ。

BAR 薫

枯山水の庭には、夏から冬の樹が植えられる。春の桜は店内の屏風で美しく咲く。

京都市東山区祇園町北側627番地先私有地47番
電話:非公開
営業時間:12時~22時
定休日:月曜 
交通:京阪本線祇園四条駅下車、徒歩約13分

取材・文/中井シノブ 撮影/伊藤 信、大道雪代

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