『人口動態統計』(厚生労働省)によると、2022年の国内で亡くなった日本人は約157万人。これは前年より約13万人多い。高齢化社会で死者の数は増え続け、2000年が約108万人なので1.5倍に増えていることになる。

「火葬場不足、孤独死、遺体修復師、生前葬……死にまつわるニュースを毎日のように聞いていると、このまま一人で死ぬのは嫌だと思ってしまって」と語るのは、美保子さん(63歳)だ。彼女は無職で独身だ。親が残した不動産資産の家賃収入で暮らしている。

「50代のうちはよかったんですが、60代になると孤独が染み込んでくる」という美保子さんには、まともな友達がいなかった。そこで、アプリで“友活”をして、麻央さん(58歳)と知り合う。この半年間、友情を深めるも、パパ活詐欺ならぬ、友活詐欺のような目に遭って傷ついているという。

【これまでの経緯は前編で】

いじめの後遺症は60代になっても消えない

友達を作る「友活」をはじめてみると、多くのシニア女性が友達を求めていることに気が付いた。名目上は「趣味の仲間が欲しい」などと書いてあるが、実際はそうでもないケースも多かったという。

「夫と離婚したばかりの人、子供が結婚してさみしい人、あとは、孤独対策のために助け合いを求めている人も目立ちました。正直、ピンとこない人が多かったです。サークルなどにも行ったのですが、投資話や宗教の勧誘もありました。“100万円を半年後に300万円にしますよ”とかね。老後資金不足や、孤独死への不安につけこむ人も多いですよ。私も占い師に300万円払うという勉強をしていなかったら、お金を使ってしまっていたかも」

美保子さんは、かつていじめられていた経験から、そういう人にもいい顔をしてしまう。相手の話を素直に聞き、下手に出るから「この人は金を出す」と思われるのだろう。しかし、財布を開かないから、相手は怒り、中には「私の時間を返せ」と怒鳴る人もいたという。

その中で、麻央さんは別格だった。優しくてたおやかで、どこか母に似ていた。家も近く、ゴルフとテニスをするのも、美保子さんが気に入った点だ。

「ご主人が病気だとかで、生活は苦しいと言っていました。最初、私が喫茶店に行こうとしたら“そこはちょっと…”と言うんです。1杯500円のコーヒー代がないと。私が出すのに、首を縦に振らないので、遠慮深く奥ゆかしい人だと思いました」

2人はチェーンのコーヒー店で、1杯230円のコーヒーを飲みながら、4時間以上話し込んでしまう。麻央さんは美保子さんの話を、最後まで聞いてくれたという。

「一度もスマホを見ないんですよ。ホントに立派な人だと思いました。4回目あたりから、家が近所だとわかって、ウチに来るようになったんです。麻央さんも私も子供がいないので、日曜の夜がヒマで孤独がしみるんです。ウチでご飯を食べて、残ったものをタッパーに入れて持たせていました」

麻央さんは「病院の主人に食べさせたら、“こんなおいしいものはない”と泣いていた」などと、美保子さんに話し始める。

「そうなると、もっといいものを食べさせたいと、珍しい食材やケータリングを取り寄せて持たせるようになりました。これはいじめの後遺症。わかっていても止められない。1帖5000円の海苔、1切3000円のチーズケーキなどが惜しくなかった」

麻央さんは美保子さんの話を楽しそうに聞く。その対価として高価な食べ物を受け取るという関係になってしまう。その延長として、お金を求めるようになるのは自然な流れだろう。

【気が付けば200万円払っていた……次のページに続きます】

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