威圧感のある凄まじい信長を熱演した岡田准一さん。(C)NHK

ライターI(以下I):『どうする家康』第28回で本能寺の変が描かれました。岡田准一さん演じる織田信長が小袖を真っ赤に染めて明智勢と対峙する感動シーンになりました。

編集者A(以下A):岡田准一さんは2014年の大河ドラマ『軍師官兵衛』や映画『関ケ原』『燃えよ剣』でも主役を演じる、今や堂々たる時代劇スター。その岡田さんが演じた本作の信長は、骨太で心に響く信長になりました。

I:本作では、信長と家康の関係が注目を集めました。第1回から〈待ってろよ、俺の白うさぎ〉でしたからね。その後も折に触れて家康と緊張感のあるやり取りを交わしていました。その岡田准一さんからコメントが寄せられましたが、これが熱い! まず、岡田さんは本能寺の変の前週にあたる第27回で展開された「松潤家康」とのやり取りについて語ってくれました。

織田信長が出てくる作品では、本能寺の変が注目されがちですが、今作は違うなと感じています。家康が信長を乗り越えて自分の歩むべき道をはっきりと見つける、第27回のラスト、安土城で家康と対峙するシーンの方が重要だと思っていました。個人的な裏テーマとしても、真面目な松本くんが殻を破って自分なりの家康像を見つけられるよう、最後のお手伝いとして、どんな背中を見せられるかということも考えていました。

I: 第27回、安土城でのやり取りは〈俺は誰かに殺される。誰よりも無残にな。だが、俺は覚悟はできている〉と達観した信長が、家康に攻めて来いと言っているようなスリリングな場面でした。この場面に岡田さんのこんな思惑があったとは驚きです。そしてその考えの源流は『軍師官兵衛』ということなのです。岡田さんの話をどうぞ。

初めて経験したのは大河ドラマ『軍師官兵衛』の頃なのですが、時々、芝居を通して、演じている自分自身も傷つくことがあります。2~3日経っても心が泣いていて、回復できないことがあるんです。それはセリフや段取りを意識していると得られないですし、大河ドラマのように1年以上かけて役と向き合うからこそ味わえる、役者をやる上でのご褒美だと思っています。そんな感覚を、第27回のこのシーンでも味わいたいし、松本くんにも感じて欲しい。ボロボロになって、セリフも段取りも見栄えも気にせず、役としてぶつかり合える瞬間を作りたい、異様な熱のあるシーンにしたいと思って臨みました。信長は、恐怖で人を従え、全てを強引に覆そうとしてきました。多くの人を殺めてきたし、物事を早く変えようとしてきた人。信長としても苦しさはあったでしょうが、強靱な精神を持ち、覚悟を決めて、突き進んできたと思います。家臣たちのことも競わせながら育てる側面があり、人を育てるのは上手い。でも、そのやり方は反発をうみ、裏切られることもある。そして自分の死後、再び争いが生じて結局乱世に逆戻りしてしまう……。後に太平の世を築く家康に「あなたのやり方は身を滅ぼす」と気付きを与え、「違うやり方で世を治める」と固く決意させるきっかけとなるシーン。信長に限界がきていて、実は脆くて壊れるギリギリなのかもしれないと家康に感じさせることが必要で、どう表現するかは悩みましたが、今作の集大成という気持ちで演じました。

A:ちょっと胸に迫りくるお話ですね。あの安土のシーンにこれだけの熱い思いが凝縮されていたとは! これはもう一度見直さないといけませんね。そして岡田さんの思いがしっかりと松本潤さんに伝わっていたようです。岡田さんの話が続きます。

岡田さんが語る、松本潤さんへの想い。次ページに続きます

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