部下の育成にお悩みの方も多いことと思います。そろそろ新入社員を迎える時期も近づきつつあります。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、部下の育成についての知見を得ましょう。
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「部下がなかなか育たない」
「何度も同じ間違いをする部下がいる」
「うちの部下は自分の頭で考えようとしない指示待ち人間だ」
このような悩みを抱える上司は多いのではないでしょうか。
今回は、業種業態を問わず、優秀な部下を育成するにあたっての五つの基本的な考え方についてご紹介します。
誰もが守れる約束の設定と順守
優秀な部下を育成するための最初のステップは、信頼関係の構築です。
皆さんは部下のことを信頼していますか。そもそも、部下に対する信頼はどのように醸成されると考えているでしょうか。
信頼は、小さな約束を守ることの積み重ねででき上がってきます。小さな約束を常に守ることができる部下であれば、上司であるあなたもその部下のことを信頼できるようになるはずです。
会社では、業務上、上司と部下の間でさまざまな約束が交わされます。
(1)朝礼終了後、15分、各自が担当する場所を掃除する
(2)毎日18時までに日報を提出する
(3)明日の15時までに提案書を作成し、私の承認後お客さまに提出する
(4)今月は、売り上げ3000万円の達成を目指す
上司・部下間で信頼関係を構築するうえで、上司の立場にいる人に実施してほしいことが、誰もが守れるルール(約束)を部下に設定し、それを100%守らせることです。
例えば、上記の例で言えば、(1)と(2)が誰もが守れる約束ですが、(3)と(4)はその人の能力や自分以外の存在(お客さまなど)によって守れないかもしれません。
誰もが守れる約束を守ろうとしない部下がいるとすれば、その部下は上司であるあなたとの約束を守ろうとしない、すなわちあなたのことを上司として認識していない部下です。
こういう部下との間に信頼関係を築くことはできません。部下にルールを守らせることができてはじめて、次のステップに進めます。
明確なゴール設定
上司と部下の関係性が構築された後、部下育成に必要となるのは、部下に「いつまでにどのような状態になってほしいのか」という明確なゴール設定です。
部下には、できるだけ早く一人前になって欲しいと考える上司がほとんどですが、「できるだけ早く」とはいつまでなのか、「一人前」とはどのような状態を指すのか、明確に部下に伝えている人は多くありません。
部下が自分自身で一人前に至る工程を認識し、いつまでにどの段階までスキルや知識を向上させないといけないかを理解できれば、部下は自ら考え、自らの能力を高めるための動きを取ることが可能となります。
一方で、上司が部下に求めるスキルや知識が不明確な状態であるにもかかわらず、「分からないことがあればいつでも聞いてほしい」や「上司や先輩の働く姿を見て、そこから業務ノウハウを吸収して早く一人前になってください」という指示をしてしまうと、部下は、自分が求められていることが分からずに混乱したり、思考停止に陥って自分の頭で考えなくなったりします。
企業によっては、スキルチェックリストや星取り表という名称で、仕事において必要なスキルや知識を分解したうえで、能力の見える化を行っていることがあります。
このような仕組みを構築することが、ゴールを明確にするうえでの補助ツールとなります。
ゴールに対する進捗確認
明確なゴール設定後、部下がゴールにどれだけ近づいているのか進捗確認を行うことも重要です。
進捗確認には、大きく分けて二つあります。それは、部下が自ら行うか、上司がフィードバックするかです。
理想は、上司がゴールを設定した後、部下が自ら進捗確認を行える状態と言えます。
つまり、設定されたゴールに対して、現時点で〇か×かを部下自身に認識させることです。ただ、上司から見て明確なゴールを設定したと思っていても、部下の経験や能力によって明確さの度合いが異なるケースがあることを上司は見落しがちです。
例えば、「今月の営業活動において売り上げ3000万円を達成する」という明確なゴール設定を上司が行ったとしても、そもそも営業経験や業界経験がない部下には売り上げ3000万円の達成に至るまでのプロセスが分からず、進捗確認が困難となるケースがあります。
このような場合、ゴールに至るプロセスに対して、手前のゴールを設定し、部下が自ら進捗を確認できる状況を再構築する必要があります。
「売り上げ3000万円の達成のために、まずは1週間で20件の商談をする」といったように、部下が進捗をイメージしやすいゴールを、最終的なゴールから逆算して明確にしていくことが求められるのです。
部下に自ら考えさせる
進捗確認によって〇であればそのまま進み、×であれば、なぜできていないのか、どのようにすればできるようになるのかを部下に考えさせ、次のゴールを目指して進んでいかせることで、部下は×を〇に変えることができます。
すなわち、「できなったことができるようになる=成長する」ということです。
このとき、大切なことは、部下のゴールに向かうプロセスに上司が介入しないこと。上司は、経験があるがゆえ、部下の仕事のプロセスを見た際に、このままだと部下がゴールに到達できないと気付くことが多くあります。
そんなとき、下記のような言葉を口にしていませんか。
「なんでそんなことやっているんだ。こうやればいいじゃないか」
「それじゃだめだ。もっとこうしたほうがいいだろ」
「今のままだと目標に達成できないだろ。そのやり方がダメだからこうしろ」
このように上司が部下のプロセスに介入することで、「上司から言われた通りにやっておけば、とりあえず目標達成できなくても許されるだろう」という思考に部下を追いやっているのです。
上司が部下のプロセスに介入しないことで、結果を残せなかった部下は、「自分のやり方が悪かったせいだ」と受け止め、自分でプロセスに責任を感じることができます。
反対に、上司が部下のプロセスに介入すると、「上司から言われた通りにやったのにできなかった。これは上司のプロセスに関する指示に問題があったからで、自分の責任ではない」という考えを部下が抱く恐れがあります。
上司が部下のプロセスに介入しないということは、上司にとって我慢が求められることです。しかし、それは部下の成長にとって必要な我慢にほかなりません。
適切な教育を行うこと
もちろん、知識も経験もない部下に対して、業務に関する必要な情報を与えないまま仕事を進めさせることは、部下の迷いにつながります。
明確なゴール設定の後、ゴールに向かううえでの必要な情報については、教育によって部下に与えることは必要です。
業務マニュアル、勉強会、各種研修により、業務上必要な情報を体系立てて部下に伝え、テストで部下の教育に対する理解度を判定する仕組みを整えると、育成スピードが上がります。
このとき、ゴール設定、進捗確認が実施されないなかで教育だけを行ったとしても部下の成長にはつながりません。教育はあくまで部下がゴールにたどり着くための武器であることを上司は理解したうえで、必要に応じて実施することが求められます。
これまで、
(1)誰もが守れる約束の設定と順守
(2)明確なゴール設定
(3)ゴールに対する進捗確認
(4)部下に自ら考えさせる
(5)適切な教育を行う
という五つの部下育成に関する基本的考え方をお伝えしました。上記五つの項目について改善を繰り返すことが、部下育成力向上につながります。
改めて上司の皆さんは五項目についてチェックし、部下がみるみる育つ環境をつくってください。
【この記事を書いた人】
岩澤雅裕:シニア講師/東北営業所 所長 一橋大学経済学部を卒業後、金融機関で法人融資業務などを担当。 その後、中堅中小企業向けのコンサルティング会社で役員として従事。資金調達や資金繰り支援、事業計画策定支援などを担当。 現在は東北営業所所長として勤務する。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/