老後資金

老後の資金は一体いくらあれば安心できるのか、とても気になりますね。長生きの世の中だからこそ「長生きリスク」を回避するために、老後の生活設計がますます大切になってきています。自分は何歳まで生きるのか、長生きしたときの生活費はまかなえるのだろうか。必要な老後資金と今からでも間に合う賢い貯蓄方法を一緒に考えてみましょう。

日本人の新しい働き方、新しい生き方をサポートしている、SMILELIFE projectのファイナンシャルプランナー・藤原未来が解説します。

目次
老後資金の平均額
50代の貯蓄、平均いくら?
50代から老後資金貯めるには
まとめ

老後資金の平均額

老後の必要資金は、一般的に

(年間支出-年間収入)✕老後生活の年数

で計算されます。しかし、人によって支出や収入のレベルも様々、老後の年数つまり寿命についても一人一人違うので、一概に「いくら」と決めることはできません。参考のために家計調査の平均データを見てみましょう。

夫婦持ち家ありの場合

2019年度の家計調査によると、高齢夫婦無職世帯の平均的な可処分所得(給与等の所得から税金や保険料等を引いた手取り収入)は月額206,717円 で、消費支出が239,947円。差引すると月間収支は、33,230円の赤字となっています。この数字を基に計算すると、年間の不足額は約40万円で、老後の生活年数が 20年間だと必要資金は約800万円に、30年間だと約1,200万円になります。これは9割以上が「持ち家あり」世帯の平均値です。

なお、現在持ち家がなく賃貸暮らしをしていて、今後も賃貸暮らしを続ける場合には、上記の数字に加えて家賃の支出を想定しておくことが必要です。

独身の場合

これに対し独身世帯ですが、 高齢単身無職世帯の平均的な可処分所得は112,649円で、消費支出が139,739円、差引月間収支は27,090円の不足となっています。これを基に計算すると、年間の不足額は約325,000円で 20年間の金額にすると約650万円、30年間で約975万円という数字になります。

こちらも「持ち家あり」のケースを中心とした集計データなので、賃貸暮らしを続ける場合には上記の数字に加えて家賃の支出を想定しておくことが必要です。

50代の貯蓄、平均いくら?

自分自身の老後の必要資金がいくらぐらいかを把握できたら、それに対してどのくらいの貯蓄が準備できるかが重要なポイントになります。現時点で世帯主が50歳代の金融資産保有額をみると平均が1,684万円となっています。

「中央値」は800万円と、50代でもっとも該当数が多いようです。皆さんは現在いくらの貯えをお持ちでしょうか。自分自身の資産状況を知ることが老後の資金準備の第一歩となりますので、一度整理しておきましょう。

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯](令和2年)」
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯](令和2年)」

50代から老後資金を貯めるには

現在の金融資産保有額と将来受け取る見込みの退職金を足してみても、必要となる老後資金に届かない場合は、65歳に向けて資金作りを頑張る必要があります。老後の収入は国民年金や厚生年金が柱となりますが、公的年金以外でも自助努力により、資金を準備していくことが大切です。50歳代であれば65歳まではまだ時間はあります。リスクを理解した上で、資産運用を取り入れ「時間」と「利回り」の力を利用してお金にも働いてもらいましょう。

資産運用は「よくわからなくて怖いからやらない」とは言っていられない世の中。自分の将来は自分で守るという意識を持って取り組む姿勢が大切です。

貯蓄方法

賢い貯蓄方法

老後資金の対策は計画的にしたいものです。方法は大きく「積立」と「資産運用」の2つになります。

まずは、「積立」ですが、「成り行き任せ」に余ったら貯めるのではなく、毎月の給与や年2回の賞与から、一定額を強制的に積み立てることをお勧めします。

つまり、
「収入」-「支出」=「積立」
ではなく、
「収入」-「積立」=「支出」
というような考え方で、先に「積立」する額を決めてよけておき、残ったお金で生活するというスタイルを取り入れることによって、確実に資金作りをすることができます。

そして次に「資産運用」を取り入れることも検討しましょう。ただ単に預金で積み立てるよりも投資信託などを使ってお金にも働いてもらうことにより、少しでも高い利回りで運用できれば、将来作れる資金額が大きく変わってきます。

例えば、50歳時点で300万円の投資可能額があったとします。65歳までの15年間で5%の年利回りで運用できたとしたら、当初の300万円は15年後に約623万円に育ちます。2倍以上の資金になるということです。

ただし「リスク」と付き合わなければいけないため、「リスク」についてしっかり理解をしたうえで、それを上手にコントロールしながら運用する必要があります。皆さんは「リスク」という言葉を聞いたときにどんなイメージを持ちますか? 

多くの方は「元本割れ」などマイナスのイメージを想像することと思われますが、資産運用の世界では、「リスク」とは預けたお金が目減りして「元本割れ」することだけでなく、反対に預けたお金が「増える」ことも含まれます。つまり、上がったり下がったりの「値動きの幅」のこと、その不確実性のことを「リスク」といいます。そして「値動きの幅」が、大きければ大きいほど「リスク」が大きいということになるのです。

「リスク」をコントロールしてなるべく値動きを抑える手段の一つとして、「分散投資」が挙げられます。「株式」と「債券」のように、なるべく違う値動きをするものを組み合わせて持つことにより全体の値動きを抑えてなだらかにし、安定的な資産運用が可能となります。

しかし「分散投資」をするだけでは「リスクのコントロール」としては不十分で、さらには「長期投資」をすることにより「元本割れ」を回避する可能性を高めることができます。

さて、リスクを前提とした「長期分散投資」を考えるとき、今ある手元資金のすべてを資産運用に回すことはできません。まずは自分自身の「投資可能額」を知ることが必要なのです。

今後10年以内に必要となる資金をよけた後に残るお金のことを「長期資金」の財布と呼び、それがリスクをとって資産運用することができる資金、つまり「投資可能額」となるわけです。このようにして自分の「投資可能額」を把握したうえで、長期分散投資ポートフォリオをもとに投資信託を活用すると、将来の必要資金を効率的に育てることができます。実際に投資する場合には「NISA」や「iDeCo」などを使うと税金の優遇を受けられるので資金作りにはとても効果的です。

まとめ

長い人生を楽しく豊かに暮らすためにしっかりとお金の準備をしておくと安心ですね。自分自身の老後資金を把握して、なるべく早めに資金作りを始めると良いでしょう。「時間」と「利回り」を味方に付けることが成功のカギとなります。

まずは具体的なライフプランを作成して資金作りに取り組むことをお勧めします。保険商品や投資商品を販売しない独立系のファイナンシャルプランナーであれば中立的な立場からアドバイスをしてもらえます。

●構成・編集/内藤知夏(京都メディアライン HP:https://kyotomedialine.com FB:https://www.facebook.com/kyotomedialine/

●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)

株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。

株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com

 

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