文 /市川雄一郎

投資は豊かな人生を送るためのもの

誰にとっても、人生の目的は豊かで幸せに暮らすことであり、投資はそのために必要な人生の大切な営みのひとつです。お金は使ってはじめて価値を持ちます。読者の皆さんには、投資によってお金を増やし、豊かで幸せな人生を送ってほしい。これが本書に託した私の切なる願いです。
グローバルファイナンシャルスクール 校長 市川雄一郎

【教えその2】「投機」の儲けは“たまたま”の大当たり、「投資」の儲けには結果を再現できる法則がある

ギャンブルの勝ち負けには法則(再現性)がない

あなたが100万円の大金を持って競馬場へ行ったとしましょう。そして、あるレースで全ての出走馬に均等にかけたとしたら、果たしてその結果はどうなるでしょうか?

ここでは話を簡単にするために、あなたは出走する全頭の単勝馬券を均等に“全部買い”するとします。

10頭立てなら10万円ずつ、16頭立てなら6万2500円ずつということです。当たり前の話ですが、このレースで1着になるのは1頭だけ。残りの馬は負けで、馬券はハズレとなります。では、このレースが確定した後、あなたの手元に戻ってくる配当金は一体いくらくらいになるでしょうか。

インターネットで競馬の専門家による面白い分析を見つけました(うまめしドットコム〈.com〉競馬必勝法「競馬 単勝 全頭 全部買いして回収率を検証」)。こうした専門家たちの分析によると、どうやら70万〜80万円くらいになるようです。要するに、ほとんどの場合元は取れないということです。

そもそも競馬の場合、日本中央競馬会(JRA)などの主催者の取り分(これを馬券的には控除率というそうです)が決められており、残った売り上げから配当金が算定されるので、全額が戻ってくることはありません。もちろん、大穴の馬が勝って、大金が舞い込むこともあるでしょう。けれども、それは“たまたま”大当たりしただけで、同じように全部買いを続けても、最後は必ず「ボウズ」、すっからかんになってしまうはずです。そこには何の法則もないからです。言い換えれば、競馬には「再現性」がないのです。

株価の動きを100年単位で見てみると

これに対して、株式投資はどうでしょうか。過去50年、もっと短く30年、20年、いや10年でもいいのですが、世界中の全ての上場企業の株式を全部買いしたと仮定してみてください。1社1社の株式を単元株※で買いそろえることはいくら仮定の話でも大変なので、例えばインデックス※(株価指数)で買うと考えてもいいでしょう。さぁ、あなたの投資したお金は増えているでしょうか、減っているでしょうか?

※単元株:通常の株式取引における売買の単位。単元は、ある一定のルールをクリアすれば企業が自由に決めることができ、1単元の株数は1株、100株、1000株が一般的。通常の株式取引では、この売買単位の整数倍で取引が行われる。)
※インデックス:市場の動きを示す指数のこと。日本株の代表的なものに、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)がある。インデックスの値動きを見て、市場全体の状況を推測することができる。インデックスと連動した値動きを目指して運用される投資信託のことをインデックスファンドという。)

結果は、2〜10倍の利益を得ているはずです。

図表は、1970年以降のニューヨーク証券取引所におけるダウ平均株価の推移を示したものです。これを見ると、株価の動きには常に大きな波があり、上がったり下がったりしていることがわかります。

過去100年間を振り返ってみると、1929年には有名な「暗黒の木曜日(ブラックサーズデー)」が起き、株価は22.6%も大暴落しました。株価は第2次世界大戦をはさんで次第に回復してきましたが、その後も同じような暴落が何度も起きています。例えば、1987年の「ブラックマンデー」、2008年の「リーマンショック」、そして、直近では2020年のコロナ禍による暴落がありました。

このように、株式市場の長い歴史を振り返ると、周期的に大きな波が起き、何十%も下落する場面があることは事実です。なので、これだけを見て、「やっぱり株は怖い」と思う人もいるかもしれません。

けれども、このグラフをよく見てください。上がったり下がったりを繰り返しながらも、大きなトレンドとして見ると、株価の折れ線は一貫して右肩上がりになっています。景気には循環があり、ずっと上がり続けることはない半面、下がり続けることもないのです。これは世界の株式市場を見ても同じです。日本は残念ながら1989年末につけた「バブルの最高値」を更新することはできていませんが、長い期間をとると同じような傾向が見てとれます。

投機はギャンブル、投資とは違う

つまり、長い期間投資を続けていれば、株価は必ず元に戻ります。戻るばかりでなく、下落する以前の相場を超える水準に上昇していきます。一時的に経済の状況が悪くなっても、遅かれ早かれ、経済活動は正常化します。正常化すれば、企業は利益を得て、働く人たちの収入は増え、たくさん買い物をするようになり、それによってまた企業が儲かる―これが人間の経済活動の本質的な法則、いわば「仕組み」なのです。

このことは最近のコロナ禍における経済や株価の動きを見れば、おわかりいただけると思います。

法則を知れば、結果を再現することは十分に可能です。「株式投資はギャンブルだ」と言う人がいますが、これは大間違い。ギャンブルとは競馬のような賭け事を指し、「イチがバチか、大きな利益を狙う不確実な行為」とでも定義できるでしょう。経済用語では、これを「投機(Speculation)」と呼び、法則や仕組みを知って行う「投資(Investment)」とは明確に分けて捉えています。

株式投資をギャンブルと言う人は、結局のところ、経済や株式の仕組みについての正しい知識がないまま、行き当たりばったりで株を売買し、その結果、大損した、資産が減ったと大騒ぎしている人と考えて差し支えないでしょう。

では、「ギャンブル=投機」と「投資」は具体的にどこがどう違うのでしょうか。これがまさに本書のテーマであり、次項以降で、さらに少しずつ解きほぐしていくことにします。


市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。MBA/経営学修士。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。
テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。
最新の著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え」(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)
公式サイト:https://gfs-official.com/
体験版講座:https://toushi-up.com/

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※本記事は『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え(日本経済新聞出版)』より抜粋して掲載しています。

 

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