「人生100年時代」というフレーズをあちらこちらで目にするようになりました。2021年4月からは、70歳定年を盛り込んだ「改正高齢者雇用安定法」も施行されることから、改めて長寿化を強く意識し、“長生き”に備えたライフプランを立てている人も多いでしょう。しかし、誰もが元気なまま長生きできるわけではありません。年をとるにつれ、身体機能も認知機能も低下し、人生の最後の10年はどうしても医療や介護が必要になるというのが現状です。 その状況を受け止め「加齢や病気に伴い心身の機能が低下しても、最後の瞬間まで安心・納得して生き切れるコミュニティをつくる」ことをめざし、24時間対応の在宅総合診療を手がけているのが佐々木淳医師。在宅医療のリアルを知る佐々木医師に、私たちは今から何に気をつけたらいいのか、在宅医療に必要なことについて4回に分けてお話をお聞きします。3回目は「健康な在宅生活に必要な心の持ち方」について伺いました。
実年齢よりも若い気持ちでいることが心身の健康にいい!
人生100年時代を生きるために、心身ともに元気で過ごしたいもの。そのためには、どのような心持ちで過ごせばいいのでしょうか?
「1つは、自分の年齢を2/3にしてみること。たとえば60歳の人は今40歳だと思ってください。40歳って働き盛りですよね。定年退職を迎えるとしても、何か別にできることを考えてみてほしいのです。90歳の人は60歳ですから、そろそろ退職するぐらいに捉えてみてください。というのも、日本人の体力は昔に比べ、高齢になっても衰えないのです。文部科学省が10年おきに、高齢者の体力テストを行っているのですが、それによると体力は5歳ずつ若返っているんです。たとえば、ある運動においてクリアの点数があるとします。1998年にクリアできたのは60〜65歳だったのが、2008年では65~70歳がクリアし、2018年では70~75歳がクリアしているのです」
2/3はやりすぎだと思う人は、12年引くというやり方もあるそうです。
「72歳の人なら60歳ですね。12年という数字にも根拠があって、アメリカの論文では12歳若い気持ちで生活すると身体機能も認知機能も高くなるという報告がありました」
若い友だちをつくることが、最強の若々しさを手に入れる方法
同世代の友だちと一緒にいると、腰が痛いとか、最近忘れっぽいとか、そんな話ばかりになりませんか? 心当たりがある人は、若々しさから遠ざかっているかもしれません。
「若い人と一緒にいると、腰が痛いとか、最近忘れっぽいとか言っていられない。実際、秋田県で行われた調査では、100歳を過ぎてお元気な方には、20歳以上の歳の差のある友だちがいるという共通項がありました」
今、刺激がもらえるような若い友人は、果たして何人いるでしょうか? 若い人の繋がりなんてないよという人は、仕事のなかで見つけるといいとのこと。
「仕事があると、若い人とのつながりを持ちやすいと思います。今携わっている仕事が90歳までできるかどうかわからないのであれば、別の副業を用意しておいてもいい。仕事があると、納品しなきゃいけないし、クレームも受けなくちゃいけないし、感謝の気持ちを受け取ることもあります。それが人と繋がることになりますよね。あ、ネットゲームとかもいいですよ。頭も使いますし、交流にもなるし、若い人と共通の話題を持つことができます」
人とのつながりが人生を豊かにする。若い人との交流がこれからの時間を楽しくしてくれる。そう考えて、柔軟に、好奇心を持ってすごしてみるよう、心がけてみましょう。
【次回】 新型コロナウイルスの感染の不安がある中での過ごし方について !に続きます
お話を伺ったのは……
佐々木淳先生のインタビュー記事は、株式会社おいしい健康が運営するメディア「先生からあなたへ」でもご覧いただけます。
https://articles.oishi-kenko.com/sensei/
取材・文/安藤政弘 撮影/ 近藤紗菜