文/満尾正
新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
健康診断で調べない重要な検査項目!
結論から言えば、現代型の仕事や生活スタイルでごく普通に暮らしている人は、「ビタミンD」「マグネシウム」「亜鉛」が不足している傾向が多く見られます。
一見、かなり健康状態が良さそうな人でも、調べてみるとこの3つの栄養素が完璧に維持されていることは極めて稀です。実は、これらは「免疫力をアップする3大要素」とも呼べるほど重要なもの。それが著しく欠けているのが、現代人の食生活なのです。
しかし、普通の健康診断の血液検査には、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛といった項目はありません。調べないのですから、低いことに誰も気づきません。
では、なぜ調べないのか。健康診断でこれらの数値を測定しないのは、それが「直接」「即時に」病気に繋がることがないと考えられているからです。 たとえば、白血球の数や血糖値など、健康診断で必ず測定される項目に異常が出れば、それは即、なにかの病気を疑うきっかけになります。でも、ビタミンDやマグネシウムや亜鉛の数値が低いことで、すぐに病名が判明するわけではありません。一般的な健康診断では、そうした効率の悪い検査はしません。
ならば、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛の不足を放置していいのかといったら、そうではないのです。この3つの栄養素が足りていなければ、すなわち、免疫力が落ちてあらゆる病気にかかりやすくなるからです。
詳しくは後ほど紹介しますが、とくにビタミンD不足は、新型コロナの致死率を上げるという研究データも発表されており、今後も非常に重要な課題となることは明らかです。これらの3つの栄養素の欠乏は、日常生活においてすでにいろいろな不調を生み出しています。
たとえば、足のつり。ゴルフの最中に足がつってしまう年配の人がよくいますが、これはマグネシウムが不足しているときの典型的な症状です。
こちらも詳しくは後述しますが、とにかく、これら大切なものが、目に見えない形で失われているということを、まずは知ってください。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。