取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

 「父親との関係は期待しても落とされることばかり。そんな中でも、母親との関係はうまくいっていると思っていたのですが……」と語るのは、理恵さん(仮名・42歳)。彼女は2人の子どもを持つ専業主婦です。旦那さまとの年齢差は9歳。その年齢差に父親の影響を少なからず感じているようです。

小さい頃からの家族団らんに、父親の姿は覚えていない

理恵さんは兵庫県出身で、両親と1歳下と3歳下に弟、さらに5歳下に妹のいる6人家族。小さい頃の記憶として覚えているのは、母親を手伝うために弟や妹の面倒を見ている自分の姿だと言います。

「弟たちのことはある程度大きくなってからの記憶しかないんですが、妹のことは赤ちゃんの頃から覚えています。とにかくかわいくて、ずっと側にいましたね。母親が料理をしている間は私がずっと妹の監視役で、その役目を全うした後に頭をなでてくれるんです。その母親の笑顔が印象的でした。小さい頃は1つ下の弟とケンカばかりだったんですけど、妹ができてからはまったくケンカしなくなって、お互いが母親にほめられようといい子を競っていた気がします」

父親の印象はどうだったのでしょうか。

「まったく覚えていないんですよ。おそらく私たちが起きている時間に帰ってきてなかったんじゃないかな。ちゃんと顔を合わすのはお盆やお正月ぐらいだったけど、それも母方の祖父母が家に来て一緒に過ごしたり、母親と私たちだけが祖父母の家で過ごすことが多かったです。

父親はみんなが知っているような会社に勤めていて、ある程度稼いでいたんだと思います。私たちが住んでいたのは一軒家で、お金の心配をしたことは一度もありません。今振り返ると、子どもがたくさんいる家庭ではどこか我慢させられることもあるイメージだけど、私の家ではそんなことはなくて。男女違ったり、年齢が近いこともあるからでしょうけど、お古を使わされることもありませんでした」

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