文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)

ロサンゼルス国際空港から南へ向かい約60km。カリフォルニア州ハンティントンビーチは、「サーフシティーUSA」の愛称で知られる全米有数のサーフタウンである。それだけではなく、便利な立地条件と広い砂浜を活用したさまざまなイベントが年間を通して行われている。そのうちのひとつとして、ユニークで比較的歴史が新しい航空ショーを紹介したい。

海水浴客で賑わうビーチの上空を轟音とともに戦闘機やセスナ機がアクロバット飛行を披露する「Pacific Airshow Huntington Beach」がそれである。2016年の第1回以来、10月中の週末に行われている恒例イベントだ。2026年は10月2日(金)から4日(日)までの3日間にわたり開催される予定である。新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で中止になった2020年を挟み、今回が10回目となる。

2025年度ショー初日の様子。

期間中の観客数は延べ数100万人を超えるとされ、主催者側は「全米最大の航空ショー」と紹介している。

もっとも、航空ショーそのものはアメリカではさほど珍しいものではない。毎年、全米各地で数多くのイベントが開催されている。フロリダ州の「SUN ‘n FUN」、ウィスコンシン州で開かれる「EAA AirVenture Oshkosh」などは世界的にも有名だ。

アメリカでは航空ショー以外でも編成飛行やアクロバット飛行を見る機会が多い。NFLの優勝決定戦、スーパーボウルでは、試合前に戦闘機がスタジアム上空を飛び越えていく、「フライオーバー」と呼ばれるデモンストレーション飛行が定番のようになっている。同じような光景はMLBのワールドシリーズやオールスターゲーム、インディアナポリス500やNASCARのデイトナ500などのモータースポーツ、さらには独立記念日の祝賀イベントなどでもよく見られる。

アメリカ人にとって「空を飛ぶ」デモンストレーションはもはや大きなイベントを盛り上げるためには欠かせない演出のひとつになっている感がある。最近ではドローンによるショーも盛んだ。広大な国土を持つアメリカでは、航空機は単なる移動手段に留まらず、歴史的かつ文化的にも大きな意味を持つからだ、とはやや強引なこじつけだろうか。

それはともかく、建国250周年を迎える今年は、いつにも増して航空ショーが全米各地で行われるだろうことは想像に難くない。

MLBサンディエゴ・パドレスの本拠地ぺトコ・パークで行われたパラシュート降下。

ハンティントンビーチで行われる航空ショーに話を戻すと、その最大の特徴はビーチが舞台であることだ。

観客は砂浜にビーチチェアやタオルを広げ、思い思いの場所で空を見上げる。ピアと呼ばれる桟橋付近が見どころスポットとしての人気が高い。青空と太平洋を背景に航空機が飛び交う光景は、他ではなかなか見ることができないものだ。

ショーを行う航空機は最新鋭の戦闘機から古いプロペラ機まで、時代も種類もバリエーションに富んでいる。航空機そのものに興味がある人は嬉しいだろう。

もっとも、観客の多くは必ずしも熱心な航空機ファンというわけではないようだ。家族連れやカップル、地元住民、観光客、そしてサーファーたちが、ビーチ遊びの「ついでに」ショーを楽しんでいるような雰囲気がある。

レイドバックした雰囲気の観客たち。

3日間に渡って、午前中から夕方までショーは続く。次から次へと航空機が現れ、海面近くを飛び抜けていく。エキサイティングではあるものの、ずっと空を見上げ続けていられるわけもない。

海ではサーファーがいつものように波に挑み、子どもたちは砂遊びに夢中になり、歩道にはサイクリングやジョギングを楽しむ人たちが行き交う。南カリフォルニアのビーチらしい、のんびりとした雰囲気と、轟音を響かせ、猛スピードで飛び抜けていく飛行機。ミスマッチといえなくもないが、個人的な意見を述べるなら、その不思議な組み合わせこそがこのショーの魅力だ。

もっとも最終日のクライマックスが近づくにつれて、編成飛行の機数は増え、アクロバティックさも激しくなっていく。ビーチや周辺道路は混雑し、砂浜を区切って作られる特設スタンドの入場チケットは争奪戦になる。どのタイミングで訪れるかによって、受ける印象は異なるかもしれない。

南カリフォルニアの10月は晴天率が高い。

アメリカ人が長年育んできた「空を楽しむ文化」と、南カリフォルニアのビーチライフが出会って生まれた巨大な祝祭。航空機ファンでも、そうでなくても、楽しめると思う。

最後に、観覧のための実用的な情報も付け加えておきたい。会場となるハンティントンビーチの海岸沿いにはホテルが点在しており、部屋によってはバルコニーや客室から航空ショーを楽しむこともできる。期間中は周辺道路や駐車場が大変混雑するため、宿泊を兼ねて訪れる人も少なくない。航空ショー観覧とビーチリゾート滞在を同時に楽しめるのも、このイベントならではの魅力と言えるだろう。

ロサンゼルス近郊からの日帰りならタクシーやライドシェアが便利だが、海岸沿いを走るパシフィック・コースト・ハイウェー(PCH)にはオレンジカウンティ交通局(OCTA)の路線バスも運行している。会場周辺では交通規制が実施される場合もあるため、事前に公式サイトで最新情報を確認しておくとよいだろう。

海沿いのパシフィック・コースト・ハイウェー(PCH)、ピア(桟橋)付近。

Pacific Airshow Huntington Beach 公式ウェブサイト:https://pacificairshowusa.com/

文・写真 角谷剛
日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

 

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