近鉄奈良駅や奈良公園から徒歩圏内の「ならまち」に美味処が増えている。

海外経験もある実力派。繊細な仕事が施された鮨

帆立の握りは写真の生か、煮物のいずれか。他に鮪の漬けや穴子 、鰺、烏賊 、雲丹など季節の魚介。日本酒は1合1300円~。

すっと伸びた背筋や、機敏で無駄のない所作が美しい。白木のカウンターの中央で、鮨を握るのは、松宮はなこさん。整体師の資格も持つ異色の鮨職人だ。

大阪府で生まれ、整体師として勤めた後、飲食業に舵を切った。まず鮨の調理学校へ入学。その後、大阪の鮨店、シンガポールやオーストラリアでも鮨職人として腕を揮(ふる)った。帰国後、大阪の鮨店でカウンターを任された後、令和4年に姉の祥子さんとともに開いたのが、『ならまち 鮨はなこ』だ。奈良は若い頃から訪れて馴染みがあり、憧れの地でもあったという。

昼、夜ともにおまかせのコースは2種。夜のおまかせは、先付、焼き物、造りの後に、鮨が10貫から14貫。鮨飯は赤酢を使い、握りは小ぶり。コースによって握りの数が変わるので、お腹の具合で選びたい。繊細な包丁仕事だけでなく、昆布締めや酢締め、漬けといった丁寧で考え抜かれた仕事が施され、味わいに変化がある。

ホウボウの昆布締め。昆布の旨味が白身魚にしみ込み、鮨飯の酸味と調和する。写真の鮨は、夜のおまかせ8000円のコースから。

「好みの巻き物など追加のご注文もお受けします。日本酒のほかワインもご用意しているので、お酒のご相談にものります」と松宮さん。お値打ち価格で居心地もいい。機会をつくって通いたくなる鮨屋だ。

コースの最後に出される巻き物。鉄火巻きは赤酢の酢飯と鮪の赤身、山葵、海苔が一体に。干瓢巻きや胡瓜巻きの日もある。
明るく親しみやすい松宮さんとの会話も楽しい。「昼のおまかせは4000円~です。観光の途中で、ぜひお立ち寄りください」

ならまち 鮨はなこ(西新屋町)

奈良市西新屋町14-2
電話;090・8914・7875
営業時間:11時30分~14時、17時~21時30分
定休日:水曜(祝日の場合は翌日)
交通:近鉄奈良駅より徒歩約15分
カウンター7席、2階サロン7席は貸切のみ。昼4500円~、夜8000円~。

取材・文/中井シノブ 撮影/伊藤 信

※この記事は『サライ』本誌2023年11月号より転載しました。

『サライ』11月号は大特集『奈良 新しき「仏像」の見方』

 

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