日本人女性が閉経する年齢は平均で50.4歳といわれ、閉経の前後5年間ずつの合計10年間が「更年期」にあたります。女性の体は「エストロゲン」という女性ホルモンに守られていますが、年齢とともにその分泌量が減ることで、女性の体は変化し、不眠、イライラ、ホットフラッシュなど、さまざまな症状があらわれます。
更年期を健やかに過ごすためには、食事が重要なポイントになります。
そこで、「すべての女性によりよい未来を」をモットーに、女性の体の仕組みをわかりやすく伝えている産婦人科専門医・高尾美穂先生の著書『いちばん親切な更年期の教科書』から、更年期の食事のポイントについて学んでいきましょう。
「大豆イソフラボン」が女性ホルモンに似た働きをするということは広く知られていますが、そのままでは効果を発揮しないそうです。
エクオールを腸内で生産できる人は約半数のみ
大豆イソフラボンには3種類あり、その中の「ダイセン」という成分が、エクオール産生菌によって分解・代謝され、「エクオール」という成分になり、「エストロゲン」という女性ホルモンに似た働きをします。
毎日大豆を積極的に摂っている人は、エクオールを作れる人の割合が高いという調査結果があります。日常的に大豆製品をとることが、エクオールをつくることに大きく影響して いるようです。
しかし、実はエクオールを生み出す腸内細菌は、すべての人の腸の中にいるわけではありません。エクオールを腸内で産生できる人の割合は、日本人では約半数にとどまり、中高年女性では 51.6%という報告もあります。
また、エクオールを作れる人ほど更年期症状が軽いというデータもあります。これは時間の食事調査を行い、尿中のエクオール量を調べ、更年期症状との関連性を調べた調査で、尿中にエクオールが多い=エクオール産生能がある(エクオールを作れる)人のほうが、更年期症状が軽いことがわかったのです。
サプリメントでエクオールを補うのもおすすめ
自分にエクオール産生能があるかどうかは、尿検査で簡単にわかります。手軽な検査キ ットも市販されていますから、利用するとよいでしょう。 これは、尿中に含まれるエクオールの量を5段階でチェックし、3段階以上、つまりL evel.3以上であればエクオール産生能があることを示します。
ただし、産生能がある人でも直近で大豆製品をじゅうぶん摂取していない場合、低いレベルとして測定されることがありますから、検査の数日前から積極的に大豆製品を摂取するようにするとよいでしょう。2回程度検査することで精度が高まります。
また、理想的なエクオール値のレベルはLevel.4以上です。 検査でエクオール産生能がないことがわかった人や、(エクオールを作れる人でも)大豆を食べていない日の対策として、大豆から作られたエクオールのサプリメントが市販されています。婦人科など医療機関で販売されているほか、調剤薬局や通販で購入できます。
なお、エクエル(大塚製薬)は最近、婦人科での扱いも増えてきています。 大豆製品は大豆イソフラボンを含むこと以外にも、低脂肪で良質なたんぱく源としてすぐれた食品ですから、エクオールが作れない人も毎日バランスよく摂取するのがおすすめです。
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大豆製品を摂っていれば、それだけで女性ホルモンの助けになっていると思っていましたが、腸内でエクオール産生菌に分解・代謝され、「エクオール」という成分を生産しないとならないというのは、なかなかショッキングな話ですよね。しかし、サプリメントで手軽に補うこともできるそうなので、あまり神経質にならず、日頃から積極的に大豆製品を摂りつつ、サプリメントで補うようにして、更年期の体のサポートをしてあげましょう。
『いちばん親切な更年期の教科書 閉経完全マニュアル』
世界文化社
定価1760円
高尾美穂(たかお・みほ)
産婦人科医。女性のための総合ヘルスクリニック イーク表参道副委員。医学博士。スポーツドクター。ヨガドクター。東京慈恵会医科大学大学院修了。同大学付属病院産婦人科助教をへて2013年より現職。「すべての女性によりよい未来を」をモットーに、医療・ヨガ・スポーツの3つの活動を通じ、専門的な知識をわかりやすく啓発活動に精力的に取り組む。高いプロ意識とソフトで親しみやすいキャラクターが評判となり、テレビや雑誌、イベントなどで幅広く活躍中。著書に『超かんたんヨガで若返りが止まらない』(世界文化社)がある。 YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」を毎日更新し、女性の健康のみならず、よりよく生きるためのヒントを届けている。