あなたは「めんどくさい」をためこんでしまう人ですか? それとも「めんどくさい」をうまく調整できる人ですか?
一概にめんどくさいといっても、その内容は千差万別。あなたの心のエネルギーを大きく奪う強毒性のめんどくさいと、心への毒性が低いめんどくさいでは対処法が変わってきます。
そこでまずはあなたが今めんどくさいと感じている事柄を、下記の3つのパターンに分けて考えてみましょう。
(1)大嫌いなめんどくさいこと
(2)好きでも嫌いでもないめんどくさいこと
(3)好きだけどめんどくさいこと
いかがでしょうか?
(1)は、事務作業の苦手な人が簿記をつけたり、パソコン操作が苦手な人がパソコンで書類を作る、人前で話すのが嫌いな人がスピーチをするなど。嫌いな分野の仕事を行ったり苦手な物事を行ったりすることなどが入ります。
(2)は、日常の掃除や買い物、仕事のルーティンワークなど。大きく苦手や嫌い、好きといった感情が湧かない分野のことをすること。
(3)は、好きなんだけど手順が大変な仕事をしたり、時間のかかる凝った趣味をしたり、旅行前の準備などが、好きなんだけどやることが大変だったり複雑なことが浮かびますよね?
この3種類は先ほども書きましたが対処方法が異なるのです。そこで順番に、それぞれの上手な対処方法を紹介していきましょう。
■1:「大嫌いなめんどくさい」の対処方法
これはとにかく大嫌いで尚且つめんどくさいのですから、実行しようと思うだけで心のエネルギーを大きく減らしてしまうことでしょう。
対処方法は「思い切って減らしてしまうこと」。
大嫌いでめんどうだと思っていても、実際にやらなければならない事柄は意外と多いものです。
そこでまず最初に考えて欲しいのが「他人に任せる、手伝ってもらう」になります。
事務作業やパソコンが苦手な場合はそれを得意な人に頼み代わりに自分が得意な分野を受け持ってあげる。時にはその工程の一部だけであっても、お金をかけて業者などに外注してしまうのも手ですね。
これができない場合は「ご褒美を用意する」を考えてみましょう。「○○(めんどくさい事案)が終わったら、××(大好きなこと)をする、買う」など、すり減らした心のエネルギーをすぐに補給してしまうことを用意すると、大嫌いな事をするストレス度が下がり、心のエネルギーのロスが相対的に減ります。
最終手段としては「思い切ってやめる勇気を持つ」が挙げられます。
私は産業医として、担当している仕事がめんどくさいという相談を受けることもありますが、よく聞いてみるとじつは従事している作業が本人に全く合っていないために、苦手でめんどくさいというケースが多いのです。
例えば人見知りの人が飛び込み営業のような仕事をしていたり、ひたすら作業に精を出したい職人気質の人が管理職系の仕事を任されていたり……。
そこで自分はその仕事や作業を続けることが本質的に難しい、気質的に合っていないとしている場合は、思い切って勇気を持って仲の良い上司や友人に相談してみたらいかがでしょうか?
もしかしたら異動や転職といった良い情報が入るかもしれませんし、別のタイプの仕事を任せてもらえるかもしれません。また苦手を回避するための良いアイデアをもらえるかもしれません。
まずは小さな行動を起こしてみることで、自分の周りも自分の心も変化していくことが多いので、ひたすら耐えているばかりではなく、ちょっと勇気を出して一歩を踏み出してみることが大切です。
■2:「好きでも嫌いでもないめんどくさい」の対処方法
日常生活に多いのがこの(2)のパターンです。大嫌いなめんどくさいことに比べると、心への毒性は強くはありません。
しかし塵も積もれば山となるがごとく、このレベルのめんどくさいことも、沢山抱え込んでしまうと、心にとっては大きなストレスとなり毒性度がアップしてしまいます。
このタイプのめんどくさいは対処が簡単で、とにかく「効率化をして溜め込まないこと」に尽きます。
仕事の書類やメールの作成などは、パターン化した雛形を作って時間をかけない。日常生活での掃除は便利グッズを使ったり手間暇かけずにささっと済ます。常に完璧を求めるのではなく、手抜きができるところは手抜きをして片付けてしまうのです。
仕上がりの質ややり方が100点満点でなくても他者に迷惑がかからない程度の平均点レベルがクリアできていればいいと考えましょう。
真面目な人ほど、こうした「好きでも嫌いでもないめんどくさい」ことにも全力で完ぺきに仕上げようと取り組んでしまうので、時間が足りなくなってイライラしてしまいます。そしてそのうちに心のエネルギーが下がっていってしまうのです。
こうした「好きでも嫌いでもないめんどくさいこと」よりも、もっとあなたが本当にこだわりたい仕事や活動へエネルギーを回した方が、あなたの個性や才能を活かす有意義な仕事ができたり、毎日の生活を楽しむエネルギーが生まれてくるはずです。
■3:「好きだけどめんどくさい」の対処方法
不思議なことに「好きだけど……、めんどくさい」みたいなことも意外とありますよね? それらはたいてい手順が大変であったり、準備にエネルギーや時間がかかる場合に多いのです。
本来は好きなことなのですから心のエネルギー漏れは相対的に少なく、その後には大好きなことが待っているのですから大局で見れば(3)のケースはプラス事案。
この対処はとても簡単で「時間をしっかり捻出して、じっくりとりくむこと」が挙げられます。
例えば旅行を例に挙げますと「旅行は大好きだけれど事前準備が……」となりがち。しかしこの事前準備も心に余裕があるときに時間をかけてゆっくりやれば、逆にワクワクで幸せな行事に変化してくることでしょう。
時間のかかる凝った趣味なども、本当はやりたいけど時間がかかるからできない……となって敬遠していると、どんどん心にストレスがたまってしまいます。
こうしたことができるように、「好きでも嫌いでもないめんどくさいこと」を効率化してさっと終わらせ、「大嫌いなめんどくさいこと」はその一部分でも人や業者に頼んだり、思い切って断ったりして時間をつくりましょう。
大好きなことは、やればやるほど心にエネルギーが供給されますし、仕事の分野であれば、あなたにしかできない素晴らしい成果があがったりします。
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以上の3パターンのめんどくさいを上手に対処していけば、きっとあなたもめんどくさいの調整ができる人になれるはず。ぜひこれらを参考にイキイキとした生活を手に入れてください。
今回はめんどくさい事柄に焦点を当ててその対処法を紹介してきましたが、拙著では「人間関係がめんどくさい」の消し方に関しても紹介していますので興味がございましたらご一読いただければ幸いです。
監修・構成/奥田弘美
取材・文/田中十兄
指導/奥田弘美(おくだ ひろみ)
精神科医(精神保健指定医)、日本医師会認定産業医、作家
1992年山口大学医学部卒業。精神科医として診療を行うほか、嘱託産業医として都内20か所の企業にてビジネスパーソンの心身のケアに関わっている。近著に「一流の人はなぜ眠りが深いのか」(三笠書房)、「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)、「図解『めんどくさい』をスッキリ消す技術」(マキノ出版)など。11月末には「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネージメントセンター)を出版予定。
【参考図書】
『図解「めんどくさい」をスッキリ消す技術~仕事、家事、人間関係がすべて楽になる!~』
(奥田弘美・著、マキノ出版)